181話 初戦
こ、こんなに誕生日を祝ってもらえたのは初めてだ~!
感想の返信が同じになってしまいそうなのでこの場で感謝を(*´▽`*)
速い。いや、違うか。
風の揺らぎも予備動作も無かった。成程、距離を操作する能力か。
ほぼほぼ転移と変わらないな。ただ、目的地の間に障害物があればどうなるのか。
鞘から千鳥を抜き、上段から振り下ろされる剣を防ぐ。
「パワーも相当、だなッ」
仕方ないとはいえ、上を取られているという状況があまりよろしくない。
予想よりも力も強く、若干だがこちらが押されている。
(じゃあ、技術的にはどうだ?)
体を右に寄せ、刀を斜めに倒す。
競り合っていた剣が刀の側面を滑るようにして地面に吸い込まれる。その隙を付くように手首を返して千鳥を上段から斜めに下ろす。
(情報通りか)
隙を逃さぬ一刀、しかし千鳥は黒騎士に触れる寸前で勢いが死んだ。
奴に触れるまでの間に数百キロの空間が存在する事が予想されると書かれていたがこういう事か。刀を押し込んでいるが、全く先に進まない。
停止する俺目掛け、黒騎士は剣が地面に埋まった事など無関係というようにそのままの状態から剣を切り上げる。
「あっぶな」
上体を反らす事で下からの斬撃を回避する。
しかし、空振りに終わった剣は空中で瞬時に停止し、反転するように再度上段から振り下ろされた。
反応速度、パワー、能力、どれをとっても凄まじいポテンシャルだ。
テュポーンの時にいた六腕より厄介なのは確実だろう。
「俺が来て正解だったか」
左手で地面を叩き、宙に体を浮かせ前方に半回転、さらには左腕を巻き込むようにし右回りに回転しながら剣を回避する。
その状態から千鳥を構え、反転した光景に黒騎士が映り込むと同時に、一呼吸を置いて技を繰り出す。
「八岐大蛇」
数コンマの違いもなく放たれる八の斬撃。
それら全てが急所だと思われる箇所に直撃するが、やはり本体には届いていないようで、黒騎士は攻撃を無視して俺に迫る。
振るわれる剣を千鳥で返し、衝撃で距離が離れたその隙に腰の鞘を左手で掴み地面に突き刺す。
体を安定させた状態で地面に戻るが、気付けば地面に黒騎士の影が映っている。
(一息つく間もないな)
これでは逃走する事は相当厳しい。絶対者以外に生き延びられる能力者は皆無だという事も頷ける。
即座に鞘を地面から抜き、千鳥を納刀した状態で腰に戻し抜刀の構えをとる。
半端な攻撃で届かないのなら即死級を放つまで。
「雷切」
雷速の抜刀。
俺と黒騎士の間で約一秒程雷撃が停滞した後、黒騎士の体を紫電が穿ち奴を吹き飛ばす。
「うーん、あんまし効いてないか?」
攻撃は確かに届いたが、空中で即座に体勢を整えた所を見るにあまり攻撃は効いていないようだ。
僅かにでも攻撃が拡散されてしまえば、数百キロ先の相手に届く攻撃は本来の威力には程遠いものになってしまう訳か。あの鎧を突破する為にはかなりの破壊力が必要であるらしい。
「おっ?」
吹き飛んだ黒騎士がすぐに距離を詰めてくるかと思えば、その場に留まりこちらに向けて左手を向けた。
僅かな空間の淀みを感じると、瞬時に千鳥を納刀してもう一振りの刀――布都御霊を抜刀する。
ほぼノータイムで上段から振り下ろせば、なにかを断ったという感触が手を伝った。
そして背後から響き渡る轟音。
振り返れば、俺を起点として扇状に建物が吹き飛んでいるのが見て取れる。
ネタが割れているとはいえ、ただ手を掲げるという軽いモーションからこれ程の威力が出るのは依然として脅威だな。というか逆にこれをまともに喰らってもピンピンしていたというレオンさんは人間止めてるだろ。
「こいつを抜いたのはお前で二人目だよ」
布都御霊を顔の正面で地面と平行に構える。
(しまったな、どれぐらいの都市破壊を想定しているのかを先に聞いておくべきだった)
そして一閃。黒騎士はなんの動作もしなかった。
黒騎士との距離は二十メートル程だ。その距離から刀を振っても刀身そのものが敵に当たる事はない。
動作をしない、間違ってはいない。
お前のポテンシャルがあれば、雷撃であろうと躱せるだろう。
ただ、布都御霊はお前にとっての死の鎌だ。
「地球が丸くて良かった」
ずれる、全てが。
黒騎士の腕が落ち、上部が後ろに傾く。
そして奴の背後の光景全てが、黒騎士と同じ切り口で両断された。
距離は関係ない。
見えるもの、その全てがこの霊剣の射程であり、両断する事に特化した攻撃を防ぐことは殆ど不可能だ。
・・・・・・しかし、
「再生、か?」
落ちた腕が、傾いた状態が元の形に、再生というよりかは時間が巻き戻るようにして復活する。想定内ではある、が些かその過程が自分が予想していなかったものだったために眉が寄ってしまった。
布都御霊を上段に構える。
「秘剣――落涙」
振り下ろされる霊剣の一刀は、空間諸共黒騎士を縦に両断する。
そして斬り終りの瞬間、落ちた雫が跳ね返るようにして、再度下方からの斬撃が黒騎士を蹂躙した。
後には何も残らず、崩れていく建物による砂塵だけが宙を舞う。
完全なる消滅。
三人の二の舞にはなるが、一度自分の目で確かめなければ納得がいかない。
無から蘇る存在など、それこそ不滅である神でしか俺は知らない。SSランクといえど、怪物がそこまでの域に到達しているとは俺は思えなかったのだ。
――目の前の光景を見るまでは。
「・・・・・・マジかよ」
空間に現れる淀み。
それは次第に大きくなり、亀裂が入り始める。
その先には、完全に消したはずの黒騎士が無傷の状態でこちらを睥睨していた。
再生ではなく、再誕。
思考を限界まで回転させるが、現状の情報ではこの敵を倒す為の算段がまるで見えない。
「はぁ、今日は退くか」
まずは対抗策を練らないとだな。
権能を解き一息つくと、右目は深紅に染まり、服装は黒い装束へと変化する。
「模倣――守護者」
【魔王】の能力で金剛さんの能力を模倣し、一枚の障壁を展開する。
何故俺が魔王の能力を使えているのかといえば、おそらく自己嫌悪だろう。蒼の一件から【大天使】の能力が使えなくなってしまったのだ。
結果的に蒼を救い、自分に対する怒りも引いたと感じていたが、心の奥底ではそうではないらしい。
「またな、黒騎士」
最後にそれだけ言い残し、障壁に乗ってその場を離脱する。
途中、俺の車椅子を発見したのでそれも回収し、速度を増してそれほど時間をかけずに壁へと戻った。
壁を抜けると、障壁から車椅子に移りロアさんの元へと移動する。
「すいません。お待たせしました」
「いえ、怪我もないようで良かったです。もしかしたら戦闘になっているかと心配しておりました」
「はっはっは」
秘儀、笑って誤魔化すを発動!
それなりに離れた場所での戦闘であったため気付かれなかったようだ。
「黒騎士はどうでしたか?」
「そうですね。なんだか気持ち悪いですね」
「気持ち悪い、ですか?」
「強い、のは確かでしょうけど。戦闘というよりも、奴自身の特異性の方が目につきます。奥底になにかありそうで、先が読めない存在というのは気味が悪い」
「・・・・・・凄いですね。絶対者ともなれば、遠目からでもそこまで感じ取れるものなのですか」
「えっ?! ま、まあ俺ともなればお茶のこさいさいですかね~ ははは!」
あっぶねえ、勘付かれるところだったぜ。
迂闊な発言は極力控えよう。
「それでは支部に戻りましょうか」
「はい。あっ、一つ質問なんですが、黒騎士との戦闘の際に発生するであろう都市の被害なんですが、どれぐらいが許容されるのでしょうか」
「最小の被害に、というのが理想ではありますが、それが叶う相手ではありません。あまり被害は考えずに柳様の全力を出して頂ければと」
やっぱり被害は少ない方がいいか。
逆にいわく付きの都市を壊滅させてくれとか言われたらなりふり構わずに出来るが、流石になかったか。壊滅プランとしては焦土と化すと海底に沈めるがあったが、どちらも止めた方がよさそうだ。
(それにしても、あいつは一体どうやって倒すのか。倒せるのか? どこかに核なんかがあれば楽なんだが)
まずは少女について調べた方がいいかもな、などと考えつつオーストラリア支部に転移した。
さぁて、どうやって倒すか・・・・・・





