81話 二つ名
遅くに申し訳ない(>_<)
六章開始です!
そして翌日、今日は日本へ帰国する予定だ。
西連寺さんの能力で一っ飛び出来るので飛行機に乗る必要もない。
「忘れ物ないですか~」
西連寺さんが呼びかけ、最後に持ち物を確認する。
お金よし、ルイよし、そして誰かの手紙よ・・・くない、何だこれは。
入れた覚えのない紙を手に取り中身を読む。
『 少年へ
一度イギリスに遊びにこないかい。
楽しませて貰ったお礼に少し面白い場所に招待しようと思うんだ。是非一度考えてみてくれ。きっと気に入ってくれると思うよ。』
「よし、捨てるか」
ご丁寧に文の下には住所も記載されている。これを奴のファンに横流しすれば大変な事になるだろう。爆弾のスイッチを握っているかと錯覚すらしてしまう。
まずはびりびりにしようと紙を横に向けると裏にも小さく何事かが書かれているのに気付く。
『可愛い子もたくさんいるから誰か紹介しようか? いや、君にはいらないお世話かもしれないけどね』
「・・・」
紙を懐にしまう。
絶対者同士の付き合いも大切だと思っていたところだ、時間があったら是非行ってみるべきかもしれない。一応言っておくが、断じて女の子に釣られた訳ではない。この俺がそんなしょうもない事の為に動く訳もないだろう。
「俺は忘れ物ないです」
西連寺さんの元へと移動する。
(イギリスの女性の好みをリサーチせねば)
帰ったらやる事がまた一つ増えてしまった。
「帰ったど~!」
久しぶりの我が家に蒼が歓喜の声を上げる。
西連寺さんの転移で柳家に直接帰還したのだ。
「楽しい時間を過ごせたっす! 自分たちはこれから仕事があるのでこの辺で本部の方に戻るっす」
「あらあら、もう少し休憩していけばいいのに」
「いえ、いつ何が起きるか分からないっすから!」
偉いわね~と、撫で繰り回している母さんと人形にされてる服部さんを横目に荷物を自室に移動させる。
「よっこいせと、俺も一度本部に行った方がいいか」
サリーに会うのもそうだが、色々と動いてくれたであろう金剛さんにもお礼を言わないといけない。
階段から降り、西連寺さんに俺も本部に行く旨を伝える。
「分かった。ほら、鈴奈っちもそろそろ行くよ~」
「ふぁ、ふぁい、今行くっす」
母さんのせいで帰って来たばかりだというのに服部さんはへろへろだ。後で栄養ドリンクを奢ろう。そして母さんには父さんを差し出して行動を控えてもらうしかないな。
「じゃ、飛ぶよ~」
気の抜けた西連寺さんの声が聞こえ、視界が一瞬で入れ替わる。
見渡すと最新鋭の機械がそこら中に配置されている。久しぶりの特殊対策部隊の本部だ。
「あっ! 後輩が帰ってきたのです!」
「わん!」
元気な声と共に桐坂先輩とサリーが走り寄ってくる。
「後輩後輩! テレビ見たのですよ! 何て言ったらいいのか分からないけどとにかく凄かったのです!」
「あ、ありがとうございます」
目をキラキラさせ、手を振り回しながら感情を表現しようとする先輩が可愛すぎて萌え死んでしまいそうだ。サリーも尻尾を振り回して元気そうだ。頭を撫でると嬉しそうにすり寄ってくる。やっぱりもふもふが一番心が癒されるなあ。
「私も本当に驚いたわ。まさかこんな身近な人物が絶対者クラスの実力を持っていたなんて・・・今でも半分夢なんじゃないかと思っているもの」
「あっ、お久しぶりです吉良坂さん」
次いで先輩の後ろから優雅に歩く吉良坂さんの姿が。相変わらず腰には刀を帯刀しており物騒極まりない。手には大きめの封筒を持っており宛名に俺の名前が書かれている。
「それは何ですか?」
「ふふっ、どうぞ。私達も見ていいかしら」
その言葉で書類がどういうものか分かった皆は興味津々に書類を凝視する。
まあ、別に見られて困る事もないので許可すると、早速封筒を破り中身を確認する。
「「「「おおお!!!!」」」」
やはり中身は絶対者に関する書類通知で、俺が絶対者になる事が決定した旨が綴られていた。
認定書の上にはでかでかと統括支部長の印鑑が押されており、隣には“頑張ったのじゃ!”と言う感想まである。小学生の運動会かよ。
序列は九位。五位を倒したのにどうしてと思うかもしれないが、序列には単純な戦闘力に加え怪物を倒した成果が加わる。俺は絶対者の中では最も怪物の討伐数が少ないという事だろう。
そして俺も少し興味を持っていた二つ名は、
「【千変万化】、か」
千変万化、状況によってさまざまに変化し続けることの意だ。
成程、確かに俺にはピッタリの二つ名かもしれない。拳で戦ったかと思えば炎を操り、雷撃を操り刀で舞い、その姿を変化させ続ける俺の姿は正に千変万化であると言えよう。
「かっこいいっす! 柳君にピッタリじゃないっすか!」
服部さんの言葉に周りも頷く。
「あの戦いは強烈的だったもの、でも別に多重能力者ってわけではないのでしょう?」
「ええ、大会で見せた力は一つの能力しか使っていませんよ。どんな能力かは内緒ですけど」
「だれもが決勝では拳を使うと思っていたから私同様度肝を抜かれたでしょうね。気を付けてね柳君。絶対者になったと言っても馬鹿な研究機関はあなたの能力を知ろうと接触してくるかもしれないわよ」
その危惧は俺も感じていた。
理由としては、数年前に多重能力者の研究が凍結された書類を見つけたからだ。かかった費用を考えると、多くの国はこの多重能力者にかなり大きな期待を入れていたのだと予想出来る。
そして今回、その多重能力者の可能性が秘められた俺という存在が現れた事で再度多重能力者の研究を始めようと馬鹿な行動を起こす連中が出てくるのではないかと思っている訳だ。
「まあ、その時はその時ですね。それよりも他のお三方は何処にいるんでしょうか?」
まだ金剛さん、菊理先輩、牙城さんの姿が見えない。
「菊理ちゃんはお疲れで今は寝ているわ。金剛さんと牙城君はお仕事で出てるわね。最近研究機関を狙った襲撃が頻繁に行われてるみたいでその対応に行ったみたい」
「それは穏やかじゃないですね。組織で襲撃してきてるんでしょうか」
「いえ、単騎での襲撃らしいのです。怪我人さんが震えながら“あれは化け物だ”と言っていたので相当強い能力者だと思うのです」
ふむ、困ったな。金剛さんにお礼を言おうと思って来たのに本人に会えないとは。
俺も現場に向かうか? いや、牙城先輩の戦い方を知らない俺では逆に足を引っ張るかもしれない。
「あっ、でも死傷者は一人も出てないので殺人を目的とするような相手ではないと思うのです」
「誰も死んでいないのですか?」
「一番酷い怪我で太腿が貫通していたぐらいなのです」
だとすれば襲撃者は相当強い能力者だな。相手を殺さず施設を破壊して回るなど、隔絶した力をもっていないと不可能だろう。
「お相手さん強そうっすね~ でも、金剛さんと牙城さんには流石に勝てないと思うっすけど」
「ていうか無理でしょ、金剛さんの障壁を全て突破出来るのはそれこそ絶対者じゃないと無理だと思うし」
二人の言う通り、訓練所で軽く手合わせした感じでは障壁を破壊するのに最低でも位階を上げないときついと感じた。世界ランク十五位の看板は伊達ではないという事だ。
金剛さんに会うのを諦めた俺は今日は帰ることを伝えると、本部を出てスマホで調べた神社にやって来た。
少しみすぼらしい外観をしているが、周囲の木々からさす木漏れ日が神秘的な雰囲気を醸し出している。
財布を取り出し、賽銭箱にありったけのお金を投入する。十万程投入したと思うが、これからの不運が消えると思えば安い出費である。
「これからの人生はイージーモードで過ごせますように」
手から火が出る程擦り神頼みする。
「よしっ!」
やり切った。これで将来は安泰だな!
幾分か軽くなった気分で鼻歌を歌いながら帰路に着く。
神社の社の陰から狐の尻尾がゆらゆらと揺れ、狐耳の少女が背を見せる隼人をじっとその双眼で見つめていた。





