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左大臣襲撃

 御徒町の樹里は都に並ぶ者のない美人です。


 その樹里を側室にしようと目論む関白の藤原ふじわらの道草みちくさは対立する五人衆の馨の父である左大臣を亡き者にするつもりです。


「何奴?」


 左大臣は部屋の外の廊下が騒がしいので書をしたためるのをやめて顔を上げました。


「貴方には何の怨みもございませぬが、死んでいただきます」


 どこからともなく声が聞こえました。


「何?」


 左大臣は周囲を見渡しました。


「お覚悟!」


 天井から黒い影が舞い降り、左大臣に襲いかかりました。


「させぬ!」


 その黒い影と左大臣の間に樹里の侍女のはるなが割って入りました。


「其方は?」


 左大臣は仰天しています。はるなは左大臣に微笑み、


「私は桐壺院の命を受け、樹里姫をお守りする忍びです」


 そして、弾き飛ばした影を睨みました。


「おのれ!」


 黒尽くめの影は叫ぶと、消えました。


「はるなさん、お見事でした」


 そこへ樹里が左京と現れました。仰天するはるなです。

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