193話 正体
うへぇ、少し遅くなってしまった(´;ω;`)
ホロライブのarkを見てただけなのに・・・・・・
アンネ・クランツ視点
シャルティアと別れると、とりあえずロシアの救急隊の現状を確認しに足を向けた。
救急隊の任務はDランク相当までの怪物の排除と、高ランクの怪物が出現した際に民間人の避難を誘導することだ。
そこまで高い戦闘能力がある訳ではない。
つまり、今回の敵にとっては色々な意味で格好の的となっているはずだ。
低級の怪物の情報は特殊対策部隊には届かず、まずは対処可能だと判断されているこの救急隊に連絡される。その情報をもみ消してしまえば実質怪物が自身の命を脅かす強者を敵にすることはない。
「無事だといいが」
ただ、彼等も前線で戦う猛者であることに変わりはない。
今までの経験があれば無事である可能性は高いだろうと思いながら街中を歩いていく。
相変わらず気色悪い視線を感じるため、少し巻くために能力を使用する。
足で地面を踏みつけ、反作用で返ってくる力を数倍にして反射する。
そうすれば、積もっていた雪の束が浮き上がり、私を隠すベールとなった。
「うわッ?! いきなりなんだ!」
「なにか落ちてきたのか?」
「ちょっと離れろ、危ないぞ!」
浮き上がった雪がまた地面に吸い込まれた時には既に私の姿はない。
正確には私の姿を視認できないというのが正しい。他人の網膜に到達する光を反射することで私の姿を消しているのだ。
とはいえ雪の上を歩いているため足跡は見つかってしまう。
不可思議な存在がいると勘付かれる前に屋根の上に飛び上がり、他人の視界から避難した。
「冬だな~」
誰にも見咎められない一人歩き。
上から見下ろす光景は一面の雪景色だ。これを見れただけでもロシアに来たかいはあったというもの、私は特段寒さも感じないからそちらに不満もない。
もう少し落ち着いて見れれば良かったのだが・・・・・・この腹いせはくそ共にしっかりと利子付きで払ってもらおう。
「さて、そろそろだな」
スマホのナビを頼りに救急隊の元まで移動する。
直接乗り込んでもいいが、派手に動けばシャルティアの邪魔になる可能性もある。ここは離れた場所から観察して確認することにする。
「よいしょと」
近くのマンションの屋上から救急隊本部を見る。
双眼鏡で隊員達の動きを見れば、特におかしな動きは見られない。
(遠目からだと本当に判断が付かないな)
見た目は変わらないのだ。中身に異常があるのなら行動にも反映されるのではないかと思うが、今まで見てきた周囲の被害者を思い起こせばそういうことでもないようだ。
屋台のおっちゃんも仕事の技量に関しては全く変わっていなかった。
おかしいのは記憶と視線、とはいえその記憶も然程の内容は覚えているのだから厄介だ。
「やっぱり乗り込んだ方が・・・・・・ん?」
ふと、隊員達の動きが一斉に止まり、ある方向に顔を向けた。
そちらに視線を向けて見てもなにがある訳でもなく、怪物のサイレンが鳴っている訳でもない。一応の確認でスマホで情報を見てもやはりなにもなかった。
「・・・・・・おいおい冗談だろ? まさか本気で救急隊員もやられたってのか?」
安全を確認するために来たが、状況は思っている以上に深刻かもしれない。
前線で戦う能力者がやられたのなら、敵の戦闘能力が想像以上に高いか、それか相当厄介な能力であるかだ。
私としては前者が最も楽だ。個々の戦闘能力が高いだけならばどうにでもなる。もし後者であれば単純な力比べではどうにもならない可能性がある。その時は私一人では難しいかもしれない。
(ッ?!)
視線を感じた。
ビルの下を見れば、歩道で立ち止まりこちらを無表情に見つめる通行人の姿が見えた。
(いや、今の私を視認できるはずが――)
視線を戻せば、部屋内にいる救急隊員達が全員窓から私を見ていることに気付く。
流石に勘違いではないと判断すると、即座にその場を離れて屋根伝いに建物を疾走する。
「ちッ、ふざけんなッ!」
嫌な汗が流れる。
兎に角救急隊が完全に掌握されたのは分かった。
そして敵の能力だが、もしかしたら洗脳ではないのかもしれない。
あの通行人がなにかしらの能力を発動していて偶然に私を見つけた可能性はある。しかし、ならば救急隊員も同様に私を認識したのは何故だ?
操られた者達がお互いに交信している?
私の知っている洗脳の能力にはそんな付属効果はない。以前通りに動いて見えるだけでも異常だというのに、そんな能力まで備えていたら・・・・・・
「何処にいても親玉には情報が筒抜けじゃねえか」
くそっ、こういう相手は嫌いなんだ。
正面からぶつかってくる敵なら大抵一撃で屠れるんだが。
「本格的にシャルティア頼みになりそうだっと」
屋根上を飛び降りると、使われていないビルの内部に入り込む。
相手の見た目が普通の民間人なら、他の目がある中でやり合う訳にはいかない。
「ほら、出てこいよ」
背に声を掛ければ、柱の陰から二人の男が姿を現す。
他の奴等と比べて身体能力は高くないとはいえ二人も付いて来たか。しかも、見た限り普通の民間人だ。
「・・・・・・身体能力も上がってるのか」
一度判断できる敵の情報を整理しようか。
まず、人間になんらかの能力を使用し己の駒とできる。そして戦闘能力を一定以上保持している者に対してもそれは可能。救急隊員の対処可能な怪物がDランクと位置付けるならば、その隊員をほぼ無傷で掌握しているところを見るにBランク以上は確定。
さらには私が能力で姿を眩ませているのを一般人が気付いた。マンションの屋上と歩道だ、距離もそれなりに離れていた。探知の能力者だとしてもそれなりの技量、一般人として暮らしているとは考えにくい。
それに救急隊員も同時に私に視線を向けたことを考慮すれば、瞬時の間に両間でなにかが伝達されたと考えるのが普通だろう。そして最後に支配された人間の身体能力の向上か。
「なにか言ったらどうだ?」
話しかけるが、二人の男は無言で距離を詰めてくる。
他の目がないのなら演技の必要もないということらしい。
「はぁ、面倒だな」
相手を殺さず無力化するのは神経を使うんだ。
一定の距離を開けて、一人の男が右手をこちらに向ける。
そこから出てきたのは風の刃だ。猛烈な勢いで迫るそれは私に触れたと同時に軌道をそらしあらぬ方向に飛んでいく。
もう一人の男は強化系の能力だろうか、宙を飛びながら私に殴り掛かる。
顔を狙った拳は、当たったと同時に骨が砕け男は後方に吹っ飛び柱にぶつかると気を失ったように倒れた。
ある程度威力は調整したから死んではいないと思うが、もう少し加減した方がいいかもしれない。
「残り一人」
地を蹴り距離を詰める。
反応できていない男の鳩尾に一発拳を叩き込み、猫背になった隙に首裏から手刀を叩き込む。
「これで制圧完了」
二人の状態を確かめるために一度どこかの機関で確かめた方がいいだろう。
とはいえ今はどこが安全な場所なのか分からない。シャルティアならどこか知っているだろうか。
スマホを取り出し、シャルティアに連絡しようとした時だった。
グチャッという不快な音がした。
音の発生源は二カ所、私の足元に倒れている男と、少し離れた柱の下で気絶している男から。
目に映る光景が緩慢に見えた。
柱の方を見れば、男の頭部が破裂し血が飛び散っている。そして視界の中には私に飛び掛かってこようとする怪物の姿があった。
見た目はカブトガニのように平べったく、頭部には触覚がある。
足元の男は背中が割け、そこから同じように同種の怪物が現れる。
怪物が現れた、よりも民間人が死んだことを意識した。
飛び掛かかってくる怪物を鷲掴みにし、もう一体は飛び掛かってくる前に足で踏みつぶす。甲殻を持っているためか中々潰れないが関係ない。
「――やってくれたな、くそ共ッ」
反射を最大の十倍にする。相手が苦しみに藻掻けば藻掻く程、己に返って来る衝撃が増幅し、最終的に二体の怪物は体を破裂させて絶命した。
しばしの間呼吸を整え、相手の能力を整理する。
「・・・・・・こいつらは、寄生か」
それに同種の怪物が二体いたということは、どこかに母体がいる可能性が高い。
以前にも似たケースがある。
南アフリカのある地域で蟻型の怪物が大量発生した事例が存在する。
これは最初は一匹の女王アリともいうべき怪物が存在し、多くの兵隊を作り上げたのだ。幸い、その時は相性の良い特殊対策部隊の隊員が存在したことと、各国の連携がスムーズにいき渡ったことでそれほどの被害は出なかった。
ただ、今回のケースと比べればその厄介性は比べ物にならない。
「小動物が今まで通りだったのは、怪物の体格にあわなかったからか」
・・・・・・まさか、こんな奴が今まで潜んでいたとはな。
もう息をしていない二人を見る。
寄生された時点で死体も同然だったかもしれないが、やはり間近で見るとくるものがあるな。
「仇はとる。だから、安らかに眠ってくれ」
・・・・・・ヤバスヤバス
あと感想感謝です!
ひと眠りしたら返信させていただきますね(*´▽`*)
やはり人が読んでくれていることを実感できると嬉しいものです。
余談ですが、来月の25日に第2巻が発売される可能性が高めです。
確定かどうかは分かりませんが、まだこちらにはでてきていない人物などがいたり、任務の裏情報があったりするので、詳細が気になる人は見て頂けるとありがたいです。
作者的には3巻が決まれば書けるであろう絶対者同士の戦いと、ソフィアさんの絵が見たいなぁという心境でございます。





