139話 青春がしたい!
新章開始!
誤字脱字報告感謝です!(*´▽`*)
平日の昼下がり、何もすることが無く暇な俺は、ソファーの上で横になり、テレビの青春ドラマを呆けながらただただ見つめる。暇すぎてyou〇uberになろうかとも思ったぐらいだ。
『瞬くん! 私はずっと、貴方の事が!』
『あぁ、俺もだ! ずっと、ずっとこの想いを秘めてきたんだ!』
ありきたりな告白シーン。
いつもであれば、“あぁ、はいはい。なんの面白味もねぇよ”と言いながらチャンネルを変えるのだが、どうしてかずっと見てしまう。
そしてふと気付く。
俺は求めているのではないかと。目の前で繰り広げられているような学園青春ラブコメを。
今の俺は絶対者という立場にある。
当然、学校などという場所で普通の生活を送れるはずもなく、国の要望に応え、日夜強力な怪物を屠るのが役目だ。
しかし、しかしだ。
決して、一時的であれば学園生活を送る事が不可能ではないのではないかと思う。
それに伴う障害も襲い掛かるのかもしれない。求めるような青春も存在しない事だってありうる。
・・・・・・だというのに、どうしてか今の俺は、その障害を自らの手で打ち砕いてでも『青春』が少しでも味わえるのなら学校に行きたいと思ってしまうのだ。
「・・・・・・学生時代に戻りたいという大人もこんな気持ちなのかもしれないな」
一つ違うとすれば、俺がまだ学校の籍が残っているという事。
その気になれば学校に行けるのだ。
「どうしたのです? そんな難しい顔をして」
石像ポーズでどうすべきか悩んでいると、掃除機を持ったシャルティアさんが声を掛けてくる。
「ちょっ! 掃除もなんて流石に悪いですよ! 俺がしますから!」
「そう言って何も出来ていないではないですか。この程度どうという事はありません。私が綺麗な場所でないと落ち着かないというだけですので」
シャルティアさんはかなりの綺麗好きだ。潔癖症とも言える程に。
周囲を見渡して汚い場所は俺には見つからないが、僅かな埃であろうともシャルティアさんは直ぐに見つけ出し、瞬間的に駆除する。私生活が大変そうだなとぼんやりと思った。
「それよりも何を考えているのか聞いているのです。かなり深く集中していたようなので」
「えっと、ちょっと学校に行きたいなぁと思いまして・・・・・・やっぱ駄目ですかね?」
「学校・・・・・・ですか」
顎に手をやり集中するシャルティアさん。
美女ってのはそんな動作だけでも絵になるもんなんだな。見ているだけで浄化されてしまいそうだ。
ここで“青春がしたいんです!”なんて言った時には俺の印象が更に悪化するだろう。
ははっ、終いには殺されてしまうかもしれないな!
「やっぱ忘れて――」
「いいでしょう。学校に行ってもいいのではないですか?」
「えっ?! いいんですか!」
「えぇ、別に場所が学校になったところで、貴方と行動を共にする方法は幾らでもありますから」
まじか! 絶対に無理だと思ったが、シャルティアさんに許されてしまった。
「・・・・・・そちらの方がユリウスも仕掛けやすいでしょうしね。いい加減、この用件を終わらせたいというのが本音です」
まっ、でしょうね。
いや、そんな事はどうでもいい!
これで学校に行けるぞ! となれば、いきなり行くのも迷惑だろうし、まずは学校に電話かけるか。
自室に戻り、学校の生徒手帳に記載されている番号を入力してすぐさま学校に電話を掛ける。
『はい、才媛高校です』
「こんにちは。一年の柳なのですが、担任の岡本先生はいらっしゃいますか?」
『・・・・・・』
おやっ? 返事が無い。
もしかして敬語間違えたか? くっ、もうすこし電話のマナーとやらを調べてから掛けるべきだったぜ。
「あのぉ・・・」
『ひゃっ?! ひゃいっ! す、少しお待ちください!』
電話の向こう側から凄い音が聞こえて来る。留守電にするのを忘れるぐらいテンパってるのか。機材とかにも当たりまくってるみたいだし大丈夫だろうか?
『ぜ、ぜぜぜ!』
『一体どうしましたか! もしかしてクレームですか? 分かりました、後は私が対処しますので・・・』
『ち、違っ! や、柳さんからの!』
『・・・・・・あぁ、成程。取り敢えず私が電話を受け取っておきます。岡本先生も出張でいらっしゃられないですしね』
(あれっ、この声って)
聞き覚えのある声に少し懐かしい気分になる。
今も元気そうで良かった。願わくば、少し眼光の威力が下がっている事を望む。
『はい、お電話変わりましたっと、柳 隼人でいいんだよな?』
「はい、お久しぶりです二階堂先生」
『うん、元気そうだな。なにか辛い事でもあったか? なにかあるなら相談に乗るぞ』
この人は本当に・・・お節介というか、誰にでも気持ちを向けられる人なんだな。
直接会っている訳でもないのに、自然に笑みが浮かぶ。
「いえいえ、大丈夫ですよ。最近じゃ、仲間と呼べる人達も出来ました」
『・・・・・・そうか、それが聞けただけでも良かった』
少し暗い声、後悔や自責を含んだ声になにかを言おうとして、止める。
「それよりも先生。一時的にですが、復学しようかと思っているのですがよろしいでしょうか?」
『・・・・・・は?』
「一時的に復学しようかと思っているのですが」
『いや、聞こえなかった訳ではないが・・・・・・本気か? そもそも何しに戻ってくるんだ?』
おいおい、二階堂先生ともあろうお方が狼狽えているぞ。どんな表情をされているのか是非とも間近で見たかった。
しかし、何しに戻ってくるのかと言われれば少々答えづらいな。
正直に“青春がしたいです!”と言っても“馬鹿もんが! 貴様のような不埒者は学校の門を通さん!”とか言われてしまいそうだ。
「実は・・・・・・俺にとって重大な用件があるのですよ」
『重大な用件、だと?』
「それもとびっきりの!」
『そうか・・・・・・しかし、私の経験上、貴様がそのような事を言う時は常にしょうもない事だった訳だが、本当に重大な用件なのか?』
ぬっ! 流石は二階堂先生、一筋縄ではいかない。
いつもいつも俺の面倒を見て下さっただけはある! 本当にすいません!
「えっ、えぇ、嘘ではありません! 俺は昔の俺ではないんですよ!」
『そうか、そうだな。すまない、貴様も成長する事を忘れていたよ』
先生の中で俺は、成長しない新人類と思われているらしい。
とはいえ、これで最終関門も突破だ。学校生活を満喫できる未来も遠くないぞ。
「本当に、俺を何だと思ってるんですか。また、よろしくお願いしますね!」
『ッ?! ・・・・・・そうか、改めてよろしくな、柳』
そうだ、もう一度。今度は前とは違う学校生活を送るんだ。
『それで? いつ復学するんだ。こちらも準備があるから日にちを教えて欲しい』
「そうですね。じゃあ」
「三日後にしなさい」
「うおぅッ?!」
突然背後から声が聞こえて飛び上がる。
顔を向けると、いつの間にか俺の部屋に入っていたシャルティアさんが静かに俺を見下ろしていた。
「ちょっ、気配消して近づかないで下さいよ!」
「これぐらいの気配に気づかないようではまだまだ虫からは卒業できませんよ?」
悲報、シャルティアさんの中では虫らしい。
誰かまともな人類として扱ってくれる人はいないものか・・・
『誰かいるのか?』
「あぁ、いえ、なんでもないです。三日後に学校に行くつもりですがどうでしょう?」
『ふむ、了解した。三日後だな? それならばこちらの調整も間に合うだろう。近々イベントもあるから楽しみにしておくといい』
「イベント、ですか?」
『あぁ、今度は嫌になる程楽しませてやる』
「それは・・・ふっ、楽しみにしておきます」
久しく味わっていなかった、恐怖とも戦闘の高揚とも違う感情が、密かに身の内に渦巻いているのを感じる。
青春が味わえずとも、面白い学校生活を体験できるのかもしれない。
緊急事態、書籍作業がまだ完了していない!
最悪今週の投稿が無くなるかもしれません(´;ω;`)





