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君の魂に抱かれて  作者: 皐月-Satsuki-
boy and girls' aspects
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9月3日/侑eyes    新しい日常を

ー君の魂に抱かれてー(きみのこころにだかれて)


この作品はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・事件・世界設定などは全て架空の物であり、

実際の物とは一切関係ありません。

初めて読む方は、本編からご覧ください。



ーboy and girls' aspectsとは?ー


このモードは主人公の視点ではなく、

君の魂に抱かれての主人公以外の登場人物の視点です。


これにより、より世界観がわかりやすくなります。


※目次の場合、下に行くほど時間が最新です。



ー9月3日ー


この日もやっぱり異世界で迎えた。

こんな世界からは出たいっていうのに……。


俺達は森の中で一晩を過ごした。

16年間生きてて初めての体験だ。


だが、何もせずにこの世界から、

出れるなんてことはないだろう。


……。……。……。


俺ははっきりいって寝れなかった。

動物もいないから、静かではあった。


その中で俺達は何故か夜が明けるまで語り合っていた。

まるで修学旅行のように、くだらない話だった。


よくあんなに話せたなって思うぐらいだ。


寝不足は俺だけじゃなくて全員だろう。


「…………」


なんだか体中が重い……。

俺は寝返りを打つ。


……。……。……。


眠れないなら起きよう。

これしかない……。


「よいしょ……」


威勢のない声で身体を起こす。

だが、身体を起こしただけ。

その後は膠着こうちゃくしていた。


……。……。……。


俺って今、酷い顔してるんだろうな……。

相当疲れてる顔をしているんだろうな……。

自分の顔がだんだん心配になってきた。


周りを見てみる。


全員倒れている。

いや、寝ているか……。


つまり、起きているのは俺だけ。


う~~~ん……。

何しようかな……。

暇だな……。


俺は周りを見ながら、そう考える。


ああ、パソコンやりたいな……。


電気のない生活は本当に不便だ。

改めてそう感じた。


俺はポケットから、携帯電話を取り出す。


「…………」


俺は黙して開いていない携帯を見つめる。


……。……。……。


見るのに飽きた俺は、携帯を開いてみる。


「やっぱり映らないか……」


画面は真っ黒のまま。

その黒い画面に俺の顔が薄っすらと見える。


「俺を映してどうするんだよ……肝心な画面を映せよな……」


携帯に向かって文句を垂らす。


俺は携帯を閉じ、ポケットに入れる。


「はぁ~~~」


大きく吐息を漏らす。

電気を使わない遊びか……。

この暇を乗り越えないとな……。


……。……。……。


「一人ジャンケンでもするか……」


俺は右手と左手を向かい合わせる。

もちろん、最初はグーの形だ。

それが、基本だからな。


そういえば、ジャンケンって絶対に、『最初はグー』っていうよな……。

あれって意味あんのかな……。


だって、最初っから、『ジャンケン、ポッ!』で、いいような気がする。


後、絶対に『最初はグー』っていうところで、

パー出す奴いるんだよな。

そして、『イエーーー!勝ったー!』ってほざいてるんだよな。

聖夜とか聖夜とか聖夜とか……。


そういえば、ジャンケンって各地方でかけ声が違うんだっけ?

確か違ったような気がする。


「さぁ、一人ジャンケンの始まりだ!」


あまりにも楽しくないから、実況をつけて、自分を奮い立たせる。


「文句なしの一回勝負!Are you ready!?」


『you』もなにも、俺しかいないんだけどな。

ああ!侑だけに『you』か!?

上手いな俺!アハハハハハハ!


「Yeeeee―――――!!!!!」


『Are you ready!?』と言われたから、俺も準備OKの意思を伝える。


「さぁ、伝統の一戦の始まりだ!」


おお!何だか興奮してきたぞ!

実況の力ってすごいな……。


「最初はグー!」


リズム良く、両手を前に出す。

さぁ、始めようか……。


~伝統の一戦を!!~


「ジャンケンッポ!!」


伝統の一戦の結果は――!?

俺の興奮が最高潮になる。


「おっと!あいこだ!これが伝統の一戦だ!」


無意識に出した両手の形はお互いに、

パー。

試合は第2ラウンドへ……。


「第2ラウンド!Are you ready!?」


「Yeeeee―――――!!!!!」


俺一人テンションMAX。

さぁ、始めようか!


「最初はグー!ジャンケンッポ!!」


俺は再び無意識に両手を動かす。

さぁ、どっちの勝ちだ!?


が、そこにはありえない光景が広がっていた。


「な!手が三つだと!」


信じ難い光景を眼にした。

俺の手が三つに!?

人体の進化か!?


いや…手が三つあってもいらないよな……。

そしたら、進化じゃなくて退化か……?

くそ!なんで俺が退化しないといけないんだよ!


が、その手は俺の前から出されていた。

明らかに違う手。


「勝った」


「――ッ!?」


俺は顔を上げ、前方を見上げた。


そこにいたのは緋咲だった。


「嘉上 緋咲!!」


俺は再び視線を下に落とし、ジャンケンの結果を見る。

そして、忘れていた実況を入れる。


「おお!なんということだ!伝統の一戦に挑戦者か――!!」


が、結果は俺が負けていた。

俺は両方とも、グー。

緋咲はパー。

俺は両手なのに片手の緋咲に負けた。


「何やってんの?」


改まって俺に問いかける。

結構恥ずかしいところを見られたかもしれない。


「見て分からないのか?一人ジャンケンだ」


だが、俺は平然を保つ。

一人ジャンケンしてなにが悪い?

以外に燃えるんだぞ?


「そんなことやって楽しい?」


……。……。……。


楽しいのか?

これって……?

俺は我に返る。


「いや、全然」


俺は何が楽しくてこんなことを

始めたのだろうか?


「アンタってバカ?」


「ああ」


それは、否定しない。

俺はバカだ。

いや、バカが一番いい。

いや、バカってそんな生ぬるいもんじゃない!

バカって素晴らしいじゃないか!


「お前だって十分過ぎるバカじゃないか」


緋咲の後ろから男の声が聞こえた。

この声は蒼生だ。


「うるさいうるさ―――いっ!!お前はあっち行け!」


緋咲の声が響き渡る。


「朝っぱらから叫んで……お前は元気だな」


蒼生先輩のいう通りだ。

確かに元気だ。

元気なのは良いことだ。うん。



◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇



「これからの件だが……」


リーダー粢先輩が声を上げる。

全員、面子が揃ったとこで、全員で円を描くように座る。


「俺は貴方方に協力しますよ」


おお!なんというありがたい蒼生先輩のお言葉!

昨日の夜の語りで俺達の結束は固まったからな。


「本当か!?」


粢先輩は蒼生に視線を送る。


「ええ。"こんな世界"だ。協力し合いましょう」


こんな世界……。

そうだった。

此処は殺し合いが日常化している世界。


「それは心強いな!」


粢先輩は笑みを浮かべる。


俺は周りを見渡す。


いつの間にか7人になっていた。

最初は3人から始まった。


菜月、聖夜、粢先輩、奏笑、蒼生先輩、緋咲、

そして、俺。


「ふん!あまり気が進まないけど仲間になってあげてもいいわよ!」


緋咲は腕を組み、そっぽを向きながらそういった。

しかも姿勢は胡座をかいている。


「俺だってお前が仲間になるなんて気が進まないぞ」


「うるさいうるさいうるさ―――――い!!いいからお前は早く死ね―――――!!」


再び緋咲の高い声がこの森に響き渡る。


「緋咲もそんなに暴れるな」


粢先輩は笑顔でそういった。

楽しそうに微笑んでいた。


「暴れてなんてない!」


随分と雰囲気が良くなった。

昨日より更にだ。

この世界の恐怖すら忘れてしまうほどだ。


この世界での生活も悪くはない。

この世界にきたときは、そんなことはまったく思わなかった。

いや、思う筈もないことだった。


俺はこの世界でも新しい日常を掴みかけていた。



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