201話 クリスマス
引越し作業が一段落したので投稿(*´▽`*)ちゅかれた
それは誰かの夢、遠い過去の記憶が断片的に映る。
発展した都市から離れた小さな村、そこには白髪の少年が居た。
他の村人どころか両親とも異なる髪色、そしてなにより、その少年の数値は『0』だった。
『おいお前! 能力がなにも使えないんだって?』
同い年の子供が馬鹿にした視線で少年を見る。
それが一人であればなんとも思わなかったかもしれない、しかし、村人全体にそのような空気があれば否応にも思いは膨らむ。
『新井さんところの息子さんって無能力らしいのよ』
『えぇっ?! オーストラリアでの件もあるしなんだか怖いわね~』
少年に聞こえても構わないと言うように道端で話し合う主婦。
『本日未明、○○市のビルで能力者同士による争いがあったと・・・・・・』
テレビから聞こえてくる事件はいつも能力者の争いか怪物の被害で、無能力者がなにかをしたなどという報道は一度も聞かなかった。
『ぼ、僕はなにもしてないのに突然新井君が殴ってきた!』
『おい新井! お前は何故いつも人を殴るんだ! 早く謝りなさい!』
手を挙げた事など一度もなかった。
教師もそれは分かっていたのかもしれない。それでも少年を叱っていたのは何故か。ただの憂さ晴らしか、この状況で怒りを全く見せない少年がただただ怖かったのかもしれない。
事実、少年は煩わしいとは思いはするも、怒りはしなかった。
それは将来どうとでもなることだと思ったから。
ただ、どうしても許せない事があった。
『ごめんなさい・・・・・・他の子のように産んであげられなくて、ごめんなさい』
両親はいつも少年に謝罪の言葉を投げかけていた。
いつも、いつもいつも。最後に両親が笑ったのはいつだったかと、分からなくなる程に。
(普通ってなんなんだ・・・・・・?)
浮かんだ疑問、そして普通でいなければいけない理由も理解できなかった。
・・・・・・
血の海の中、白髪の少年だけが屹立していた。
周囲は村人で作られた屍山が並び、全員が惨たらしく体を破壊されて死んでいる。
生き残っているのは少年とその親だけだった。
少年はゆっくりと両親に近付く。
母は涙を流し、父は包丁を握りしめていた。刃先は少年に向けられてはいるが、父親の瞳に映る感情に殺意は然程もなく、母同様の憐憫のような色が見える。
『新ァァあああああああ!!』
雄叫びを上げて包丁を突き刺すように腕を出した父を、少年は無造作に振るった腕で殺した。そのまま残った母に近付き、腹部に腕を突き刺す。
ゴフッと血塊を吐き出す母は、震える腕で何をするかと思えば、眼前の少年を力の限り抱きしめた。
『ごめん、なさい・・・・・・』
それだけ言い残し、力を失った体は地面に倒れる。
少年は独り、空を見上げて嗤っていた。
・・・・・・
山の奥、その斜面で寝ていた白髪の少年がゆっくりと目を開く。
幼い頃の夢を見ていたような気がして、ふと己の手を見る。それは普通の手であったが、両親を殺した時の感触だけはしっかりと残っていた。
「この世界は一度滅びるべきだ。そうでしょう、破壊神?」
返答はない。
しかし、少年は笑い、体を起こして息を吐く。
「それでは変革を始めましょうか。――英雄殺しの時間だ」
◇
12月25日、クリスマス。
町中にイチャコラとカップルがひしめいている恐ろしい日だ。あのピンク空間に触れてしまえば、おそらく俺は正気を保っていられないだろう。
外に出れない俺は家で過ごす他ない訳だが、
「おにちゃんもっと左」
「おい、それじゃあ節分で家を追い出される可哀そうな生命体になってしまうだろ。俺はお兄ちゃんで人間だ」
「はいはい」
妹を肩車し、部屋の中にあるツリーに飾りつけしていく。
外と同様、家でもクリスマス色に染まっていく。ただ、男女のイチャラブが無い分幾分かマシだろう。
夕飯で開かれるパーティーの出席者は柳家二人と同居人の二人、後はオーストラリアから来たご近所さんのキャロルさんを含めた計五名である。
特殊対策部隊の面々はこの頃の怪物の出現状況を考慮して本部で控えなくてはならないようだ。ただ、あそこはあそこで軽いパーティーをしているようなので楽しめている事だろう。問題は進行が上月さんらしいということだが、そこは金剛さんがなんとかしてくれるはずだ。
「よしっ! 飾りつけ終了~!」
いい仕事した~と満足げに頷いた蒼は、はっとした表情をするとスタコラと自室に移動する。
おそらくはサンタの衣装に着替えに行ったのだと思われる。
朝からどの衣装にしようかと悩んでいたから間違いないだろう。
テレビでニュースを聞きだして数分、慌ただしい足音とともに俺の視界の中に蒼が体を捻じ込む。
「ふふんっ! どうだ~」
予想通り、その服装は先程と変わっていた。
赤を基調とした服装。スカートのフリルと前面に存在する綿毛のような丸いものだけが白い。
「おぉ、似合ってるじゃないか。後で母さんに写真を送っとくか」
「むむっ、なんだか反応が薄いような・・・・・・」
ふふっ、馬鹿め。
サンタ服は可愛らしいがエロスはないのだ。そんなもので動揺するような次元からは既に脱した。今の俺にその程度のものは通用しないのだよ。
勝利を確信し、ココアを口に運ぶ。
「隼人くん、ボクたちのも見てよ~」
うん? とカップを持ったまま声のした方に振り返り、危うく飲み物を噴き出しそうになった。
「なっ、なんっ?!」
そこにいたのはソフィアさんとシャルティアさんである。
ただし、二人はいつもの服装ではなく蒼のようにサンタの衣装になっていた。
(ば、馬鹿なッ?! なんでサンタ衣装がこんなに卑猥に見えるんだ!)
ソフィアさんの核兵器は衣装をひしゃげさせて雪玉の遠近が蒼とはまるで違う。そしてあのお堅い印象を持つシャルティアさんがコスプレをしているという事実! サイズが合っていないのかかなり短いスカートは中のものを隠すには少々心もとないものだ。
「おおおお似合いですよっ!」
「あははっ! どうしたの~? 隼人君声が裏返っているよ~?」
「ソフィア・アンティラ、そのような前傾姿勢で男性に近付くものではありませんよ」
溜息を吐き、夕飯の準備をしますと言い残しくるりと回転したシャルティアさんのスカートが上に上がる。
刹那、眼力を極限まで集中しシャルティアさんのスカート部分に視線を向ける。
(太腿がみ、見えっ・・・・・・)
ナイフ、ナイフ、針、針、針、小型拳銃。
「・・・・・・」
「おっと、少々動きづらいですね」
ウン、オレハナニモミテナイ。
あのスカートの中の重要機密をうっかり見てしまえばその時俺の首は胴体と離れる。いや、針で拷問なんてことも、銃は致命傷じゃなかったら何発撃つことが出来るのだろうか。
「ちょっとお兄ちゃん! ちゃんと聞いてる?」
「えっ? あぁ、すまん。聞いてなかった」
今日をどう生き残るのかを必死に考えている間、なにやら話しかけられていたようで、無視されていた蒼が頬を膨らませて抗議する。
「プレゼントはちゃんと準備したのかって聞いてるの! ・・・・・・もしも忘れたりなんかしたら、四人のいう事なんでも聞いて貰うよ?」
「俺だけハードルおかしくね? まあ、一応用意しておいたから大丈夫だけど」
誰に渡っても大丈夫かなというものは一応選んだ。
五人でプレゼントを交換することになっているが、逆に男が一人入っている事で他の三人にはいらぬ気を使わせてしまったかもしれない。
もしもプレゼントが蒼に渡っても、後で三人にもなにかいつものお礼としてプレゼントしよう。まあ、いつも寝転がっているソフィアさんはちょいと怪しいが、眼福料としてなら別に惜しいものではない。
「じゃあ、俺プレゼント取って来るわ」
「待ってるよん」
うっきうきの妹に見送られ、階段を登る途中でチャイムが鳴った。
キャロルさんが来たのだと思い、玄関に移動し扉を開く。
「ただいま~」
「ぐわぁ! お母さん、ちょっと首が締まって・・・・・・カクンっ」
そこには悪魔が立っていた。
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