149話 風
お、おかしいなぁ、金曜には投稿するはずだったのに(;´∀`)はっはは・・・
┏( ;〃>ω<〃 )┓ゆるして
能力発動とともに現れる大翼。
一枚一枚の羽根が光り輝き、全てを淡く照らす。
「今回は当たりか?」
周囲の状況により変化する【大天使】の能力は、その場面で、必ずしも怪物を倒せるだけの力を持っているとは限らない。
ただ、俺も戦闘での使用は初めてな為、自分でも気づかない秘密があるという可能性もある。
実際、俺は今謎の自信に満ち満ちている。能力を使えば精神にも一定の変化があるようだ。その気になれば海すらも消し去れる自信がある。
不敵な笑みを浮かべ右手を前に出すと、掌から光球が生み出される。
すぐそこまで迫る怪物へと手を向けると、凝縮されたそれを打ち放った。
ふよふよ~ ぴちゅん・・・・・・
「「・・・・・・」」
お、おかしいな。視力が突発的に急激に低下でもしたのだろうか。
俺の放った光球が、シャボン玉のように宙を浮遊したかと思えば、これまたシャボン玉のようにあっけなく、破裂したように見えたのだが。
「も、もしかして今のが攻撃、か・・・・・・?」
後ろを見ずとも分かる。
おそらく南さんは青を通り越した真っ白な表情で、頬を引き攣らせていることだろう。それはそうだ、啖呵をきって怪物を呼び寄せた俺の力がこんなものでは平静を保つ方が難しい。
先刻の自分をぶん殴って、最初から権能使って倒せと言ってやりたい気分だ。
最悪の黒歴史を一ページ作ってしまったじゃないか!
「は、ははっ、そんな訳ないじゃないですか。魅せプですよ魅せプ。ちなみにですが、南さんはルシファーって知ってます?」
「天使だという事は知っているが・・・・・・」
「あぁ、そうですか。ふむふむなるほど」
ここは異界、ルシファーの伝承もなにも存在しない場所。
周囲に存在する知能ある生物は南さんのみ。そして頼みの綱である南さんの知識は曖昧で、俺の能力を完全に具現化するには至っていない訳だ。
・・・・・・この能力、使えねえな。
これならまだ【魔王】の方が使い勝手がいいぞ。
「はぁ、武御雷」
溜息を吐き、【超越者】の能力を発動する。
俺の目の前に雷撃が落ち、一本の刀――千鳥が地面に突き刺さる。
千鳥の鞘を左手で掴み取ると、腰で止める。
「初めからこうしてればよかった。周囲には他に人の反応もないようだし、少し本気でやっても問題ないだろう」
眼前の建物が崩壊し、怪物の波が押し寄せる。
あまりの迫力、死がそこまで迫っているのを感じ取り、後方で南さんが尻餅をついているのが分かった。
(Bが三体にその他って感じか、まぁ、現実では早々見ない数だが、問題ない)
力の収束、千鳥の雷撃を限界まで留める。
重心を落とし、右手で柄を握ると、神の絶技でもって千鳥を抜き放つ。
「雷切」
視認すら許さぬ神速の一刀、斬撃が怪物達の体を通り過ぎる。
なおも走り続け、俺の元へと近づく怪物を無視して千鳥を納刀すると、俺は振り向き、南さんに尋ねた。
「それでどうします? 一緒に行きますか?」
「いやいや! 後ろ、危ないぞっ!」
怪物が俺の背後まで近づき、腕を振り上げているのを察知するが、もう終わっている戦いだ。振り返る必要はない。
(少し、綺麗に斬り過ぎたな)
怪物は攻撃の踏み込みで一度足を止める。
そして、上半身だけがあらぬ方向へと飛んで行った。
『ギュ・・・・・・?』
宙を舞う己が理解できていないのか、困惑の声を上げる怪物は訳が分からぬまま絶命した。
前列の停滞で、同じく足を止める者、回避しようと飛び上がる者。その全てが同じ末路を辿り、血の雨が降り注ぐ。
唖然とした表情で血を浴びる南さんに、もう一度尋ねる。
「俺と一緒に、行きますか?」
「あ、あぁ・・・・・・」
◇
「ソフィア・アンティラ、柳隼人の反応が途絶えました。どうやら件の存在と相対したようです」
「ふぇ~ 彼も頑張り屋さんだな~」
スマホのアラームが鳴りだし、隼人が静岡から姿を消しているのを確認したシャルティアが隣でうたた寝しそうになっているソフィアに話しかける。
「もしもはないと思いますが、貴女は彼の元へと向かって貰えますか、というより行きなさい」
「え、えと。シャルちゃんなにか怒ってる?」
シャルティアの凍てつくような眼光に、ソフィアが震えた声で尋ねる。
「どちらかといえば、怒っていますよ」
「ど、どうして?! ボクはなにもしていないのに!」
「そうですね、貴女はなにもしていない。なにも、ね」
学生の誘導、指示、その他全てをシャルティアが受け持ち実行している中、ソフィアは特に何かをする訳でもなくふらふらしていた。しいてしていた事とすれば、女生徒と恋話をしていたぐらいか。あまりの怠慢にシャルティアの怒りゲージも八割まで溜まっている。
「だってだれも怪我しないし~ ボクの役目も訪れないんだよ~」
「なので、暇なら柳隼人の元に行った方がいいでしょう」
「分かった、分かったから! そんな怖い目でボクを見ないで?!」
ひぃっ、と涙目を浮かべながらソフィアは隼人のGPSが途絶えた場所を尋ねる。
ある程度の場所を把握すると、白衣を脱ぎ鞄に詰めて肩にかける。シャルティアの目に一瞬枕が見えたが、今回は見なかったことにしようと、瞼を閉じた。
「それじゃぁ、行ってくるよ!」
「ええ、それでは」
「ふふっ、ボクね、帰ったらシャルちゃんと結婚するんだ!」
「なにを言ってるんですか貴女は」
「えっ知らないのシャルちゃん! これは死亡フラグっていうんだよ?」
得意気に言うソフィアだが、何故それを言う必要があるのかとシャルティアは呆れた表情で溜息を吐く。
(優秀ではあるのですが・・・・・・)
手を振りながら去るソフィアの背に、遅れて呟きを漏らした。
「全く、貴女が死ぬはずがないでしょう。本気さえ出せば私と並ぶ貴女が」
◇服部視点
霧の中に突入した特殊対策部隊、その中の服部・牙城チームは、周囲の状況を鬱陶し気に見回す。
「転移出来たのはいいっすけど、周囲が全部竹林で埋め尽くされてるんすけど!」
「・・・・・・困ったな。障害物が多いと狙撃しにくいんだが」
「どうします? とりあえず竹林をぱぱっと抜けちゃいましょうか」
「あぁ、そうしよう・・・・・・」
インカムで呼びかけても応答がなく、他の班がちゃんとこの場所に来れているかも分からない。誰かが目立つ大技でも放ってくれたら集合する事が出来るのに。
「ちなみに牙城先輩の調子はどうっすか?」
「悪くない・・・・・・場所がここでなければAクラス上位は一人でやれる」
「それは上々」
菊理ちゃんが言うにはSランクが四体いるという話だ。
隼人君が倒すにしても、それまでに私達が当たる可能性は十分ある。
(短刀新調してて正解っすね)
腰にさしている短刀に触れる。
Sランク級の怪物【トリタン】という外皮が異常に堅い怪物を素材として作られている。私の能力にも耐える事が出来るため、かなりの無理ができる貴重な逸品だ。と、内心で自画自賛していると、前方から気配を感じ取る。
「服部、お出ましだ」
「ありゃ、はやいっすね」
竹林の陰から三体の怪物が姿を現す。
Cランク級の怪物が二体、そして二体の後ろに控えているゴリラのような怪物はBランク級だ。霧に入って早々に怪物に遭遇するとは、やはりここの怪物の数は異常だ。
「速攻で終わらせるっす。牙城先輩はサポートお願いします」
「了解」
牙城先輩が後ろに下がるのを確認し、能力を発動する。
「加速」
自身を加速させ、緩やかに映る世界を高速で移動する。
C級二体に近づくと、まずはすれ違いざまに一体の足を斬り飛ばす。
『グァアアアアアア!!』
背を向けている私にもう一体のC級が、喰らおうと大口を開けるが、私に到達する前に牙城先輩の狙撃で頭部が破壊された。そのまま流れるように、足を失い態勢が崩れている怪物の首を撥ねる。
「あと一体」
最後の一体が宙を飛び上がると、私目掛けてその剛腕を振り下ろす。
「遅すぎっす」
瞬時に後方に飛び退き、余裕を持って回避する。
ただ、予想以上に怪物の持つ力が大きく、地面が大きく陥没した。
怪物が砂塵に紛れている中を、すかさず牙城先輩が狙撃する。
『ウォルァアアアアアア!!』
しかし、怪物の咆哮により弾丸は砕け散り、耳を塞ぎたくなる程の狂声に眉を寄せる。
「おかしいな・・・・・・Bランクに弾丸を止められるとは」
「う~ん、こいつにこんな強さは無かったはずっすけど」
不可解ではあるが、考えるのは後だ。手っ取り早く仕留めなければ他の怪物が集まってきかねない。
『ルァアアア!!』
叫びながら迫る怪物の剛腕を短剣で受け止める。
「華奢な私でもこのぐらいは――」
「服部ッ!!」
牙城先輩が叫ぶ前に体は動いていた。
怪物の剛腕を流し、地を蹴って空へと飛び上がる。
体を反転させながら下の怪物に目を戻すと、次の瞬間、怪物の体は爆散し、私の立っていた場所も多く屠れた。
一般人であれば風が通り過ぎたようにしか感じないだろうが、能力を使用している今はその存在をしっかりと視認できる。
地面に着地すると、素早く短剣を構える。
「ちょっと、ぶつかるのが早過ぎないっすかねぇ」
「・・・・・・どうする。ここは一度退くか」
「こいつ相手だと逃げるのも難しいっすよ」
眼前の怪物、私と同等の速度で動く怪物。
今は立ち止まり、こちらをじっと見ている。
その姿は鼬、ただし、その腕と脚からは鋭利な刃物が飛び出しており、先程の怪物の血が滴っている。
「・・・・・・Sランク級、【鎌鼬】か」
「牙城先輩はサポートをお願いするっす。おそらく他の怪物も集まってくると思うっすから、その掃討も」
「それはいいが、やれるのか」
「無茶はしないっすよ。どっかの絶対者にまた怒られちゃうっすから、ただ・・・・・・本気は出すので巻き込んじゃうかもしれないです」
「それは怖いな・・・・・・このフィールドは辛いが、少し距離を取るか」





