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樹里の答え
御徒町の樹里は都で並ぶ者のいないほどの美人です。
関白の藤原道草が樹里を側室にするために蓬莱の玉の枝を持ってきました。
その枝は七色に光り、道草がドヤ顔で樹里を見ました。
(最早言い逃れはさせぬぞ、お惚け姫め)
「そうなんですか」
それでも樹里は笑顔全開です。
貧乏貴族の左京は項垂れました。
亜梨沙と蘭はニヤリとしました。美子姫は怪訝そうに樹里を見ています。
(何やらまだ策があるようですね、樹里姫様)
美子姫は樹里の心の内を見抜きました。
「では、婚儀は月が変わった頃に執り行うという事で……」
道草がそう言いかけた時でした。
「それは偽物ですね、関白様」
樹里が笑顔全開で言いました。嫌な汗が出る道草ですが、
「何をおっしゃるのです? 貴女のお言葉通り、七色に光っているではないですか? この期に及んで、そんな戯言とはどういう事ですか?」
道草は眼光を鋭くして樹里を威嚇しました。




