184話 パースの魔女
9月の投稿が1話だったことに驚愕した今日この頃。
忙しかったとはいえこれは流石にマズイ・・・・・・(>_<)
というかまだ感想も返せてない!ごめんなさい(´;ω;`)でも全部しっかり見てはいるのです・・・・・・
「・・・・・・いや、いやいや。そんな訳、だって」
神の力を知っているが故に否定の言葉を出すが、目の前の神がそんな戯言を言わない事は分かっていた。
「まぁ、お前の動揺は尤もだ。しかし、やられたのは俺達のような主神クラスではない。とはいえそいつが神だという事に変わりはないがな」
そもそも、神は別の次元にいるはずだ。どうして地上にいるはずの黒騎士と戦う事になったんだ?
「黒騎士が次元を越えてきたという事でしょうか?」
「いんや。神と言えど、その性格は様々である事はお前も知っての通りだが、死んだ神は黒騎士が出現した場所の近くで祀られていた、と言えば想像はつくんじゃないか」
己が祀られている場所が不定の輩に蹂躙されれば、当然神は怒りを抱く。
そして、幾つかの制約を受けながらも敵を排除するために地に足を踏み入れた神は、激闘の末に敗れたと。とはいえ神だ、例え死んだとしてもいずれ蘇るらしいが。それでも事実、神が土をかけられたことに変わりはない。
「・・・・・・」
額を嫌な汗が通る。
動揺は隠せないが、今は敵の力の把握だ。
まず、奴の剣は権能を切り裂く力を持っているという事。
その力は神を殺した際の血によって生まれたものである。つまり、神との戦闘時には権能を切り裂く力は無かったという事になる。
それは、奴本来の力のみでも神を屠れるという事実に他ならない。
「制約というのはどの程度のものなんでしょうか」
「そうだな、全力でも俺の力の四割ってとこだな」
「・・・・・・そう、ですか」
分からない。四割ってどの程度だろうか、山を消し飛ばすぐらいか、もしくは湖を蒸発させられるぐらいだろうか。
と、考えれば黒騎士に負ける事はあるだろうか?
確かに距離を操作する能力は脅威だ。しかし、俺が手合わせした感じだとどうにもならないような相手ではないと感じた。
(やはり、あの不死性か?)
もしも永遠に奴が蘇るのであれば神を殺す事も可能かもしれない。
ただ、それには一つ疑問が出てくる。
神が撤退を選択しない事が絶対条件であるという点だ。
黒騎士が再度蘇る時には多少の時間があった。
その間に神が逃げる事は十二分に可能であったはず。神の性格的なものであるのなら問題ないが、もしそうでなかった場合、俺は黒騎士の戦力を見誤っている可能性がある。
「はぁっ、なんだかきな臭くなってきて嫌なんですけど・・・・・・」
「ま、危なくなったら誰でもいい、俺達の誰かに憑依を望め。それで決着はつくだろう。今日はそれだけだ、時間がないからまたな。死ぬんじゃねえぞ、隼人」
それだけ言い放ち、太陽神はその姿を消した。
◇
黒騎士討伐二日目。
依頼を受けた俺は今――海に来ていた。
「風が気持ちいですね~」
「自慢の海ですから」
一人では寂しいので、ロアさんを誘ったのだが、まさか軽く承諾されるとは思わなかった。いや、これも彼女の仕事の内だという事だろう。まるで上司の無理難題に付き添わされる中間職の方のようだ。後でお礼をさせてもらおう。
(涼しい、このまま悩みも吹き飛んでしまえ)
こういう問題は悩めば悩む程に呑まれてしまう。
幸い黒騎士は西部からは全く動かないのだから、ゆっくりと考えようという事で、気分転換がてら海に来たのだ。
サングラスと近くで購入した海パンを装備して海へと駆ける前に少し体を解す。
とは言え、使うのは足ではなく車椅子での移動だが。まあ事故が起きないように注意は必要だろう。
ちなみに、この車椅子は防水性は勿論、サーフィンモードなるものもあるらしい。
自信満々に車椅子自身が語っていた。心があるのではと疑ってしまう程の性能に脱帽するばかりだ。
「それじゃ、時間まですきにさせて貰いますね」
日が落ちる頃に壁を越える事になっている。
それまではここの海を堪能するつもりだ。
早速指示を出して海に向けて移動する。
明らかに異質な姿にちょいちょい視線を感じるが全てスルー。今の俺はボンキュッボンのお姉さんを口説きに来た訳でも、目立ってちやほやされる為に来た訳でもないのだ。
『サーフィンモードに移行します』
海に入り込もうとすると車椅子(?)が変形した。
車輪部分が内部に収納されて、代わりに二つのボードが現れ海の上を浮遊できるようになる。
『ジェットを起動、速度を指定して下さい』
「緩く40キロぐらいで」
操作は俺の脳内で行う。
同時に事故が起きないように能力を使用し周囲の反応を捕らえるが、同時に凄まじい欠点も出てきてしまう。
海、カップル、この二つの単語だけで皆には理解できるだろう。
座りながらキスをしているカップルならまだ我慢できる。だが、岩陰での反応には一瞬で顔が般若になった。
(気分転換どころか最悪だわ馬鹿野郎ッ!)
場所が海だからって開放的になり過ぎである。
気付いたのがDの会長である俺でなかったら彼等は今頃海の藻屑となっていた事だろう。俺はと言えば、岩に小指をぶつける呪詛だけを吐き水上走行に意識を戻した。
それが想像以上に面白く、少しばかり遊び心が出てしまった。
「な、なんだありゃ・・・・・・」
「改造バイクか?」
「いやいや、それよりも乗ってる奴が異常だろ! サーカス団の団員かよっ?!」
現在時速60キロ。
人の迷惑にならないギリギリの範囲だろうか。まあ、この車椅子は騒音も出ていないようだし俺が操作をミスらない限りは安全だ。
海上をゲンドウポーズで移動する俺。
その姿が予想以上に周りにうけてしまった。
荒れ狂う波に突っ込んだかと思えばサーフィン顔負けの技術で乗りこなせば、いつの間にかサーファーに話しかけられたりと楽しい時間を過ごせた。勿論、その間もずっとゲンドウポーズは維持している。
「ふぅ、こんなもんでいいか。そろそろ時間だしな」
太陽が若干傾きあと一時間もしないうちに沈むであろう時間。
俺は満足げに汗を拭い、シャワー室へと移動した。
後に、海での俺の姿がSNS上で話題になっていた事を知ったが、その時の般若がおそろしく、思わず土下座したのは別の話だ。
◇
「うっし、行きますか!」
日がすっかり落ち、西では暗闇が全てを包み込む時間。
聳え立つ壁の前で上半身を伸ばしながら俺は、若干声高に言い放つ。
緊急の際、つまり【黒騎士】が壁を越えるような事態になればこれを使ってくださいと言われた腕時計型の連絡機を受け取り壁の向こう側に足を踏み込む。
とはいえ、伝えてはいないが今回の目的は黒騎士本体が目的ではない。
ではなにが目的か。
言わずとも分かるだろうが、魔女と言われる存在を探しに来たのだ。
【黒騎士】は不確定の情報が多過ぎる。
少しでも虫食いされたピースをはめていかなければ足をすくわれるのは俺の方かもしれない。
初日の行動は少々慢心だったと反省しなければならない。
「でも、やっぱりここから見つけ出すのは無謀か?」
パースの面積は5000平方キロメートル以上らしい。
数字だけでは分かりづらいが、一辺71キロメートルの正方形を考えればその大きさが想像出来るだろうか。
その上、閉鎖されているのはパースから西の全ての都市。能力で広範囲の探知は可能だが、流石にこの規模は不可能だ。
これは時間がかかるだろうなと思いながら進む。
「・・・・・・罠か?」
それなりの速度で移動して一時間が経った。
そして先ほどの俺の考えを否定するように見つけた反応に思わず移動を停止し、思考を巡らせて出た答えが口から漏れ出た。
壁からは数十キロと離れてはいるが、決して安全だとは言えない微妙な地点。
わざわざそんな場所に魔女がいる理由が分からない。いや、まだ魔女と決まった訳ではない、それよりも余程おそろしいものが居る可能性も十二分に考えられる。
おそらく、いや明らかに誘っているのだろう。
相手の危険度と現状の自分を秤に乗せてこの誘いに乗るべきかを考え、
「・・・・・・行こう」
もとより何かを求めてここに踏み込んだのだ。
最悪の事態になったらなったで、その時に対処すればいい。30秒で片はつく。
僅かの不安を抱きながら、その地点へと方向を向けた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
黒騎士との戦闘の被害があまりない、奴とは離れた場所。
そこはこの死んだ都市ではあり得ない程に美しかった。
数えきれないほどの薔薇がそこら中に生え広がり、月の光を反射している。
そんな薔薇園の向こう、傾いているビルの二階。
窓の縁に腰を下ろして俺を見下ろす――少女の姿があった。
「新しい特殊対策部隊の子かしら? 正義感が強いのは良い事だけれど、ここは危ないわ」
まるで大人の女性のような喋り方に違和感を覚える。
しかし、それも仕方ない事だろう。
彼女はおそらく、実際に大人と呼べる年齢のはずなのだから。
パースの魔女。
資料で見た少女の姿が、数十年経った今もなお、色褪せる事無くそこにはあった。
さあ、魔女の登場です(*´▽`*)
それと10月は5,6話投稿を目標に!





