9月4日/沙耶eyes 前哨戦
ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)
この作品はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、
実際の物とは一切関係ありません。
初めて読む方は、本編からご覧ください。
ーboy and girls' aspectsとは?ー
このモードは主人公の視点ではなく、
君の魂に抱かれての主人公以外の登場人物の視点です。
これにより、より世界観がわかりやすくなります。
※目次の場合、下に行くほど時間が最新です。
12話 対応を失った瞳~
戦場が見えてきた。
が、既に男生徒が前方に佇んでいる。
男生徒は銃口をこちらに向けて構えていた。
「伏せろっ!!」
「――!?」
中沢くんは素早く二人を伏せさせる。
『ズド―――――ンッ!!!!!』
そういい終わった瞬間、男生徒が発砲した。
私は銃を走りながら避け、男生徒の方へ、矢が射出されるかのような勢いで男子生徒へ駆け込む。
男生徒の距離が近くなると、腰に差してある千鳥の柄を握り、鞘から千鳥を抜く――!
『ズド―――――ンッ!!!!!』
銃口は私の方を向いていた。
私を狙いにしてくれたようだ。
この周りには敵はこの男生徒しかいない。
つまり、この男生徒を遠くに行かせば、中沢くん達は安全。
『パキッ――――――ンッ!!!!!』
銃弾を千鳥の刃で弾き、更に距離を縮める。
「な、なに……!?」
相手は銃。
遠距離戦は私の不利。
だが、近距離では私の有利だ――!
『ズド―――ンッ!!!ズド―――ンッ!!!ズド―――ンッ!!!』
連続で発砲。
だが、既に近距離。
全ての銃弾を避け、ゼロ距離まで接近する――!
「はぁっ!!」
千鳥を下から上え掬い上げるように、
銃を目掛けて切る――!
『バキンッ!』
短い金属音と共に、男生徒の銃は空中へ舞っている。
「馬鹿なっ!?」
男生徒は宙に舞っている銃を視る。
眼を私から背けた瞬間、千鳥の刃先を男生徒の頭に突きつけた。
「まだ、戦うか?」
少しでも前に力を入れれば、千鳥の刃先は男生徒の頭を貫く。
それぐらいのゼロ距離。
「くそぉ……」
男生徒は背中に手を回している。
「これでも喰らえ――――――――――ッ!!!!!」
その手には手榴弾のような物が握られていた。
既に線は抜いてある。
その手榴弾を地面に向かって叩き落とす――!
「――ッ!?」
『バ―――ンッ!!!』
その音と共に、周りが光で見えなくなる。
私は反射的に眼を閉じる。
これは、閃光弾というやつか!?
『カチャッ……』
銃を構える金属音が微かに響く。
これはマズイ……。
私はその場を右に駆け抜けた。
眼を開けていたら眼が焼ける。
私は眼を閉じ、感覚で走る。
『ズドドドドドドドドドッ!!!!!』
私が先ほどまでいた場所で銃声が響く。
あの場所に留まっていれば、今頃は蜂の巣だった。
私は疾走する。
……。……。……。
眼に受ける光の刺激が少なくなってきた。
閃光弾の範囲からは抜けれたようだ。
私はゆっくりと眼を開ける。
「中沢くん達と相当離れてしまったな……」
だが、中沢くんには能力がある。
その能力さえあれば、安全だろう。
周りは建物に囲まれ、空は夕焼け模様だった。
早く中沢くんの所へ戻らなくては……。
それを行動へ移そうとした瞬間……。
『ズド―――――ンッ!!!!!』
「――はぁあっ!?」
あまりにも唐突過ぎて反応仕切れなく、
顔を右に少ししか傾かせられなかった。
「くっ……」
銃弾が髪を掠れた感覚が伝わってくる。
反応が遅ければ、頭が吹き飛ばされていた。
何処からだ……。
私は周りを凝視する。
だが、誰もいない。
『ズド―――――ンッ!!!!!』
再び銃声がした。銃声の音は右上。
そこかっ!
銃声の音と共に、右へ駆け出す――!
そこにあったのは大きなビル。
このビルの中に隠れて私を狙撃していた。
私はそのビルの中へ進入した。
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇
ビルの中は薄暗く、物などは散乱していた。
ガラスなども割れている。
『タタタタタタッ……』
誰かがこちらに向かって走っている。
私は歩みを止めた。
「た、助けてください!変な人に狙われているんです!」
逃げまとう少女がこちらへ向かってくる。
この少女は私服を身に着けていた。
『狙われている』
恐らくは私を狙った人間だろう。
その人がこの少女も狙っている。
即行に何とかしなくては……。
「下がっていろ」
私は少女の前に出て、少女を後ろへ回す。
何処だ……。この少女を狙う人間は……。
私は前方を凝視する。
だからその一撃に私が気付いたのは奇跡と言って良かった。
「あっ!?」
私が身体をひねるのと同時に、背後から来たナイフが私の右腕をかすめる。
「くぅっ!!」
辛うじて直撃を避けたものの、ナイフは右腕の表面を切り、
そこから少し出血していた。
「あらあら、避けられましたか?」
あの逃げ回っていた少女の右手にはナイフが握られていた。
そのナイフには血がついている。
その少女の態度は世間話でもしているかのように気安かった。
「右腕ぐらいは貰えるかと思ったのになぁ~」
もうあの逃げまとっていた少女ではなかった。
あれは、演技だったのか……。
そして、少女は手の中でナイフをくるくると回して私に笑いかける。
「…………」
私は千鳥の柄を握り、睨みつける。
まだ千鳥は鞘に納まれたまま。
少女は回していたナイフを止め、突き刺す構えへかえる。
不意打ちを仕掛けてきた上に、ナイフも器用に扱っている少女。
明らかに手馴れている。
だが、それも私服を身に着けているため分からない。
「じゃぁ今度はどうかしらねぇっ!?」
少女は右側に転がるように移動し、
そこに隠していた狙撃銃で私を狙う。
「狙撃銃だとっ!?」
ようやく合点がいった。
外で私を狙っていたのもこの少女。
『ズド―――――ンッ!!!!!』
私の意識が僅かに外れた瞬間を見逃さず、
少女は狙撃銃で発砲する――!
「はぁっ――!!」
『カキンッ!』
千鳥の刃を鞘から少し抜き、その僅かな刃で銃弾を弾いた。
あのタイミングで発砲されてしまえば、避けようがない。
あの少女は相当腕が立つ。
戦略、狙撃、ナイフ、
その証拠として、私の右腕の表面を切った。
もはや手加減無用……。
「行くぞッ!少女!」




