202話 プレゼント
「家も賑やかになったわね~」
クリスマスパーティー。
滞りなく進んでいくものだと思っていたが、突如海外から帰省してきた両親によって全く先行きが見えなくなってしまった。
落ち着きなさげにそわそわしているキャロルさん、ソフィアさんとシャルティアさんはいつも通りに見えるが、シャルティアさんはちらりと母さんを一瞥すると、なにかを考えるように少しだけ表情が硬くなった。
蒼は両親が帰って来ていつになく嬉しそうだ。
決して母さんの背後にあるプレゼントだけが理由ではないと信じたいところである。
「それで? どの子が私の娘になるのかしら~」
「なに言ってるんだあんたは」
いや、マジで何言ってるんだ。
はっ?! いや、待てよ。もしここで誰かが脈ありなのだとすれば顔を赤面していたりなんてしちゃったりするんじゃないか!
しゅばっと全員の表情を確認する。
「そのような予定はありません」
「ぐふっ」
無表情で言い切るシャルティアさん、俺の精神に一万ダメージ。
「ずっと寝てられるならいいよ~」
「寝言は寝て言って下さい」
くそぅ、まともに男として見られてない。
純情な隼人君の心を弄びやがって!
「あ、あはは」
キャロルさんには失笑される始末。
どうしてだ! 外ではキャッキャウフフと恋人共が盛り上がっているというのに。何故俺は逆に振られるような展開に・・・・・・
「う、ぅぅ」
「ほらほら、私が娘になるから泣き止みな?」
「お前はもう娘なんだよ」
憐れみの視線を向ける蒼の頬を両手で挟みつぶしてお兄様の偉大さを教える。
溜息を零しながら、現実から目を逸らしテーブルの上にある豪華な料理へと意識を移す。
シェフはシャルティアさん、俺も少しだけ手伝ったが、台所での彼女は想像の数倍は凄かった。その道でも十分生きていけるだろう。
「じゃあ、そろそろ食べましょうか。その後にプレゼント交換ってことで」
「は~い!」
母さんは女子同士で楽しく喋りながら、俺は父さんと少し離れた席でこじんまりとしながら食事をとる。
(うめぇ)
一生シャルティアさんのご飯を食べていたい。
本人に言ったらなんと返されるだろうか。ふざけないで下さい? それとも冷徹な視線で一蹴されて終わりかもしれない。
「ははは、隼人も大変だな。男一人ではなにかと肩身が狭いだろう」
「本当だよ。父さんはずっとこっちに?」
「いんや、少しの間は居られるだろうが、また外にいくさ」
ふ~ん、と頷きながら本題に入る。
「今回帰ってきた事情を聞いても?」
「クリスマスぐらい家族で祝わないとな。っと、それが理由の半分だが」
珈琲を口に運び、少し真剣な表情で続きを語る。
「お前は以前に破壊神の力を使う敵と相対したと言ったな」
「ああ」
「しばらくはなりを潜めていたようだが。どうやら動き出したらしい」
思い出す、白髪の少年の姿を。
あの時は元絶対者のユリウスの手によって逃げられてしまった。
俺と同じ神の権能を操る敵。確かに難敵ではあるが。
「大丈夫。俺は負けないさ」
おそらくは人間を少し逸脱したことによる変化。
こと、戦闘において負ける気がしない。
この世に存在する絶対的なルールのごとく、それが俺にとって自然の思考となっている。
「・・・・・・なんか雰囲気変わったな」
「分かる?」
「ああ、これならおっさんの手助けは必要ないかもしれないな。もしもの時はと考えていたが。そもそも俺は戦いが好きじゃないし」
確かに、戦闘が好きなタイプには見えない。可愛い動物を見て、愛でているような性格の人だからな。俺のもふもふ好きも父さんの遺伝かもな。
「でもまあ、なにかあれば俺に言えよ。母さん神事に関しては中立を保たなければならないからな」
「うっす」
「あら~ 私の話ですか~」
「「ん?」」
二人揃って声のした方向を見る。
そこには若干顔を赤くした母さんの姿が。
テーブルに視線を向ければ、同じように顔を赤くして枕に倒れているソフィアさん、泣きながら蒼になにか語っているキャロルさん、シャルティアさんだけは無事のようだが明らかにおかしな光景が広がっていた。
(なにが・・・・・・うん?)
よくよく見ればテーブルの上には知らない瓶が数本あった。
ラベルを見る限りそれはお酒で、
(はっ?!)
そこで思い出すのは小さい頃の思い出。
少しだけだと酒を取り出した母のその後の凶行である。
「あ、ああ゛あ゛アアアアアア!」
脳が、恐ろしさのあまり記憶を封印しようとしている!
父さんも思い出したのか顔を青褪めさせながらも、さっと俺の前に体を乗り出す。
「くッ、ここはお父さんに任せるんだ! あとは――」
彼の言葉はそこまでだった。
悪魔は扇子を横一線に素早く動かし、父さんの顎に当てて脳を揺らす。ぽてりと人形のように倒れた体をギリギリのところで支え、
「あらあらお疲れですか?」
白々しい台詞を吐き、その体を背におぶうや、玄関に移動して扉を開く。
「今日は別の場所で泊まるから、あなたたちはパーティーを楽しみなさい。あと、プレゼントは置いてあるから取っていってね」
震える手を動かしてサムズアップする虜囚の姿がなんとも哀れだった。
俺は涙を拭きながらリビングへと戻る。
「うぅ、ずっとずっと一人でぇ~」
「よ~しよしよし」
少女(年齢不詳)を胸に抱き頭とついでにお尻を撫でる阿呆。あとでこいつはしばくとして、ソフィアさんは酔うと眠ってしまうんだな。
「ソフィアさん、寝るなら部屋で寝ないと風邪引きますよ」
「う~ はやおくん。プレゼントは、ボ・ク。なんひゃって~」
「はやおじゃなくて隼人ですよ」
取り敢えず風邪だけはひかないように持ってきた毛布を掛けておく。
「これか」
そして母さんが置いていったと思われるプレゼント。それなりに大きな袋を開けてみると、中には五つ分の袋。それぞれに今この場にいる人達の名前が書かれてある。
(三人のことなんていつ知ったんだよ・・・・・・)
千里眼でも持ってんのかとツッコミたくなるが、本当に持っていそうで怖い。
「柳隼人、少しいいですか」
「あっ、はい」
背にシャルティアさんから声を掛けられ振り返る。
「一つ質問なのですが、貴方の母親はいつも扇子を持ち歩いているのですか?」
「う~んと、どうでしょう。大体は持ち歩いているとは思いますが」
どういう質問だ? 外国人から見る扇子は凄く芸術的に見えるとかだろうか。
シャルティアさんに扇子。浴衣を着ていたら似合うかもしれないが、いつもの格好だとあんまし想像できないな。
「扇子が欲しいのですか?」
「いえ、少し気になる事があったので一応の確認を。おや、それは私宛のプレゼントですか」
「そうみたいです。どうぞ」
「ありがとうございます」
別にもうプレゼントを渡してしまってもいいだろう。
後でイチャイチャしてる二人にも渡すとして、ソフィアさんには巨大赤い靴下にでも詰め込んでベッドの近くにでも置いておこう。もしかしたら羞恥で真っ赤になってるソフィアさんの姿が見られるかもしれない。
即座にシャッターを切れるように準備をすることを予定に入れ、自分宛のプレゼントを手に取る。
「さて、なにが入っている事やら」
手触りは普通に堅い。
聖書でも入っているのかと訝しみながら袋を開ける。
「お、おぉお!!」
手にしたそれ、『世界のもふもふ動物一覧』を天に掲げる。
間違いなく俺にとっての聖書だ。
クリスマス、悪くない。
世界で最も恐ろしいマンションになってきましたねぇ(*´▽`*)
それにしても、今期のアニメはどれも面白い。魅入ってしまいます。





