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馨、樹里に求婚する
御徒町の樹里は都で一番の美人で、多くの男を虜にしています。
朝廷の有力者である五人衆の筆頭の馨が樹里に声をかけたので、貧乏貴族の左京は動揺しました。
(何のつもりだ?)
左京は馨を警戒しますが、蘭や亜梨沙や美子姫は喜んでいます。
(樹里姫を左京様から引き離すために力を貸してください、馨様)
前世では考えられない状況です。
「前世の話は禁じたはずぞ!」
約束を守らない地の文に馨が切れました。
「私と夫婦になってください」
馨は樹里を真っ直ぐに見て言いました。左京にはできない事です。
「ううう……」
地の文の容赦のない指摘に項垂れる左京です。
「そうなんですか」
樹里が笑顔全開で応じたので、左京は蒼ざめました。
(そんな……)
もうお別れなのかと左京は愕然としました。
馨が更に続けようとすると、
「私のために燕の産んだ子安貝を持って来てくださったら、夫婦になります」
樹里は条件を出しました。唖然とする馨です。




