デザイン画描き
短めです。
キティが淹れてくれたお茶を一口飲む。
クラウディアはすぐにでも取りかかりたかったのだがキティの待ったがかかった。
先に一杯だけでもお茶を飲んでほしいと言われた。
それに頷けばお茶とともにクッキーが出された。
集中すれば寝食を忘れるクラウディアのことをよくわかっている。
クッキーにも手を伸ばした。
キティは満足そうな顔だ。
きちんとお茶も飲み干し、クッキーも食べ終える。
すかさず差し出された濡れた布で手を拭いた。
「ありがとう、キティ。一息つけたわ」
キティにお礼を言えば微笑んで頷いてくれる。
メモできるようにノートを広げて筆記具を用意してから詩集を手にする。
「お茶のほうは淹れておきますので」
「ありがとう」
キティの細やかな気遣いは有り難い。
意識を切り替える。
詩集を開き、使えそうな一節とそこからもたらされるイメージをメモしていく。
後でこのイメージメモからデザインを起こしていくのだ。
メモの端に詩集の題名とページ数を記入しておくのも忘れない。
後で立ち戻れるようにするためだ。
その作業に集中した。
何冊かの詩集からイメージを拾ったところでデザインを起こしていくことにした。
真新しいスケッチブックを開く。
このスケッチブックはモーガン家からの依頼専用にしたものだ。
そのまま検討のためにモーガン家に置いてきても大丈夫なようにだ。
メモを読み込み、元の詩集にも立ち戻り、デザインを描いていく。
イメージをデザインに落としていくのはなかなか大変なことだが楽しい作業でもある。
どんな色がいいか、どんな刺繍で表現するか。
考えるだけでわくわくして色鉛筆を持つ手が止まらない。
何枚も何枚も描いていく。
描いてイメージと違うと思ったものはそのページを剥がしてテーブルの上に置いておく。
細かく破らないでほしいと以前キティにお願いされていた。
細かく破くと片づけるのが大変なのだそうだ。
確かに散らばったりしてしまったら集めるのが大変そうだと納得した。
それ以来、失敗しても破くことなくキティに片すのを任せている。
そのほうが多く置けることにも気づいた。
破る時間もなくなればその分も描く時間に使える。
そのことに気づけば破るという選択肢はなくなった。
キティも片す手間が減る、クラウディアも描く時間が増える、双方にいいこと尽くめだ。
今も頭の中に浮かぶイメージを絵に興すのに必死だ。
失敗したページを破り取るのももどかしい。
ついには後でまとめて破り取ることにした。
今はただひたすらイメージを追ってスケッチブックに色鉛筆を走らせる。
時間が経つのも忘れてクラウディアは夢中でデザイン画を描いたのだった。
読んでいただき、ありがとうございました。




