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引きこもり令嬢と呼ばれていますが、自由を謳歌しています  作者: 燈華


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国立図書館での思わぬ邂逅

次の日。

クラウディアは朝から図書館に来ていた。


国立のこの図書館は貴族と、許可証を持った平民のみが入れる場所だ。

一般の平民用の図書館は別にある。

連れて入れる使用人は一人だけで、護衛は王族とその婚約者以外には認められていない。


連れてきた護衛は待機室で待つことになる。

だからマルセルも待機室にいてもらっている。

適当にお昼やおやつを食べてとは言ってある。

それには頷いてくれたのできちんと取ってくれるはずだ。

「ごゆっくり」と笑顔で言ってくれた。

彼は夕方までクラウディアが図書館に(こも)りそうだと見越しているのだろう。


図書館に来た時はついつい長居してしまう。

普段領地に籠っているのでついついあれもこれもと欲張ってしまうのだ。

手を振られて、見送られたクラウディアはキティだけを連れて館内に入った。





調べものに来たはずだったが、ついつい興味の引かれる本を見つけて読み(ふけ)る。

連れてきた使用人も本を読む権利は与えられるのでキティにも読んでいていいからね、とは言ってある。


キティも一応本を取ってきてはいるが、本を読むのに夢中になったクラウディアはキティが本を読んでいるかどうかまでは把握しない。

キティはそれこそを望んでいる。

いつも図書館に来た時は「私のことは気になさらないでくださいませ」と言われるのだ。


クラウディアがキティのことを気にして読書に集中できないほうがキティにとっては嫌なことなのだ。

それを知っているからクラウディアは気にしないことにしている。

……集中してしまうと他のことを気にしなくなってしまうこともあるが。

キティがいてくれるからこそクラウディアは読書に没頭できるのだ。



*



ふっと集中力が切れた。


「キティ、お腹空いたわね」

「それはちょうどよかった」


返ってきたのが男の人の声で驚く。

知っている声だ。

ぱっとクラウディアはそちらに視線を向けた。


「アーネスト様」


アーネストが椅子のすぐ傍にいた。思っていたより近い。


「どうしてこちらに?」

「仕事での調べものだよ。それよりクラウディア嬢、侍女の彼女も一緒に下のカフェで一緒に昼食でもどうだい?」


図書館にはカフェが併設されているのだ。

そしてそこでは身分関係なく同席できることになっている。

クラウディアはキティに視線で確認してから頷いた。


「ええ、喜んで」

「よかった」


微笑んだアーネストに差し出された手に手を重ねて立ち上がった。


「行こう」


そのままエスコートされる。


キティが番号札を本の上に置いてから後に続く。

入館時に渡されるその札は本や席を取っておくためのものだ。

この本や席は使っているという合図なのだ。


本当にキティはしっかりしている。

読んでいただき、ありがとうございました。

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