154話 嘆きの天使
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『・・・・・・来るか』
【タイタン】が動きを止め、後方にいるそれへと視線を向ける。
動きを変えたのは【タイタン】だけではない。空間全体に小さな、それでいて温かい光を放つ何かが現れ始める。
『来た、来たよ・・・・・・!』
『あったか~い!』
『久しぶり、久しぶりだね!』
その発光体の正体を知る金剛は瞳を見開く。
「まさか、この全てが、精霊なのか・・・・・・?!」
金剛の視界に映る精霊の数は一つや二つではない。
夜に輝く星空を眺めるが如く、無数の精霊がそこにはいた。
本来精霊とは非常に臆病な存在だ。一部の存在を除き、彼等は等しく現世には姿を現さず隠れ住む。
戦いのある場所で姿を晒す事など、ありえない、ありえるはずがないのだ。
しかし、現に今、そのありうべからざる事が起こっている。
この現象を理解する術は、今の金剛には皆無だった。
◇
背後に気配を感じる。
どうやら影間を移動する事も出来るらしい。
蝙蝠には打ってつけの能力じゃないか。
「お前だけは、必ず殺すッ!!」
不快な殺気だ。
他者の事は微塵も考えず、唯々自身の怒りをぶつけた子供のような殺気。
「大天使」
能力を発動する。
最初の使用で分かってはいた事だが、【大天使】は厄介な能力だ。
他者に依存するのもそうだが、精神作用が強過ぎる。
「ここは悲しいな、灯が、また一つ消える」
俺一人が嘆いても仕方がないのに、瞳から流れる涙が止まらない。
「なッ?!」
吸血鬼が驚愕の声を上げる。
背後から振るった全力の一閃を、左翼のみで止められたのだから仕方がないが。
南さんは【大天使】に関する知識が曖昧だった。
故に、俺の能力は確かな力として具現化する事が出来なかった。
ならばどうするか。単純だ、知っている者を呼べばいい。
【開演せし劇場】ならば、その不可能すら可能にする。
彼等は知っている。
その時代に存在したのだから。実際にその目で、肌で、その存在を刻み付けている。
(ただ、これは予想外だったな・・・・・・)
人が受ける印象というのは、見たものが苛烈である程、記憶に上方修正がかかる。
神話の時代、【大天使】がどういう存在だったのかは知らない。
ただ、万人に絶大な印象を植え付けた存在だという事は、この能力を通じて理解できる。
明らかにこの能力は――異常だ。
「抵抗するな。さすれば痛みなく終わらせてやろう」
いつの間にか、俺の様相が変わっていた。
少しはだけた純白の服を羽織り、金色に輝く瞳が吸血鬼を射抜く。
反応できたものは数名。
神技とも呼べる歩法技術で以て、敵の危険意識すら掻い潜り、吸血鬼の懐に潜り正対する。
吸血鬼がようやく己の危機を感じ取ったのは、額に俺の人差し指が触れた瞬間だ。
「な――・・・・・・」
言葉を言い終わる前に、眼前から吸血鬼が姿を消す。
数秒後、頭部を失った吸血鬼の肉体が大地に沈み、巨大な飛沫が舞った。
「少し飛ばし過ぎたか」
まともに制御が効かない。
やはり強過ぎる能力と言うのも考え物だ。現状はおそらく、戦神の破壊力を上回っている。
「我は代行者、主に代わり、咎人を断罪する者」
両の手を合掌する形で叩く。
手の隙間から眩い陽光が溢れ出す。ゆっくりと、手を放していく。
「嗚呼、あなたは罪を犯した。許されざることだ。
しかし、安心されよ。その罪も、悪意も、そのすべからくを両断しよう」
両手の間から、一本の大剣が姿を現す。
漏れ出る神気の圧力に怪物達は意図せず足を止める。
白銀の、三メートルにも及ぶ刀身と、そこに刻まれた神聖文字が淡く光る。
「救いはここに、【断罪剣】」
自分の身長の倍にも及ぶ大剣を片手で掲げ肩にかける。
この大剣の能力はシンプルだ。
使用者である俺が敵に罪があると断ずれば、その者を救済の名のもとに消滅させる。
防御しようが、理を捻じ曲げようが意味はなく、全ての不可能を撃滅し、必ず断罪する必殺の剣。この剣の前では、吸血鬼の再生力であろうと無意味である。
逆に、俺の判断が曖昧であり、罪があると言い切れない場合。
この剣でその者を傷付ける事は決して敵わず、素通りするのみの無害なものへと変わる。
残念ながら今回は、救われるものはいないだろうが。
「笑え、全力で俺を殺しに来い。その生の最期に、自分で意味を持たせろ」
地を蹴り、怪物達の真上へと飛び上がる。
そのまま空を蹴り、着地点にいた怪物の体を大剣で両断する。
飛び散った血がシャボン玉のように姿を消し、肉体どころか、骨すら残さずに消滅する。
「さあ、来い」
なんでこんな事をしているのだろうか。
自分でも不思議でならない。一撃に全力を注ぎ大剣を一閃すればそれで終わる戦いだ。
にもかかわらず、俺は一対一の戦いを繰り広げている。
超高速で怪物の前に移動し、他の者達が手を出してくる間もなく屠る。大勢で俺を囲んできようものなら、わざわざ怪物が一撃を放った後に屠る。
胸が締め付けられるように苦しい。
とめどない自問自答が繰り広げられる。
本当に、厄介な能力だ。
「せめて安らかに、眠れ」
二分は掛からなかったように思う。
数百いた怪物達は全て消滅し、近くで残っているのは憤怒に身を燃やしている吸血鬼のみだ。
しかし、平静を失っても尚吸血鬼が我武者羅にせめようとはしない。
それは本能だろう。
これ以上進めば死ぬと警鐘が鳴り響いて鳴りやまないのだろう。
それでも逃げないのは、こんな場所で傲慢な王として君臨し続けて肥大化し続けた無意味なプライドによるものか。
「終わらせよう」
「俺の国をッ! たった一人の、人間などに!」
無数の影が俺に迫る。
形を変え、龍の姿を、巨人の姿を模したものが海を越えてくる。
敵は影、物理攻撃でも意味を成さないだろう。かといって、的確な能力を持っている者が日本にいて、かつ戦闘に出れる者など存在するかも怪しい。
事実、お前は国を陥落させるSランクに相応しい怪物であったよ。
「よかったな。最期に全力が出せて」
「ば、かな・・・・・・」
俺の姿は吸血鬼の背後、既に大剣での攻撃を済ませ、肩に担ぐ。
全ての影が霧散し、背後の吸血鬼の体が泡のように消えていく。
はなから戦いなどにもならなかった、絶対者とSランクでは、次元が違い過ぎたのだ。
これで詰みだ。
残るは残党を狩れば、
「まだです! 気を抜いてはいけません!」
海の上空。金剛さんと共に障壁の上に乗っている菊理さんが叫ぶ声が鼓膜を揺らす。
「Sランク上位は吸血鬼ではありません!」
菊理さんが言葉を紡いだと同時、真っ先に動いたのは【タイタン】だった。
その巨躯では考えられぬ速度で背後に振り返ると、片腕で身を護る態勢を取る。直後、【タイタン】目掛け、人間と変わらぬ背丈の黒い影が迫り、拳で【タイタン】を殴打する。
無意味だと断じたそれは、予想と反して【タイタン】は地を削りながら大きく後退した。
『面白い。ようやく少しは戦えそうだ・・・・・・と、いいたいが』
【タイタン】の体が徐々に薄くなっていく。
『はぁ、今度はよりまともな器を用意しておけ、選定者よ』
それだけ言い残すと、【タイタン】は姿を消した。
黒い影が海面に降り立つ。沈まないのは闘気で足を覆っている為か。
「・・・・・・金剛さん。障壁を全て展開して防御に専念して下さい。気を抜けば死にますよ」
敵から視線を外すことなく警告を発する。
菊理さんが答えを言わずとも分かる。目の前のこいつが、Sランク上位だ。
いや、場合によっては奴等に届く。
敵は、柳隼人と同じ姿をしていた。
有名なあれですね('Д')
自分と瓜二つ





