196話 決行前夜
紹介含めですが一様200話達成!
特別な話でも書きたかったですが、時間がなくて無理でした(*´▽`*)
死臭が漂う部屋。
夥しい量の死と血だまりの中心で頬に付いた血を拭い高まった意識を沈めていく。
「早めに気付けて良かった」
ここはマフィアが陣取っていた施設の一つだ。
外部と干渉する機会が多い為か、それともこの連中を有用だと思ったのか、ボスから下の者に至るまで全ての人間が怪物に寄生されていた。
ここでなにをしていたのか。
どこから仕入れてきたのかは分からないが、探ってみて見つけたのは大量の爆弾だ。
これでなにをしようとしたのかまでは分からないが、決して望ましいものではないだろう。
時間が無いと判断し、その場で全員を殺害した。
別になにかを思った訳でもないが、元の彼等も搾取する側、その付けが回ってきたのだろうと考え、一息に刃を走らせた結果が周囲の地獄絵図である。
「しかし、彼等には感謝しなければいけませんね」
寄生されたマフィアを虐殺して分かったことが一つ。
怪物は電気が苦手であるということ。電撃を浴びせると寄生体の体が突然動かなくなった。人を完全に殺せるレベルでなくとも通用したのを考慮すれば、内部の怪物が電気に弱く、動けなくなったために寄生体の制御が出来なくなったのだろう。
気付いたのは戦闘開始からかなり後の為、試せたのは三十人程度、もう少し情報を確定させたかったが仕方ないと割り切る。
「場合によれば寄生された人々の救出も可能かもしれませんね」
内部の怪物だけを殺せるのなら、その後に怪物を摘出して欠落部分を回復させれば助ける事は可能。ただ、彼等が操っているのが死体であるというのならそもそも不可能な話だ。街から腐敗臭がしないため、まだ生きているとは信じたいが。
後処理を済ませ、爆弾を解除した後に施設を後にする。
外に出ればいつの間にかかなり時間が経っていたようで、日が落ちていた。
帰り道、あまり人目に付かない道を通っていると興奮した人の声がそこら中から聞こえてくる。
(なにかあったのでしょうか・・・・・・?)
既に敵が動き出したのかと、少し耳を澄ませて会話を聞く。
そして私の考えはいい意味で裏切られた。
「おいおい聞いたか!」
「勿論! ついに倒したんだってな、あの黒騎士をっ!」
「いやぁ、三人でも倒せなかったって言うのに、千変万化は異常だな~」
久しぶりの朗報に少し気分が軽くなる。
「そうですか、やりましたか、柳隼人」
日頃の生活では何処にでもいる普通の少年のようにしか見えませんでしたが、やはり絶対者の一人であるということでしょう。
これで世界に存在していたSSランクの怪物は全て討伐、現状は特筆すべき脅威は排除されたということでしょうか。まあそれも私とアンネ・クランツがここの怪物を屠ればの話ですが。
「ふふっ」
日本に戻った時に少しプレゼントでもしましょうか。
年下の弟ができたらこのような気分になるのかもしれませんね。あの運命に足掻いている姿が少々好ましいというのもありますが。
「手早く済ませましょうか」
少し足を速めて師匠たちの待つ場所へと移動する。
◇
ロシアに点在する隠家の一つ。
そこに私と師匠、そしてアンネ・クランツが集まる。
「おいおい、ずいぶんと殺してきたみたいだな」
「すいません。まだ血が付いていましたか? 証拠は全て消したつもりだったのですが」
「いんや、ただ死臭がするから分かっただけだ。他の連中には気付かれてないさ」
流石に本職の人間には気付かれますか。
もう少し証拠を残さず仕事を済ませたいのですが、これだけはあまり上手くいかない。スイッチが入った後の集中力が完全にきれないことが原因だろう。
まあそれは彼女も同じでしょうが。
「貴方もずいぶん派手に動き回ったようで」
「少し不完全燃焼だが、取り敢えず最低限の箇所は潰しておいた」
およそ数時間の間で破壊した基地の数は五。
これで相手の手札は少しは減らせたはず。警備の甘さを考えれば派手な動きはできないと高を括っていたのかもしれない。
例え厳重な警備であっても結果は変わらないでしょうが、ここまでスムーズに動けた事実は大きい、そして鼻を摘ままれた敵の行動も予想しやすい。
視線で師匠に訴える。
「そう急かすなって。ちゃんと母体は見つけてきた。が、まあ俺が手を出せそうな相手じゃ無かったんで手は合わせず逃げ帰ってきた訳だが」
そう言いながら師匠は地図を広げある施設に印をつける。
そこはおおよそ予想していた範囲内、ただ、気になるのは師匠の歯切れが悪いことだ。
「場所が分かってるなら十分だ。私が潰してジ・エンドだろ」
「無理だな」
アンネ・クランツの言葉を師匠が否定する。
己の力を侮られたと思ったが、睥睨するアンネ・クランツに対し若干苦笑しながら師匠は理由を説明する。
「母体の周囲はCやBランクの怪物の死体に寄生した兵隊共がいやがった。中でも厄介なのはBランクの【キャルド】だろう。奴の持つ能力は【攻撃転置】、自身が受ける攻撃を別の場所に移動させるというものだ」
なるほど、アンネ・クランツには相性が悪いですね。彼女の戦闘は一撃で相手を殺すもの、【キャルド】は同時に二つの攻撃を移す事はできないが、一つの攻撃であれば高威力の攻撃でも移せる。
奴の許容値を越えれば関係ないが、それまでになるとアンネ・クランツの能力ではおそらく周囲一帯が荒野になる。
「寄生と言っても死体だ。生前の能力まで引き出せるのかは分からないが、楽観できるようなものではない」
「はぁ、なるほどな。面倒くさい」
とすれば、まず母体に向かうのは私の方がいいだろう。
二人でいけばすぐに終わる可能性が高いが、その他の不安要素があるためアンネ・クランツにはそちらの対処に回ってもらうこととしましょう。
「まずは私が【キャルド】を倒しましょう。その後はアンネ・クランツに任せます。それまではおそらく行動に出るであろう寄生された一般人の無力化をお願いします」
「おいおい、無力化ってそんなことできるわけないだろっ?!」
「策は用意します。あの怪物は電気に対し非常に弱いようなので、そこを狙います」
可能ならばあまり被害は少なく済ませられるように。
そもそもアンネ・クランツでは割り切って一般人に手をかけることは難しいでしょうから、なにかしら用意するつもりではいたのだ。相手の弱点が分かったのは行幸、その点だけは消えたマフィアには感謝してもいいでしょう。
「ここまですれば確実に敵も動くでしょう。先手を取られる前にこちらから仕掛けましょう。決行は深夜、今日明日で終わらせます」
二人が頷いたのを見て、一度準備に戻る。
「ちょっといいか?」
階段を登る途中で師匠に声を掛けられる。
振り返ると、少し考えるそぶりを見せながら師匠は口を開いた。
「お前の知り合い、おそらくは表に出ていない能力者に扇子を持った女はいるか?」
「扇子ですか? 確かに数名知っていますが、実力的には特殊対策部隊に劣りますよ」
「じゃあ違うな。いや、悪い気にしないでくれ」
「なにかあったのですか?」
「まああったと言えばあったが、不明瞭な情報は混乱を起こすからな。これは事が収まり次第いう事にしよう」
それだけ言い残し師匠はその場を去っていく。
珍しい師匠の姿に少しだけ記憶を思い起こす。
(そう言えば、最近もどこかで扇子を持った女性を見た気がしますね)
ただ、記憶を探ってもそれがどこだったのかは思い出せなかった。
感想に書いて下さり気付きましたが、2巻の購入を検討して下さってる方々は取り寄せででしょうか?
現在の情勢は色々と大変なのは皆さまもお分かりのことと思います。もし書店に行かれる方がいましたら、十二分に注意して下さいませ(>_<)
私的には文庫がありがたいですが、書店は危ないし、取り寄せは輸送費がかかるわで残念ながらお勧めできませんw
もう少ししたら前回の感想に返信させていただきます!
遅くなり申し訳ない(´;ω;`)





