33話 手合わせ
一章のヘイトが過剰だったので警察の暴力描写を修正しました。
他には会話や話の流れがおかしいところってありませんかね? 自分で執筆しているとそこら辺が混乱するので気付きにくくて・・・
隼人は武の一挙一動に集中する。
武は全く動かない。その顔には笑みを浮かべ自然体の様に力を抜いた状態だ。
(構えない・・・か。カウンター系か?)
それを見て後手に回るタイプの能力だと判断する。
その能力によっては相当面倒な者もおり、有名な能力で言えば世界ランク序列三位の【絶対反射】などが挙げられる。
武のカウンターを意識したうえで隼人は駆け出す。
一歩目からトップスピードで移動すると武の眼前で一歩踏み込み、拳に力を乗せる。
「山砕き」
「守れ」
隼人の放った拳は突如として現れた障壁に防がれる。
対校戦にも似た能力者はいたがその強度は比較にもならない。隼人の攻撃はその障壁に幾分かの罅を入れるだけにとどまった。
二人は僅かに目を見開く。
武は障壁に罅が入った事実に、隼人は本気の攻撃を完全に防がれた事に。
隼人は体をうねると上段から踵落としを繰り出す。
しかし、その動きに反応した障壁が移動し隼人の攻撃を全て防いでいく。
隼人は一旦距離をとると、武の分析を始める。
相手は完全に防御型、こちらから攻めに行く必要があるが、単純な攻撃では先程の二の舞になる。あの障壁を突破するのなら威力よりも貫通力を上げる必要がある。
隼人は闘気を右腕に集中させる。
淡い紅のオーラが揺らめき、それは星穿の兆候とよく似ていた。
武との距離はおよそ十メートル、本来ならば拳で戦う隼人はその距離を詰める必要がある。
・・・しかし、それはただの殴打であった場合だ。
闘気を薄く、鋭く、何者をも貫くように収束させていく。
「ッ! 追加だ!」
それを見た武は焦るように新たに六枚の障壁を発現させる。
計七枚の障壁が重なるようにして武を守護する。
七枚、その数はかなり保険をかけたものだった。
Aランク級の怪物の力をもってしても四、五枚障壁を割られる程度だ。だから七枚を破られる事はないと確信していた。
「貫け――星槍」
隼人の右腕が振り抜かれる。
射出された深紅の槍が音を置き去りにしながら一直線に障壁へと激突する。
ズギャンッ!と遅れて音が響き渡り、その槍は三枚の障壁を易々と貫くと四枚目で拮抗する。
ただし、槍の勢いは失われず徐々に亀裂が入り始める。
「くッ!」
パリンッ! とガラスが割れる様な音と共に四枚目の障壁が破壊された。
「やるなあ!」
武は己の抱いていた隼人の実力を上方修正する。
五枚目の障壁に亀裂が入り始めたころ、武は僅かばかりの笑みを浮かべると、そっと呟く。
「吸収」
五枚目の障壁が割れる。
そして六枚目に衝突した瞬間、隼人の槍は障壁に吸収される様に消えていった。
その六枚目は他の物と違い底が見えない様な黒に染まっていた。
予想外の出来事に隼人は驚愕に目を見開く。
武は得意げに胸を張ると、先程の事象の説明を始めた。
「俺は障壁に様々な特性を付与する事が出来るんだ。さっきのは【吸収】。つまりその特性で君の槍を障壁に吸収した訳だ。でもまあ・・・」
武が六枚目の障壁を見やる。
それは吸収した槍の威力が余りにも強大であった為か完全には吸収しきれず罅割れ、遂にはその障壁も崩壊した。
「はは、これは頼もしい」
武は笑う。まさかこれ程の実力者が来てくれるとは、と。
服部から話は聞いていたが、これは想定の遥か上をいく。それにまだ本気を出していないと来た。武もまだ本気を出してはいないが、例え本気を出して戦ったとしても隼人に勝てるかは微妙な線だと考える。
そんな武の思考を他所に、隼人は特殊対策部隊の実力に素直に驚いていた。
正直、星槍を防がれるとは思っていなかったので吸収された時は思わず『はあっ?!』と驚愕の声が漏れてしまった。
「ちょっとー! 何やってるんすかー!」
と、そこで聞き覚えのある声が訓練場に響く。
その主はシュバッ!と隼人と武の間に入ると少し怒った顔で両者を睨む。
「柳君を迎えに行こうと思ったら全然いないし、金剛さんは勝手に柳君連れて行って何かやり合ってるし、二人とも自由に動き過ぎっす!」
「ははは、まあいいじゃないか服部は気にし過ぎだなあ!」
「金剛さんは気にしなさ過ぎなんです! ほら柳君の歓迎会があるんすから皆行くっすよ!」
突如乱入してきた服部によって隼人達の組手は中断され、訓練場から連れ出された。
◇
「と、いう事で新しく入隊した柳隼人君と家族という事でこちらに引っ越してきた妹の蒼ちゃんっす!」
「よろしくお願いします!」
「よろしくお願いしま~す」
服部さんに連れられて着いた場所には既に数名の人達が待機しており、その全員が龍のワッペンを付けていた。
そして俺の歓迎会が始まった訳だが、今はお互いの自己紹介をしている。
「私の名前は吉良坂 涼子よ。これからよろしく」
そう微笑む黒髪ロングの美女。
その腰には物騒な刀が帯剣されており、彼女が戦闘員であろう事が分かる。
「菊理 花です。よろしくお願いします」
前髪を目の少し上で揃えた可愛らしい少女。
その瞳は非常に澄んでおり、彼女には何か別の物が見えている様な気がする。
「俺は牙城 昴・・・よろしく」
左目を髪で隠した寡黙な男性。
背は俺と同じぐらいだろうか、鋭く光る右目が俺を捉える。
品定めされているのだろうか。怖くてちびりそうです。
残りは俺の知っている人達だ。
服部さんに金髪の西連寺さん、あとはここの入り口で遭遇した桐坂 萌香先輩と金剛 武さんだ。
自己紹介が終わると、食事へと移る。
相変わらず服部さんはとんでもない量を平らげ、逆に萌香先輩や花先輩はすぐお腹いっぱいになって船を漕いでいた。
任務については明日の会議で説明するらしく今日はこの歓迎会だけで終わった。





