151話 玉座
よしっ! 間に合った(*´▽`*)
お風呂から上がったら感想返信します!(≧▽≦)
皆が目指す城の城門の前、そこに金剛と菊理の姿があった。
「どうやら、本丸を引いたらしい。他の班が異界に侵入できたのかは分からないが、まだ無事だといいが」
「他の班を待ちますか?」
「いや、ここで止まればそれこそ最悪だ。進むしかない」
この空間は相手の土俵だ。
待てば待つ程こちらが不利になってしまうだろう。
「菊理、俺から離れるなよ」
「はい!」
城門に障壁をぶつけて破壊する。
すぐに怪物が現れるかと身構えるが、一向に現れる気配はない。
「金剛さん、視えました」
菊理に目を移すと、瞳が翡翠に輝き、目の前の光景ではない何かを見ているのが分かる。
何度か目にした、菊理が能力を発動しているときの現象だ。遠くからではなく、直接現場で使用した際の予知はかなり鮮明に視えると言っていたのを思い出し、何が視えたのかを尋ねる。
「広い空間、暗い場所を周囲の蝋燭が照らしている。その奥、玉座に座すのは、漆黒の髪、紅の瞳、鋭い牙を持つ人型の怪物」
暗い空間、紅の瞳に鋭い牙を持つ人型の怪物か。
(吸血鬼・・・・・・か?)
可能性は高いだろう。
奴等は強力な怪物だ。最低でもAランク上位の実力を持つ。俺の障壁では少々厳しい相手にになるかもしれない。
「人型の怪物の背後に控えるのは十の異形の者達。その全てが強者・・・・・・以上、です」
菊理が元の状態に戻る。
顔を青くしているのは、自分が視た予知がそれ程絶望的なものであったからだろう。強者というのがどの程度を指すのかは分からないが、全てAランク以上と考えるべきだろう。
「大丈夫だ」
菊理の頭に手を乗せて、確信に近い言葉を贈る。
ここには全ての特殊対策部隊員が揃ってるどころか、絶対者までいるのだ。それに、
「俺は守護者だ。皆が来るまでの時間稼ぎぐらい朝飯前だ」
これでも十位台の能力者、無様な働きなど出来るはずもない。
いずれ目を覚ますであろう恋人に合わせる顔が無くなってしまう。
「お前のおかげで敵の戦力も把握した、油断はない。行くぞ」
「は、はいっ!」
障壁を四枚展開すると、菊理を背にして道を進み、暗い場内へと入る。
「暗い、ですね」
「蝙蝠には相応しい場所だな」
確かに暗い。
手を伸ばした先からは殆どなにも見えない程だ。
障壁の淡い輝きでなんとか進めてはいるが、戦闘になると形振り構ってはいられないな。
「確か、敵の親玉は玉座にいると言っていたな」
「はい、この城の構造が現実のものと同じとは限りませんが、おそらく最上階にいるのだと思います」
「だろうな」
上階から息の詰まる様な殺気を感じる。
十中八九敵がいるだろう。
薄暗い空間を突き進み、階段を上がっていく。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。まだ敵にさえ遭遇していません!」
とはいいつつも、表情が明らかに悪い。
本来であれば、こんな瘴気が溢れ出ている場所に、十歳そこらの少女が来るべきではないだろう。戦闘隊員だけで片づけられれば良かったんだが。
残念だというべきか、俺達はそこまで自分の実力に奢っていない。
何人もの死をこの目で来た。戦場では準備を怠ったものから消えていく。
(ただ、戦場には百パーセントというものは存在しない)
万全の準備をしたものでも、慢心があるならば、幾らでも盤面はひっくり返る。
その点、今回の敵はわざわざこんな城を建てている所からも、傲慢な気質を持っているだろう。そこが狙い目だ。
「・・・・・・ここか」
階段が打ち止めとなり、廊下を突き進むと、最奥に一際荘厳な扉へと行きつく。
そして感じるプレッシャー。間違いなく、この扉を開けた先に、奴等がいる。
「菊理よ。視えたんだろ、俺は死ぬか?」
道中、一瞬だけ菊理が表情を崩したのが分かった。
おそらくぎりぎりまで能力を使い続け、未来を予知し続けたのだろう。額からは玉のような汗が出ている。
「いえ、どうやら間に合うみたいです」
「そうか」
口角を上げる。
ならば俺は、それまでの間全力で敵を屠る事に集中すればいい。
扉に触れて勢いよく開け放つ。
すると、暗い空間に、手前の壁から順に灯が灯されていく。
敵の姿が浮かび上がる。
虎の怪物、人型も数体、五メートルを超える大型もいるな。
やはりというべきか。そのどれもがAランク以上だ。
そんな怪物達を背後に、玉座に座っている人型の怪物。
「あぁ、歓迎しよう。哀れな餌共」
血を更に濃くしたような深紅の瞳がこちらを貫く。
不死に最も近いと言ってもいい怪物、【吸血鬼】。
離れていても分かる敵の圧倒的な覇気、分かってはいた事だが、Sランク級か。
障壁を六枚追加し、計十枚展開する。
「おいおい、野蛮だな。少し喋ろうではないか、貴様等は遺言を残そうとは思わんのか?」
「意味が分からないな。死ぬ予定もないのに遺言を残す必要などないだろう」
「その心意気だけは認めてやるが、この絶望的な戦力差は覆らんよ。なぁ? 十五位殿?」
奴の発言に眉を寄せる。
可能性としては考慮していたが、裏切り者がいたか。
だが、嬉しい誤算もある。
奴は俺の事を十五位と言った。しかし、今の俺の順位は十六位だ。
つまり、奴は柳の存在を知らない。
絶対者を抜きにして固められた布陣など、土器にも劣る脆さだろう。
「貴様の未来を予知してやる。貴様は手も足も成すすべなく、たった一人の能力者に敗北するだろう」
「・・・・・・貴重な餌だ。懇願すれば、一生家畜として生かしてやろうと思ったが、気が変わった」
表情を消した吸血鬼が玉座から立ち上がる。
後方の配下も動き出そうと一歩踏み出すが、吸血鬼はそれらを目で制する。
「奴はこの手で殺す。手出しは無用だ」
かなり頭に血が上っているようだ。
己の為に俺を瞬殺しようとしないのは愚の骨頂としか思わんが。
「菊理、下がっていろ」
「はい! ご武運を」
「あぁ」
両者が近づき、途中で足を止める。
息が詰まりそうになる数秒の停滞。
先に動いたのは吸血鬼だった。
「死ね」
一瞬の間に俺との間を詰め、鋭い爪を振るう。
展開していた障壁の三枚が破壊される。
(生身の威力は予想通り)
正面に控えていた四枚目を操作し、吸血鬼へとぶつける。
大きく後退した吸血鬼の頭上へと修復した三枚の障壁を展開、そのまま圧し潰さんと迫る。
「煩わしい」
怨恨の呟き。
障壁が粉砕される。
「・・・・・・厄介な特性だ」
吸血鬼の周囲で浮かび上がる血の塊。
奴等は自身の血を操る事が出来る。膨大なエネルギーを秘めた血液による攻撃は凄まじく、一撃で俺の障壁が粉々に粉砕されたことからもかなり危険だ。
「血の宴」
血液が蠢くと、次々に武器の形を成していく。
奴の周囲には二本の禍々しい剣が浮遊しており、それを手に取る。
おもむろに立ち上がると、奴は無造作に二本の剣を振るう。
飛翔してくる剣戟を二枚の障壁で防がんと前面に出すも、障壁は容易く両断され、俺の頬を薄く切り裂き、そのまま後方の壁にぶつかる。
後方に目を向け、菊理が無事である事を確認してから、再度敵に視線を戻す。
(修正だな。あの剣は受けるより流した方が良さそうだ)
両の掌を正面で合わせる。
十枚の障壁が輝くと、その数が五枚になる。障壁同士を合成することで強度を上げたのだ。
「面白い」
俺の背後に移動した吸血鬼が二本の血の剣を十字に振るう。
それを防御する二枚の障壁。僅かに亀裂が入るが、即座に修復される。笑みを浮かべる吸血鬼の左右から挟み込むように障壁が迫るのを宙返りで回避される。
「もっと俺を楽しませろ! む?」
体を反転させ、俺が居た場所に視線を向けるも、既にその場に俺の姿はなく、疑問の声を上げる吸血鬼だが、はっとした表情で自身の背後、天井へと顔を向ける。
「勘もいいときたか」
障壁を足場に宙に飛び上がり、足場にしていた障壁を吸血鬼に叩きつける。
奴が剣で迎撃せんと、障壁に触れた瞬間、腹に響くような重い爆発が炸裂する。爆発に巻き込まれた吸血鬼は派手に吹き飛び、城壁に激突する。
俺は地面に着地すると、吹き飛んだ吸血鬼へと目を向ける。
「素晴らしい。これが十位台の実力か」
砂埃から姿を現した吸血鬼は左半身に重度の火傷を負っているが、それが即座に回復し、服も再生する。
「しかし無駄だ、無意味だ。この俺には通用しない」
「死ぬまで続けるだけだ。いくら吸血鬼と言えども永遠に再生し続ける事は出来ない」
「はぁ、分かっていない。お前は、お前達はなにも分かっていない」
手を顔に持っていき、盛大に溜息を吐く吸血鬼は、その口角を三日月に吊り上げる。
「お前等の弱点はこれだよ」
「ッ?! 貴様!」
突如として奴の影が蠢き、その影に手を伸ばすと、なにかをを取り出す。
そのなにか――衰弱した人間の女性を見て、思わず怒声を上げる。
「はなからこれは戦いではないんだよッ! さぁ選べよ餌ぁ! 人質を見殺しにして抗って朽ち果てるか! こいつらの命を守る事の引き換えに自身の命を差し出すか!」
吸血鬼が盛大に嗤う。
周囲の怪物達も同じように嗤い声をあげ、汚い四重奏が響き渡る。





