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黒幕の存在
御徒町の樹里は都で一番の美人です。
その上、光源氏の君の血を引く家系で更に先代の帝の血も引いています。
そのせいで、御所の実力者である五人衆が樹里との婚姻を熱望していました。
「それだけの事なら、別に差し支えないのでしょう」
貧乏貴族で無知な左京が言いました。
「何だと!?」
左京は悪口を小声で言った地の文に切れました。
「確かに五人衆と夫婦になるだけであれば、左京様の仰る通りです。でもそうではないのです」
樹里の侍女でありながら、夜遊び女でもあるはるなが深刻な顔で言いました。
「その設定は違う話でしょ!」
はるなは何でもありのボケをかます地の文に切れました。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。
「左京様もご存知でしょう? 藤原道草公のお噂は?」
はるながその名を出すと、左京はギョッとします。
(全然知らないが、ここは話を合わせよう)
嫌な汗を掻きながら、左京は思いました。




