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帝と左大臣
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く家柄です。
「道草が行方知れずと聞いた。其方に関白を引き継いでもらいたい」
帝は五反田の左大臣を呼んで、告げました。
「摂政関白は藤原一族の専属でありましょう。私は左大臣で十分です」
左大臣は頭を垂れて応じました。そして、
「それよりも、お上はお気づきですか、左京という男の事を?」
帝は微笑んで頷き、
「勿論。だからこそ、姉上を託す事にしたのだ。其方の嫡子の馨にはすまぬが、姉上は左京にと思っておる」
左大臣はその言葉を聞いて更に頭を垂れ、
「恐れ多い事です。馨にはよく言い聞かせます故」
帝は微笑んだままで頷きました。
五人衆と左京の宴を聞きつけ、加藤の中将がやって来ました。
「何やら楽しそうですな」
加藤の中将はすでにほろ酔いです。
「加藤の中将殿は以前に足繁く通われた女性がいらしたとか?」
箕輪の大納言が言いました。
左京はその話に仰天しました。




