59話 勝利の歓声
久しぶりに活動報告書きましたけどあそこは一体何を書けばいいのか・・・
「「「おぉおおおおおお!!!!」」」
俺の勝利に歓声が響き渡る。
Sランク級の怪物が四体という絶望的状況をたった一人で覆したのだ。英雄の姿を間近で見た彼等の興奮は留まる事を知らず、ある者は涙を流しながら抱き合い、ある者は雄叫びを上げる。
(・・・いや、助けて欲しいんですけど)
そして俺はジト目で彼等を見ていた。
「う、動けねえ」
能力を解いたのはいいが反動が凄まじい。
全身が痺れ、少し動かすだけでも一苦労だ。
「まさか武御雷を出す羽目になるとは・・・俺もまだまだだな」
心の何処かで慢心があったのかもしれない。
情けない。Sランク級とは言えこれ程の重傷を負わされるなど、母さんに知られたらお怒りモード突入待ったなしだ。
「がはっ!」
口から血を吐き出す。
内臓もかなりズタズタにされているからな、逆に未だ意識があるのが謎だ。
とりあえず西連寺さんに連絡して桐坂先輩を連れて来て貰おう。
「スマホスマホと」
ポケットを探りスマホを探す。
それらしい感触を右手に感じるとポケットから取り出す。
「・・・オーマイガー」
俺のスマホは生前の姿と変わり粉々に粉砕されていた。
震える手が止まらない。
この中には、この中には人生初の女子(服部さん)から貰ったメアドが入って・・・
「くそがぁあああ! がはぁああ!」
怒りのあまり叫ぶと体中の傷口から血が噴き出す。
「柳さん?!」
井貝さんが声を張り上げながら俺目掛け駆け寄ってくる。
彼の後ろには何故か護衛の方々とお嬢様方まで付いてきている。
いや、なんでだよ。
まだ敵がいる可能性があるんだからお嬢様には施設の中に留まって欲しいのですが。
「大丈夫ですか柳さん!」
井貝さんが俺の体を支え、瑠奈様が泣きそうな顔で手を握ってくる。瑠奈様を抱きしめている春香様も俺の怪我に顔を青くしながら手で口を押えている。
それにしても何で井貝さんは俺の名前を? ああ、そう言えば戦闘の始まる前に自分で名乗っていたか。
「おに゛いぢゃんじなないで!」
「・・・大丈夫ですよ。俺は不死身ですからね」
あ~あ、泣かしちまったよ。
大粒の涙がぽろぽろと溢れ出し、俺の手を濡らす。
護衛対象の笑顔一つ守れないとは・・・護衛失格だな。
彼女の涙は俺の判断の甘かったが故の結果だ。少し離れても大丈夫だろうという慢心、多少の怪我を負っても構わないと判断した結果だ。
だが、もう覚えた。
次は無い。敵も、そして俺もだ。
少しの希望も与えず敵を惨殺し、俺は無傷で生還しよう。
その前に怪我治さないと死ぬけど。
「井貝さん、スマホ借りてもいいですか?」
「スマホですか? ええ、構いませんが」
スマホを借りるとまず西連寺さんに電話を掛ける。
え? 何で番号知ってるのかって? 入隊時に特殊対策部隊全員の番号を教えられるからだ。決して俺が土下座して聞き出した何て事実はないから安心してくれ。
『はいは~い、どちら様ですか?』
「先輩、俺です。柳です」
『柳君? スマホ壊れたの?』
「はい、戦闘で巻き込まれちゃったみたいで。それよりもちょっと怪我しちゃいまして、申し訳ないのですが桐坂先輩を連れて来ていただければありがたいのですが」
『全然オッケ~、ていうか今萌香っちとお買い物してるから座標教えてくれたらすぐ行けるよ~』
「それは良かった。では座標を伝えますね」
通話を切って数秒後。
「ほいっと、到着~」
「もう、後輩は仕方ないのです。また怪我をして――」
桐坂先輩と西連寺さんの表情が固まる。
彼女たちの目に映るのは瓦礫と化した町と惨殺されている四体の魔物だ。一体何が起こったのか、隕石でも降ってきたのかと見間違うほど悲惨な状況に混乱し目を何度もパチパチと瞬きする。最後に俺に顔を移し、
「「きゃぁああああ!!!!」」
半スプラッタ状態の俺に叫び声を上げる。
傍から見たら叫ぶぐらいヤバい状態なのかよ、よく死んでねえな。
「何で後輩は死にそうになっているのですか?!」
すぐさま桐坂先輩が駆け寄り治癒を開始する。
「Sランク級の怪物が出まして、何とか勝ちましたがギリギリでしたよ」
「Sランク?!」
「ヤバいじゃん?! どれどれ!」
二人は惨殺された四体の怪物に目を向けどの死体がSランクの怪物であるのかを問いかける。
「全部です」
「「・・・」」
俺の回答に脳の処理が追い付かないのか、二人はピタリと停止して再度怪物に目を移し指で数を数える。
「な、成程。死体が四体あるように見えるけど元は一体の怪物だって事だね」
「いえ、四体で合ってますね」
「分かったのです! 後輩はSランクと勘違いしてるだけで本当はAランクの怪物だったのですよ!」
絶対正解なのです!
と自信満々に言い切った桐坂先輩は“そうなのですよね?”と周囲の人ごみに視線を投げかける。当然、皆はAランクではない事は戦闘を通して気付いているので全員が苦笑いを浮かべている。
二人は周囲の表情で俺の言葉が真実であることに気付いたのだろう。
表情を疑惑から驚愕に変え、唖然とした様子で俺を見つめる。
「ごめん・・・とんでもない事ってのは分かるんだけど非現実的過ぎて思考が追い付かないんだけど」
「後輩ってとんでもなく強かったのですね!」
西連寺さんは戦闘にも参加する為、事の異常さがよく分かっているが桐坂先輩はちょっと微妙だな。
まあ、二人が驚くのも無理はない。
ここ最近、木の怪物を除けばSランク級の怪物は何十年とその姿を見せていないのだ。それが突然、しかも四体が徒党を組んで襲ってきたなどと誰が信じるだろうか。それも、結果はたった一人の能力者に捻じ伏せられるというありえないものだ。
俺も人から聞いただけでは絶対に信じないだろう。
Sランク級の怪物がどれだけの力を持っているかを知っているが故に。今回勝てたのは俺というイレギュラーがいたからだ。逆に言えば何かしらのイレギュラーがなければ確実に蹂躙されていただろう。高宮家の当主は金剛さんに最大限の感謝をするべきだな。あの人に言われなかったら俺が任務に参加していなかった可能性もあるからな。
「ああ、疲れた~」
「ちょっと後輩! 動いたらダメなのです!」
ぺしん!と可愛らしい手が俺を叩く。
いや、先輩。今ので傷が開いたんですけど・・・
今回の成果を考慮して数週間、いや一か月は休みが欲しいな。
学生はそろそろ夏休みの時期だろう。俺も頼んでみようかな。旅行とかもいいかもしれない。そして今度こそは絶対にお参りに行こう。五千円ぐらい納めれば神様も厄を祓って下さるかもしれない。
「おーい!」
遠方から数十人の人影が見える。
おそらく井貝さんの言っていた援軍の人達だろう。
俺の仕事もここまでだな。
「先輩、後は頼みますね」
「うん? どうしたのですか?」
伝える事だけ伝えて俺は徐々に意識を手放していく。
血が足りねえ。
「柳君?!」
「後輩?!」
「おい!」
先輩方と周囲の人々の心配の声を最後に俺は意識を完全に手放した。
今度は天使みたいなナースに会えたらいいな何て考えながら・・・
これで気絶するの何回目だよ。
出来たら明日に次話投稿します(*‘ω‘ *)
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