45話 高宮家
ちょっと遅くなっちゃいました。
何故かこの頃よく疲れるんですが、どうしてでしょうか?(-ω-;)ウーン
体も全快し現場に復帰して早々、金剛さんに特殊任務なるものを言い渡された俺はいやいやながらもその任務を受ける事に。そろそろ本気でお祓いに行かなくてはと思う今日この頃です。
そして二日後、
眼前に建つ荘厳な建物。その外観は流石の一言で、どれだけ金が掛かっているのか分からない。
敷居面積は四百五十坪、約千五百平方メートルもの広さがあるらしい。そこまで広くしてサッカーでもするのかよと突っ込みたくなるが、名家には名家なりの体裁などがあるのだろう。
そう、俺は現在、今回の任務である高宮 瑠奈の護衛をする為にその屋敷を訪れているのだ。
金剛さんに渡された資料によると高宮 瑠奈の歳は五。非常に活発な性格をしており、使用人に常に笑顔を振りまく天使のような女の子らしい。
「そろそろ時間だが・・・」
腕時計では十二時五十八分を指している。
午後一時頃にこちらに伺う事は既に通達している。時間になれば向こうから迎えが来るらしい。
そして約束の時間がきた。と、時を同じくして門の向こうから執事服を着た好青年が姿を現す。その姿からは風格のようなものが溢れ出していて某黒い執事さんを彷彿とさせる。コスプレなんかでは見たことはあるが、やはり本物は違うのだと実感した。
「柏木様ですね。ようこそおいで下さいました。さあ屋敷の中にお入り下さい」
執事さんに促され屋敷の中に踏み込む。
ちなみに柏木とは今回の任務での俺の偽名である。俺が特殊対策部隊だと気付かれない為の偽装の一つだ。俺の素性を知っているのは上層部の一部と金剛さん、後は高宮家の当主とその妻のみだ。
「今回は急な申し出に応えて頂きありがとうございます」
「いえいえ、こちらとしてはありがたい限りですよ。柏木様は探知系の能力者と言うお話ですがどれほどの距離を探知できるのでしょうか?」
「そうですねえ。自分を中心とした半径三百メートル程までですかね」
「ほう、それは中々。何が起こるか分かりませんからね。柏木様の力に期待させていただきましょう」
「はは、最大限の努力はしましょう」
廊下を歩きながら他愛のない会話をする。
勿論能力についても本当の事が伝えられている訳もなく、俺は探知系の能力者として参加する事となっている。半径三百メートル程度なら戦神で十分に周囲を把握する事は可能なので普通の探知系能力者より余程有用なはずだ。
それにしても廊下の至る場所に素晴らしい装飾を施された調度品や絵画が並んでおり、もし壊したらと思うと気が気ではない。
どうして高価な物を廊下に並べるのか全く理解できない。いや、それもここを通る人に対して威厳とかを示しているのだろうが、庶民的な観点からではこんな物騒なもんを人の手が届く場所に置くんじゃねえ! と文句の一つも言いたくなるというものだ。
「それで一つお伺いしたいのですが」
執事さんの脚が突如として止まる。
ゆっくりとこちらに振り返り微笑を浮かべるが、その瞳は全く笑っておらず冷たい光を宿している。
「どうして瑠奈お嬢様の護衛を引き受けたのでしょうか?」
その瞳が言外に語る、“敵であれば即座に始末する”と。
成程、このタイミングで接触しようとする俺は当然ながら警戒されてる訳だ。
実に良い殺気だ。彼の強い意志を感じる。それ程までに想われている高宮家に感心するが、同時にここまでの力を持った存在を抱え込めている事に驚く。
拳を交えずとも分かる。この執事は強い。
それも俺達特殊対策部隊に遜色ない程の力は持っているだろう。
「以前に金銭的な問題を抱えていたのですが、それを偶然居合わせた高宮家の御当主である昌様に救って頂きまして、それで今回はその恩を少しでも返せたらと思いまして」
「そうでございましたか。当家の当主は何分困った方がいれば何とかして手を差し伸べようとするお方ですからね。それが良い事なのかは分かりませんが、当家の執事、メイドはその姿に憧れ、そんな当主の居られる高宮家を守護出来る事を誇りに思っているのですよ」
執事さんはそう言うと再度前を向き歩き始める。
俺の言葉は事実ではないが嘘という訳でもない。ただ問題を抱えていたのが俺ではないと言うだけだ。これが全て嘘であったら躊躇なく襲われていたかもしれない。
俺は口角を上げ薄く笑う。
今回は本当に何もしなくてもいいかもしれない。何せ護衛にはこの執事さんだけでなくまだ多くの能力者達が控えているのだ。これを突破出来る存在など早々いやしない。
◇
ようやく目的の場所に到着したのか扉の前で止まりコンコンとドアを二回ノックしそれを二度程響かせる。
「どうぞ」
部屋の中から入室を許可する声が聞こえた。どこか幼げがあり鈴の音の響くような声だ。
「失礼します、柏木様をお連れしました」
「失礼します」
執事さんに続いて室内に入る。
その中には二人の少女の姿があった。
一人は高宮 春香、高宮家の長女で歳は十三だったはずだ。
青い髪を肩口で揃え微笑を浮かべている。その佇まいは非常に洗練されていて、とても十三の子供とは思えない。
そして、その隣。
春香にしがみついてじっとこちらを見ている少女。
この子が今回の護衛対象である高宮 瑠奈だな。
姉と同じ青い髪を腰の辺りまで伸ばし、頭には大きなリボンが巻いてある。フリフリの衣装を着ていてその手には兎の人形を握りしめている。
ああ、ちなみに当主とその妻は既にこの屋敷にはいない。
仕事で屋敷を離れる事が多く、今は別の場所で留まっているらしい。
『娘達が危険だと言うのにこんな場所に留まれるか!』と言って暴れたらしく、何とかその場の使用人達で止める事は出来たが、いつまた暴れ出すか分からない状況だと聞く。
「本日はお越し下さり誠にありがとうございます。私は高宮家が長女、高宮 春香と申します。どうぞお掛け下さい」
「それでは」
お嬢様方の対面に座る。
おおぅ、ソファーがめっちゃ沈む。これも高いんだろうなぁ。
「あ、あの・・・るな・・・です。・・・おにいちゃんは、いいひと?」
瞳を揺らしながら問いかける少女。
明るい子だと聞いていたがその姿からはそうは感じない。もう既に何かしらの接触があったのだろうか。
「ええ、それはもうとんでもなく良い人ですよ。安心して下さい」
悪い人ですなんて言ったら、悪・即・斬みたいな執事さんの前でこれ以外なんて答えればいいのか。
しかし、俺の回答で良かったのか、瑠奈様はにへら、と顔を綻ばせる。
何か自分が安心出来るような些細な言葉が欲しかったのかもしれないな。
「ふふ、ありがとうございます。それで、柏木さんは探知系の能力者という事ですが間違いありませんか?」
「はい、合っていますよ」
「では、柏木さんには移動中、私達と同じ車に乗って頂きたいのですがよろしいでしょうか?」
おや、これは予想外。
こちらとしては護衛対象の傍に居れるのは願ったり叶ったりだが、俺は事情を知らない人物からすればかなり不審に思うはず。一体何の得が?
「それは構いませんが、何故とお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「それは私からお話ししましょう」
執事さんが声を挟む。
「今回、私が移動中の指揮を取るので柏木様には私の傍にいて頂き、周囲の状況を教えて頂きたいのです」
この執事さんが指揮を取るのか。
確かに実力者ではあると思うが、まだ若いのではないか? 彼よりも優秀な人材もいると思うが。
「ふふ、柏木様が疑問に思うのも尤もですね」
春香様が可笑しそうに笑う。
しまったな、顔に出ていたか。
「しかし、ご安心ください。ここにいる井貝 拓斗は当家でも指折りの実力者です。彼が私専属の執事だと言った方が分かりやすいでしょうか」
この人が高宮家の長女の専属なのか。
凄いな。まだ二十やそこらだろうに、それ程までの力を手に入れるのに一体どれ程の修練を重ねてきたのか。
「いえいえ、私などはまだ至らない所もあり恥じるばかりです。これからも精進しなくてはなりませんね」
そして慢心もしていなさそうだ。
護衛任務は明日。
最初はどうなる事かと心配したが、これなら大丈夫であろう。
次話は8日の朝予定





