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君の魂に抱かれて  作者: 皐月-Satsuki-
boy and girls' aspects
99/136

9月4日/沙耶eyes  前哨戦

ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)


この作品はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、

実際の物とは一切関係ありません。

初めて読む方は、本編からご覧ください。



ーboy and girls' aspectsとは?ー


このモードは主人公の視点ではなく、

君の魂に抱かれての主人公以外の登場人物の視点です。


これにより、より世界観がわかりやすくなります。


※目次の場合、下に行くほど時間が最新です。


12話 対応を失った瞳~



戦場が見えてきた。

が、既に男生徒が前方に佇んでいる。

男生徒は銃口をこちらに向けて構えていた。


「伏せろっ!!」


「――!?」


中沢くんは素早く二人を伏せさせる。


『ズド―――――ンッ!!!!!』


そういい終わった瞬間、男生徒が発砲した。


私は銃を走りながら避け、男生徒の方へ、矢が射出されるかのような勢いで男子生徒へ駆け込む。


男生徒の距離が近くなると、腰に差してある千鳥の柄を握り、鞘から千鳥を抜く――!


『ズド―――――ンッ!!!!!』


銃口は私の方を向いていた。

私を狙いにしてくれたようだ。


この周りには敵はこの男生徒しかいない。

つまり、この男生徒を遠くに行かせば、中沢くん達は安全。


『パキッ――――――ンッ!!!!!』


銃弾を千鳥の刃で弾き、更に距離を縮める。


「な、なに……!?」


相手は銃。

遠距離戦は私の不利。

だが、近距離では私の有利だ――!


『ズド―――ンッ!!!ズド―――ンッ!!!ズド―――ンッ!!!』


連続で発砲。

だが、既に近距離。

全ての銃弾を避け、ゼロ距離まで接近する――!


「はぁっ!!」


千鳥を下から上え掬い上げるように、

銃を目掛けて切る――!


『バキンッ!』


短い金属音と共に、男生徒の銃は空中へ舞っている。


「馬鹿なっ!?」


男生徒は宙に舞っている銃を視る。

眼を私から背けた瞬間、千鳥の刃先を男生徒の頭に突きつけた。


「まだ、戦うか?」


少しでも前に力を入れれば、千鳥の刃先は男生徒の頭を貫く。

それぐらいのゼロ距離。


「くそぉ……」


男生徒は背中に手を回している。


「これでも喰らえ――――――――――ッ!!!!!」


その手には手榴弾のような物が握られていた。

既に線は抜いてある。

その手榴弾を地面に向かって叩き落とす――!


「――ッ!?」


『バ―――ンッ!!!』


その音と共に、周りが光で見えなくなる。

私は反射的に眼を閉じる。

これは、閃光弾というやつか!?


『カチャッ……』


銃を構える金属音が微かに響く。

これはマズイ……。


私はその場を右に駆け抜けた。


眼を開けていたら眼が焼ける。

私は眼を閉じ、感覚で走る。


『ズドドドドドドドドドッ!!!!!』


私が先ほどまでいた場所で銃声が響く。

あの場所に留まっていれば、今頃は蜂の巣だった。

私は疾走する。


……。……。……。


眼に受ける光の刺激が少なくなってきた。

閃光弾の範囲からは抜けれたようだ。

私はゆっくりと眼を開ける。


「中沢くん達と相当離れてしまったな……」


だが、中沢くんには能力がある。

その能力さえあれば、安全だろう。


周りは建物に囲まれ、空は夕焼け模様だった。


早く中沢くんの所へ戻らなくては……。

それを行動へ移そうとした瞬間……。


『ズド―――――ンッ!!!!!』


「――はぁあっ!?」


あまりにも唐突過ぎて反応仕切れなく、

顔を右に少ししか傾かせられなかった。


「くっ……」


銃弾が髪を掠れた感覚が伝わってくる。

反応が遅ければ、頭が吹き飛ばされていた。


何処からだ……。


私は周りを凝視する。


だが、誰もいない。


『ズド―――――ンッ!!!!!』


再び銃声がした。銃声の音は右上。

そこかっ!


銃声の音と共に、右へ駆け出す――!


そこにあったのは大きなビル。

このビルの中に隠れて私を狙撃していた。


私はそのビルの中へ進入した。



◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇



ビルの中は薄暗く、物などは散乱していた。

ガラスなども割れている。


『タタタタタタッ……』


誰かがこちらに向かって走っている。

私は歩みを止めた。


「た、助けてください!変な人に狙われているんです!」


逃げまとう少女がこちらへ向かってくる。

この少女は私服を身に着けていた。


『狙われている』


恐らくは私を狙った人間だろう。

その人がこの少女も狙っている。


即行に何とかしなくては……。


「下がっていろ」


私は少女の前に出て、少女を後ろへ回す。


何処だ……。この少女を狙う人間は……。


私は前方を凝視する。



だからその一撃に私が気付いたのは奇跡と言って良かった。



「あっ!?」


私が身体をひねるのと同時に、背後から来たナイフが私の右腕をかすめる。


「くぅっ!!」


辛うじて直撃を避けたものの、ナイフは右腕の表面を切り、

そこから少し出血していた。


「あらあら、避けられましたか?」


あの逃げ回っていた少女の右手にはナイフが握られていた。

そのナイフには血がついている。


その少女の態度は世間話でもしているかのように気安かった。


「右腕ぐらいは貰えるかと思ったのになぁ~」


もうあの逃げまとっていた少女ではなかった。

あれは、演技だったのか……。


そして、少女は手の中でナイフをくるくると回して私に笑いかける。


「…………」


私は千鳥の柄を握り、睨みつける。

まだ千鳥は鞘に納まれたまま。


少女は回していたナイフを止め、突き刺す構えへかえる。


不意打ちを仕掛けてきた上に、ナイフも器用に扱っている少女。

明らかに手馴れている。

だが、それも私服を身に着けているため分からない。


「じゃぁ今度はどうかしらねぇっ!?」


少女は右側に転がるように移動し、

そこに隠していた狙撃銃で私を狙う。


「狙撃銃だとっ!?」


ようやく合点がいった。

外で私を狙っていたのもこの少女。


『ズド―――――ンッ!!!!!』


私の意識が僅かに外れた瞬間を見逃さず、

少女は狙撃銃で発砲する――!


「はぁっ――!!」


『カキンッ!』


千鳥の刃を鞘から少し抜き、その僅かな刃で銃弾を弾いた。

あのタイミングで発砲されてしまえば、避けようがない。


あの少女は相当腕が立つ。

戦略、狙撃、ナイフ、

その証拠として、私の右腕の表面を切った。


もはや手加減無用……。


くぞッ!少女!」



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