176話 友
遅れてごめんちゃい(´;ω;`)
あの事件から、かれこれ二日が経った。
テレビの報道では【世界蛇】の討伐と、ある少女――蒼についての話で持ちきりだ。
それがいい方向であれば問題ないのだが、あまり好ましい方向ではない。
理由は、単純に蒼の能力が強力過ぎたのだ。
あの時は気付かなかったが、能力発動の余波のようなもので、上空に存在していた星々の一部がその存在を消した。
今では夜に見上げる空の中にぽっかりと穴が空いているのがよく分かる。
そんな凶悪な能力が暴走しているかもしれないとキャスターやら専門家が震える声で言う。
「はぁ」
朝食を摂っている机で思わず溜め息をつく。
ちなみにこの場には俺とソフィアさんしかいない。蒼はルイの世話で、シャルティアさんは用事で少し家を出ている。
(さぁて、一体どうしたもんかな)
勿論蒼の事もだが、そちらは強引になんとか出来る、というかする。
問題はもう一つ、一昨日に超越神と話した時に言われた事が現状もっとも厄介な案件だ。
『怪物が強くなっている理由? 簡単な答え』
『えっ、知ってるんですか?!』
『当たり前。その答えは神殿。あの男の神殿にかけた願いの一つは混沌だった。命の危険が下がる事は混沌から遠ざかるということ。故に、あなた達が強くなればなるほど敵も強くなる。神殿の効力を消すまでは平和な世界など訪れない』
と、いうことらしい。
神殿の効力を消す。方法としては神殿の破壊だろうか。だが、その前に神殿の召喚は俺が鍵になっている。つまり神殿を破壊するためには俺が死ぬ必要があるわけだ。
困った。
死ぬ気など毛頭ないが、それ以外で神殿に近付く方法が思いつかない。
一応超越神の権能でも駄目なのか聞いたが、結論だけ言えば無理らしい。現状の俺が扱える範囲ではその扉を開ける事は出来ないだとか、説明が半分以上理解出来なかったが、現状で無理なら鍛えれば可能性はあるのかもしれない。
「隼人君! ボクからプレゼントだ~!」
考え込む俺の頬を両手で掴みソフィアさんが強引に顔の向きを変える。
視線の先には布で隠された何かがあった。
「なんですそれ?」
「ふっふっふ~ 御照覧あれ!」
ばさっと大袈裟に布を外して姿を現したのは車椅子だった。
おぉ、車椅子が無くても生活できていたから気付かなかったが、普通は両足が動かなくなったら使うもんだよな。
しかし、車椅子にしてはなんだが見た目がおかしいような?
黒いフォルムに、下の車輪の素材はおそらく一般に出回っているものではない。
「車椅子、ですよね?」
「ただの車椅子じゃないよ。ボクがリサちゃんに頼んで創ってもらったのさ!」
むっふ~と可愛らしいどや顔をするソフィアさん。
リサとはおそらく序列二位のリサ・ネフィルのことだろう。確かに、彼女の【創造】の能力であれば容易に創れるだろうが、とんでもない機能が搭載されていそうで不安だ。
「とりあえず座ってみなよ!」
満面の笑みで車椅子を持ってくるソフィアさんを悲しませる訳にもいかず、若干の不安を抱きつつ、車椅子の上に腰を下ろす。
『所有者、柳隼人を認証しました』
「「喋ったっ?!」」
「なんでソフィアさんまで驚いてるんですか!」
「だって喋るなんて聞いてないよ! ボクは兎に角頑丈なのを頼んだんだ!」
『体温36度4分。血圧118ミリメートルエイチジー。正常を確認しました』
いつそんなの測ったんだよ・・・・・・
『移動したい方向を意識して頂ければそちらに移動が可能です』
「・・・・・・」
右に向きたいと思い浮かべると、その通りに車椅子が方向転換する。
性能が高過ぎて何も声が出ない。怪物殲滅機能とか恐ろしいのは流石についていないと信じたいが。
「あの、説明書とかって」
「な、無いね。使用してからのお楽しみって手紙には書いてあったけど・・・・・・」
舌を出して笑みを浮かべている姿が想像出来る。
移動できればそれでいいのだが。まあ、これはこれで面白いしありがたく貰っておこう。
しばらく性能を確かめていると、チャイムの音が鳴った。
シャルティアさんは家の鍵を持っているため他の人だ。
「見てくるね~」
ソフィアさんが玄関に移動して対処に行く。
配達か新聞だろうかと思っていたが、その予想は外れ、ソフィアさんはそのまま訪問者を家に上げてリビングまで連れてきた。
その姿を見て、少しだけ驚いた。
「お、お久しぶりです。隼人、お兄様」
そして尊死した。
はっ! いかんいかん、気を保たねば。危うく天に召されてしまうところだった。
少女、蒼の友人である渚ちゃんが不安げな表情を浮かべて俯いている。
理由としてはいろいろと想像は出来る。ソフィアさんから聞いた話だが、彼女は蒼と一緒に襲われたらしいから。
「ッ?! お兄様、体が・・・・・・それに瞳の色も変わって」
「あぁ、気にしないで。軽傷だよ、別に誰かに傷つけられたわけじゃない」
「ほ、本当に大丈夫なのですか?」
「勿論」
ほっとした表情を浮かべる渚ちゃん。
知っていたことだが本当に優しい子だ。将来は聖女と呼ばれることだろう。
「今日は蒼と遊びにきたのかい?」
「そ、そうです。蒼ちゃん! 蒼ちゃんは無事なんですかっ?! 変な人に襲われて、蒼ちゃんの様子がおかしくなって、私は、なにも出来なくて・・・・・・」
みるみると言葉の勢いが落ちていく。
誰かが襲われている時に、なにも出来ないのは本当に自身の無力を思い知らされるのだ。
その後、蒼がなにをしたのかを知らないはずはない。
それでも心配してくれる目の前の少女があいつの近くに居てくれた事に、運命に感謝せずにはいられない。
「大丈夫、あいつは無事だよ。ほら」
「えっ?」
「渚ちゃんっ?!」
下からの声が気になったのだろう。階段から降りてきた蒼が驚きの声を上げる。
「あ゛お゛ち゛ゃん゛!!」
「な、渚ちゃん。私が怖く・・・・・・」
「よがっだ~ ぶじだぁ! 蒼ちゃん~」
蒼の姿を見た渚ちゃんが両手を広げて蒼に飛びつく。
心のどこかでまだ不安が残っていたのだろう。蒼が声を若干声を震わせてなにかを言おうとするが、それを遮って渚ちゃんが号泣しながら蒼にしがみつく。
困惑しながらも、ほっとしたような優しい笑みを浮かべて抱き着く渚ちゃんの頭を蒼がポンポンと落ち着けるように軽く叩く。
「うぅ、良かったね~」
ソフィアさんがもらい泣きして枕で涙を拭っている。後でハンカチの存在を教えてあげよう。
(良かったな、蒼)
仲間の無事も確認しておこうかとスマホを取り出し電源を付けると、大量に来ているメールの量に驚いた。
親には電話を入れたので大丈夫だが、特殊対策部隊の面々からだ。
特に服部さんからは鬼のように電話とメールが来ている。
その一つを開く。
『大丈夫っすか! 生きてるっすか!
こっちもなかなか手が離せなくて情報を全部知ってるわけじゃないっすけど、とんでもない事に巻き込まれて柳君が怪我をしたのは聞いたっす。
以前私に対して生き残る覚悟だの言っていたのに、自分を犠牲にするようなことしてないっすよね。
・・・・・・もしそうなら、許さないから。
お願いだから、心配かけさせないでよ。
後一日以内に返事がこないと家に突撃するっすよ!』
「ははっ!」
つい笑みを零す。
どうやら、俺も誰かに心配して貰っていたらしい。
突撃されては敵わないので急いで皆に返信をする。
蒼と渚ちゃんは二人で蒼の部屋に向かったみたいだ。
いつの間にかこの場には三人しかいない。
「それじゃあ俺も役目を果たしますか」
「万全ではないのですから、あまり周囲を掻きまわすのはおすすめしませんよ」
俺の背後に移動していたシャルティアさんが答える。
準備が整ったようだ。
「それはどうでしょうね」
「・・・・・・はぁ」
ソフィアさんに家の事を頼むと、溜め息を吐くシャルティアさんと共に俺は家を出た。
喧伝の許可とかっているんですかね?
う~ん、ちょっと怖いので、察して欲しいですとだけ残します( ̄▽ ̄)
返信は明日するぞい(*´▽`*)





