42話 膝枕と異常
遅くなりました・・・もう夕方に・・・
レビューありがとうございます! いや~嬉しいものですねぁ(*´▽`*)
「何考えてるんすか?」
今回の不可解な件を考えていると、両の頬を柔らかい手が挟む。
「何ひてるんれすか?」
「いや、柳君が眉間に皺を寄せていたので、何か不安な事があるのかと・・・」
「ああ、いや、大丈夫ですよ。別に何もありませんから」
どうやら心配させてしまったようだ。
いかんな、表情に出過ぎていたか。俺の悪い癖だ。こういうのはチームの士気にも影響する、以後気を付けよう。
「それよりも先輩、何か忘れてませんか?」
「ん? 何の事っすか?」
とりあえず話を逸らす。
「膝枕ですよ! 膝枕! 忘れたなんて言わないですよね?」
「あ、ああ膝枕っすか、勿論覚えてるっすけど。えっ、もしかして今からやるんすか?」
「当たり前でしょ! 俺は今癒しが欲しいんです! さ、早く!」
「もう、仕方ないっすねぇ」
小さく溜息を吐きながらも俺の言葉を聞き受け、靴を脱ぎ、よいしょよいしょとベッドに乗り上げ枕元で正座する服部さん。
「はい、どうぞ」
ポンポンと太腿を軽く叩き俺に許可を促す。
・・・勢いでここまで来てしまったが、何だか緊張してきた。年齢イコール彼女いない歴の俺にいきなりこれはハードルが高いのではないだろうか。
「え、えと・・・」
「もう、じれったいっすね!」
免疫の無さからしどろもどろしている俺の頭を掴み無理矢理太腿に乗せる。
突然の事で驚いたが。次第にその心地良さに感情が和らいでくる。
・・・柔らかい。まるで天国のようだ。行ったことないけど。
「ど、どうっすか?」
そう尋ねる服部さんの頬はほのかに朱に染まりかなり恥ずかしがっているのが分かる。
「最高です」
この言葉以外に何があるというのか。
そうか、今分かった。俺はこの時の為に戦っていたんだな? あんな淫乱サキュバスの為ではないのだ。よしっ、ならあの淫魔の事はさっぱりと忘れよう! 全て夢だったのだ。
「それは良かったっす」
先輩は嬉しそうに微笑み、俺の頭を優しく撫でる。
・・・聖母かよ。
今俺達はまるで教会に貼られている絵画の一つだ。
もう、一生このままでいいかもしれん。眠ってもいいかな? あっ、その前にちょっとぐらい太腿に触れてみようかな。俺頑張ったし、それぐらいならいいよな?
そっと手を魅惑の太腿に近づけ、
ガラッ!
もう少しというところで病室のドアが何者かに開けられた。
(空気読めやごるぁあああ?!)
額に怒りマークをつけ、そのケーワイ野郎に目を向ける。そして固まった。
部屋全体を静寂が占め、俺の額からは冷たい汗が流れる。
その人物は冷ややかな目で俺を見ると、懐からスマホを取り出す。
ピッピッピ
「もしもし、警察ですか」
「ちょっと待てーい!」
「ちょっと近づいてこないでよ! 服部さんにコスプレさせて膝枕させて挙句の果てにはその太腿をさわさわしようとしてた変態! 助けて下さい! 変態に迫られてます!」
「違うわ! ちょっと服部さんからも言ってやって下さいよ!」
「あっ、やること思い出したので帰るっす。柳君もお大事に~」
「服部さん?!」
誰かに見られた事が恥ずかしかったのだろう。顔を真っ赤にして超スピードで出て行ってしまった。
くっ、もう少しだけ堪能したかったが仕方ない。
俺は渋々乱入してきたケーワイ野郎、ではなく少女に視線を移す。
「・・・その目はなんだ」
「お兄ちゃんの変態」
「?!」
ガハッ!
まさか蒼に変態だと言われる日がこようとは。そう言われない為にエッチなあれこれを厳重に保管していたというのにこれでは意味がないではないか!
「そ、それで? 何か用なのか?」
出来るだけ決め顔でそう問いかける。
話題転換だ。このままではマズイ。俺のメンタルと兄としての威厳が死んでしまう。
「はあ、お見舞いだよお見舞い。家族が心配するのは当たり前でしょ? まあ、どうせその怪我も怪物じゃなくて自傷しただけだと思うけど。でも、力をそれだけ使う程の怪物がいたの?」
よくお分かりで。流石は俺の妹だな。
「まあな。Sはあったと思うぞ」
「ふ~ん」
あまり関心はなさそうだ。
まあ、蒼にとってはSと言われても分からんだろ。その能力の前ではSとFでも差はないだろうからな。
「あっ、それとそろそろお母さん呼んだ方がいいかも。数値上がってきちゃった」
「・・・ちょっとスマホ見せてみろ」
蒼からスマホを受け取り、能力数値画面へと移動する。
そこに表示されている数値は、
『95080』
中々に高い数値だ。中学生だと考えるなら異常だと言えるほどには。
「そうだな。そろそろ呼んだ方がいいかもしれん。学校には気付かれてないのか?」
「うん、大丈夫」
こんな数値が知られれば大騒ぎだろうからな。
それに蒼の体も心配だ。まだこの程度の数値なら大丈夫だと思うが、あまり放置し続けると危険だ。
「どこか異常はないか?」
「全然大丈夫だよ。今日も家でボクシングの練習とか藁人形を作ったりしてたから!」
「ヤバイな。頭に異常がきてるみたいだ。直ぐに母さんに連絡入れるから安心しろよ!」
「えっ?! 普通の事でしょ!」
「普通の中学生はそんな事はしない。もっとお淑やかな存在だ。決してそんな暴力的ではない」
まさか俺の知らないうちにそこまで体に異常をきたしていたとは・・・
やはり早急に母さんを呼ぶべきだな。
俺の母さんの能力はかなり特殊だ。操作系でもなければ生成系でもない。
邪悪な存在にとっての特効的な存在である。母さんの力を使えば蒼の力を抑える事が出来るのだ。
俺はスマホの連絡先から母さんの番号を押して電話をかける。
『もしもし~ 隼人?』
「あっ、母さん。単刀直入に言うけど、出来るだけはやくこっちに帰ってこれないか? 蒼がヤバいんだ。どうにも頭に支障があるみたいでグフっ!」
脇に強烈な右フックが突き刺さる。
当然その犯人は蒼だ。ボクシングの成果なのか、かなり威力が強い。
「ヤバくないよ!」
『本当に仲良しねえ。親としては嬉しい限りだわ~ ちなみに頭にはどう支障がきてるのかしら?』
「ああ、何故か家でボクシングの練習や藁人形を作ってるみたいなんだ。これは異常としか・・・」
『あら? 何もおかしくないじゃない』
おかしくない? 今おかしくないと言ったのか?
いや、流石に聞き間違いだろう。どう考えてもこれを普通とは言わないし・・・
『は、隼人? そこに隼人がいるのか?! お願いだ! 俺を助けてグワァアアア!!』
今・・・父さんの叫び声が聞こえたんだけど・・・
『あらあら、あなたったらまだ元気があるじゃないですか? もっとお仕置きが出来ますね』
『す、すまない! もう許してくれ!』
『もう他の女性を見て鼻の下が伸びない様にしてあげます』
『ヒイイイ!!!!』
そうだ・・・重大な事を忘れていた。
母さんは強烈なヤンデレだという事に・・・
蒼の奇行も母さんが何か吹き込んだ結果なのかもしれない。
『隼人ぉおおおおおお!!』
涙を流しながら通話のボタンを切る。
すまない父さん。俺にはどうする事も出来ない・・・せめて骨は拾うよ。
数秒後、母さんからメールが届いた。
『こっちの仕事も終わったから、お父さんと一緒に日本に戻るわね。
こっちにいると奇乳の女の人を見てこの人がデレデレするから早々に帰る事にするわ。それと引っ越ししたと聞いたから後で住所を送ってね』
・・・奇乳とは?
母さんの胸は平均と比べると少々お淑やかだ。そのせいか、胸が大きい人に対しての憎しみが半端ない。
「はあ」
溜息が漏れる。
これは人選を間違えたかもしれない。
次話1日予定。
第四章は『影の陰謀編』です(*‘ω‘ *)





