135話 海の捜索
あけましておめでとうございます(≧▽≦)
今年も執筆活動頑張ります!
【孤高】アンネ・クランツ視点
地平線まで続く青い海。
空を舞う海鳥たち。太陽の光が眩しく、手で遮る。
そして・・・
「ああ、アンネちゃんは本当に可愛いなあ~ ガラスの箱に閉じ込めたくなる」
「うぜえ、離れろよ二位」
クソウザイ序列二位。
後ろから抱き着きながら頬ずりしてくる。
何でこいつは船の上でも白衣を着てるんだ?
「つうか今回は私だけで十分だ。あんたは帰って研究でもしてたらどうだ?」
「魅力的な提案だけれど、私も一度SSの相手はしてみたかったから今回は遠慮するよ。それに、アンネちゃんの陶器のように美しい肌に傷がつくかもしれないと思うと研究に集中できないしね」
「意味分かんねえよ」
面倒な奴とペアを組まされたものだ。何を言ってるのか理解が出来ない。天才という奴等はどいつもこいつも頭の螺子がぶっ飛んでんのか?
これなら、新入りの世話の方が幾分か楽だったかもしれないな。
「ん?」
ふと、私と二位のスマホが振動する。
取り出して内容を確認する。
「へえ、もうあの三人組は【黒騎士】とぶつかったみたいだね。しかし、滅ぼすには至っていないと。ふふっ、これは【レヴィアタン】にも期待だね」
スマホに送られてきた情報には、三人と【黒騎士】の戦闘について記されていた。
テオが居て無理だったのなら、純粋な方法では倒せないという事だろう。
そっちの皺寄せもくるかもしれないと思うと、一気にやる気が無くなってくる。まあ、元よりないからあんまし変わらないが。
SSランク級の怪物【レヴィアタン】を探しに海に出て数日。
未だ敵の姿は見当たらない。クソでかいはずなのだが、海の深部に潜んでいる為見つけることが出来ないのだ。
海の面積は陸地の2.42倍程、ざっと3億7千万キロ平方メートルある訳だが、その海表に姿を現さない為、人工衛星がまるで役に立たず、現状は二位の能力で海の深部を捜索している。
その気になれば世界中の海をひっくり返して即座に見つける事が出来るのだが、その後の被害が甚大過ぎる為に実行できずにいるのだ。
「あぁ、怠い」
力を抑えて生活するというのは、私にとってかなりのストレスだ。
生まれてこの方、本気を出したためしがない。どうせ今回の【レヴィアタン】でも本気を出す事はないだろうと思う。Sとは隔絶しているからと言っても、先のテュポーンの映像を見る限り、私の敵ではない。
「はぁ・・・」
絶対者になったら楽が出来るかもと思ったが失敗だったかもしれない。
敵は強くもない癖に、出会うまでの過程が色々と面倒くさいし。緊急の事態に陥ったら、わざわざ事態を収束させなければならない。
もういっその事、戦闘関連の仕事からきっぱりと足を洗ってお花屋さんでも開こうかな。
因みに働かないという選択肢はない。ソフィアみたいになったら女子として終わりだと思っている。
「ため息をついていたら幸せが逃げてしまうよ?」
「この世界に幸せなんてあっても無意味だろ。というよりあった方が残酷だ、いつ崩壊してもおかしくねえからな」
「だからこそ幸せを大切に出来ると思うのだけれどね」
感性の違いだな。この話は無意味だ。
私がこの思いを曲げる事はまずないから平行線しかない。
「アンネちゃんは誰かを好きになった事はあるかな?」
「いや、なんでそんな話になるんだよ」
「愛というのは人生において大事なファクターだよ。恥ずかしながら私も学生の頃は何度も恋をしたものさ~」
船の上でくるくる回りながら昔に思いを馳せる二十代後半。
見ているだけで恥ずかしくなる。
「は~ん、どんな奴が好きだったんだ」
「そうだねえ・・・ちょっと多過ぎて思い出せないな。合計で三十人ぐらい男子生徒に思いを寄せていたのだけれど」
「ただの痴女じゃねえか」
「痴女とは失敬な! ちゃんと純粋な恋心だったよ!」
「すまん、化け物の間違いだった」
今時どんな色欲魔でも学生時代に三十人はありえねえだろ。
いや、絶対者には一人リアルハーレム野郎がいるからあいつだけは違うのかもな。今度あったら一発ぶん殴ってやろうか。
「うぅ、アンネちゃんが苛める。はぁ、まあ兎に角だよ。私が言いたい事は、人は恋をすると人生が薔薇色に変わるのさ。今のアンネちゃんの人生は灰色なんだよ」
「人の人生の色を勝手に決めるな。恋なんかに興味はねえよ」
「今話題のアイドルなんてどうかな? 結構可愛い子もいるし、アンネちゃんを大切にしてくれるかもよ」
「話聞けよ! ったく・・・一般人が絶対者と一緒に居られるわけ無いだろ。身近に核爆弾があるようなもんだぞ」
絶対者の恋人なんかになった暁には、世界中の組織から狙われる羽目になりかねない。
いつの時代でも戦力の違いが分からない馬鹿は存在するのだから。
・・・それに、そんな事情を抜きにしても、私のような女を好きになる男なんか存在しないだろう。人に優しく出来ず当たってばかりの女なんて。私が男だったら絶対に嫌だ。
「じゃあ、テオはどうかな? 相手が絶対者なら問題ないと思うよ」
「性格が合わない。あいつはきっちりし過ぎて息が詰まりそうだ」
「それじゃあ、レオンはまあ無いとして、残るは新人の子だけど」
記憶に残る五位の姿を思い出す。
初めて見た感想としては、“こいつ弱そうだな”という感じだった。
あまり戦いに執着してないというかなんというか。高級ステーキがあるのに、安い牛丼を頼みそうな平凡な奴だと思った。
「無いな。私に付いてこられるとは思えねえ」
「えぇ、文句ばっかりじゃないか。それじゃあもう私しか残ってないよ!」
「いや、何で二位になるんだよっ?!」
「だってアンネちゃんに勝てるのって私とアランさんぐらいじゃん? ふぅ~仕方ないなぁ、お姉さんが百合に目覚めてあげるしかないか」
「いらないお節介だっての! ちょっ近寄ってくんな!」
なんでこんな奴が力を持ってるんだ! 采配ミスだろ!初めてをこんな変態に捧げるものか!
迫り来る痴女神を必死で、両手で押しのける。
頬に唇が振れそうになった時、二位の表情が変わり、通常の状態に戻った。
「あっ、見つけた。私の能力で作った偵察機が破壊されたね」
「見つけたって、【レヴィアタン】か?」
「間違いないね。場所は大西洋の北側、薄っすらと見えた影だけでかなりの大きさだね。全長はテュポーンを超えるだろう。逃げられる前に移動しようか」
二位に意志に従うように船が進路を変えて移動を開始する。
勿論この船も二位の能力で作り出したものだ。その上、数万の偵察機を飛ばし、幾つかの司令塔を作った後、その全ての情報を処理しながら普通に喋っているのだからこの女も十分にイカレている。
「それにしても間が悪い。後少しでアンネちゃんの柔肌にキスマークを作れたのに」
「マジでしばくぞ」
今回ばかりは【レヴィアタン】に感謝だな。危うくこの痴女に襲われるところだった。
「じゃあ行こうかアンネちゃん! 目指せSS討伐だ!」
「分かってるっての」
――礼として、永久の眠りを贈ろう。





