47話 襲撃
誤字脱字報告大変感謝です!
百ぐらいの報告が来てたときは驚いて飲み物吹き出しちゃいました(;´д⊂)
移動開始から数分、高速道路の移動中、
「・・・来たな」
明らかにおかしい呼吸、緊張からか異常に早くなっている人物を数名感知した。
(やはりこのタイミングで来るか、予想通りだな)
「井貝さん、右前方約二百七十メートル地点のビルにスナイパーが一人、そして道路下から大型車が五台こちらを追っています」
「分かりました。確かここから一キロ先に合流ルートがあったのでそこから襲うつもりでしょう」
石井さんはインカムで仲間の状況を伝える。
そして数秒後、遠くのスナイパーの潜むビルが一瞬強い光を発した。
光から一直線に車のタイヤ目掛けて弾丸が飛び出す。それはそのまま突き進めば確実に撃ち抜くことが出来る完璧な狙いであった。
◇
スナイパーはスコープを覗きながら思わず笑みを浮かべる。
それは幾度となく仕事をこなし、成功してきたからこそ出来る笑みだ。
(約三百ヤードからの狙撃。もし探知系の能力者がいたとしてもここまで探知できるはずもない。何より移動中で大勢の人もいるのだ、その精度はがた落ちだろう)
スナイパーの思考は正しい。
実際に世界最高の探知系能力者の最大探知範囲は三キロメートルだが、それが移動中ともなるとその範囲は八百メートルまで狭まり、精度もかなり落ちてしまう。
だからスナイパーは己の攻撃を防がれることはないと高を括っていた。
実際この距離からの狙撃を回避できる者など井貝や護衛達でも不可能に近い。ただ彼が不運だったのは、敵に柳 隼人というイレギュラーがいた事だった。
スナイパーの放った弾丸を突如として現れた砂の壁が銃弾を受け止める。
「何ッ?!」
(馬鹿なッ?! あのタイミングで防げるはずがねえ! それこそ最初から俺の存在を知りでもしないと)
思考の最中、狙撃対象の車が僅かに光った気がした。それはまるで銃を撃った時のような――
「へ・・・?」
そこでようやく自分が後ろに倒れている事に気付く。
(何で俺は倒れてるんだ? それに何だか体が熱いような・・・)
腹部に手をやる、すると温かい液体が手に付いた。
おそるおそる手を顔に近づける。
「何だよ・・・これ」
手にはべったりと血が付き、ぽたぽたと垂れている。
スナイパーは訳も分からぬままその鼓動を止めた。
◇
「お見事」
「ありがとうございます」
井貝さんは軽く微笑むとライフルを椅子下へと収納する。
・・・何でそんな物騒なもんがそこに?
いや、ツッコむのは無しだ。もしツッコんで俺に銃口が向けられたらどうすんだ!
俺は何も見てない、見てないんだ!
「井貝さんは砂流操作だったんですね」
なので必殺! スルー&話題反らしだ!
「ええ、何とも地味な能力ですが、応用力が高いので自分は結構気に入っているのですよ」
確かに応用力は高い。
小さな隙間であろうと侵入する事が出来るし、集めれば超重量級の攻撃も可能だろう。隙と言う隙が無い攻めにくい能力だ。
敵にすればかなり厄介だが、今回の任務では非常に心強い。
「もうそろそろで合流地点に入ります。敵の動きはどうなっていますか?」
「変わらずこちらを追って来てますね。このままでは鉢合わせますがどうしますか?」
「・・・出来れば無視したいですが、難しいでしょうね。護衛の皆さんも準備は出来ているという事なのでここで迎え撃ちましょう。柏木様はお嬢様方の傍で守っていて頂けますか」
「分かりました」
俺は車の隅で震えている二人に近寄ると優しく頭を撫でる。
こんな事を当主に知られたらぶち殺されるかもしれないが、今は何となくこうしたかった。
「あ、あの・・・」
「ああ、すいません。自分には妹が居まして、ついつい何時もの調子で撫でてしまいました。不快でしたか?」
「い、いえ! そんな事はありません。ただ、少しだけ驚いてしまって」
そう言う春香は慌てる様に手を振ってあわあわしている。
でも震えは止まったようだ。
「瑠奈様もすいませんでした」
「あう・・・もうちょっとなでてほしい」
「おや、そうですか? それでは遠慮なく」
瑠奈は甘える猫のように俺の手に頭をすり寄せ目を細める。
天使かよ・・・
でも今は戦闘の最中なんだよなあ
高速の合流地点に到着し、下から五台の大型車が姿を現す。
「邪魔です」
すかさず井貝さんが砂を操作して数台の車を吹き飛ばすが、空中で車が停止して再度高速に降り立ち走行を開始する。
(サイコキネシスか、それも中々に強い)
「俺達を無視してんじゃねえぞ!」
護衛の能力者達が敵とこちらの車の間に入り込み、攻撃を開始する。
水、雷、土、念動力、あらゆる能力が入り乱れ完全な乱戦となった。
その乱戦の中、念動力で操作された瓦礫がリムジンのタイヤに衝突し、スリップしてしまう。
「「きゃぁあああああ!!!!」」
恐怖に叫ぶ二人を抱きしめ衝撃に備える。
ドンッ!
と鈍い音を立て防音壁に衝突し、リムジンに衝撃を伝えるが、それに対し俺は手を広げ壁に当てる事で相殺する。
そして俺はすかさず車から飛び出す。出来れば震える二人を支えてやりたいが、今は一刻を争う時だ。
「皆さん頭を下げて!」
俺の叫びに反応した井貝さんと護衛の人達が即座に体を下げる。
瞬間、その頭上を高速でトラックが通り過ぎる。
「ッ?!」
それを見た全員が驚愕に目を開き、勢いそのままのトラックは先刻まで争っていた敵に衝突し、そのあまりの威力を前に肉体が耐えられるはずもなく一瞬にして肉塊へと姿を変える。
驚きの声を上げる暇もなく事態は次の展開へと移る。
空から一体の乱入者が舞い降り、道路に着地する。
どれほどの距離から飛んできたのか、乱入者を中心に巨大な蜘蛛の巣状の罅が広がり、地震かと錯覚するほどの揺れを起こす。
「あん? 何でこんなに残ってんだ? ちゃんと掃除したつもりだったんだが」
そいつの体は恐ろしいまでの筋肉で構成されておりその額には角が生えている。
「・・・鬼、か・・・?」
誰が言ったかは分からないが、その場の全員が同じ事を考えていた。
やはりこの任務は一筋縄にはいかなそうだ。
次話も出来れば明日目指したいですけどもしかしたら明後日になるかもです。
面白い! 続きが気になると思って頂けた方は感想・ブクマ・評価をして下さると作者が嬉しくなります(*´▽`*)えへへ





