124話 内緒の理由
ぬおぉおお投稿!(*´▽`*)
「・・・んんっ、あれ・・・? ああ、私寝ちゃってたんすね」
目を擦り、隣の少女――蒼ちゃんに目を移すと、その可愛らしい顔に手を触れて、思わず笑みが漏れる。
「ふふっ、食べちゃいたいぐらい可愛らしいっすね」
さらさらの髪に餅のような肌。そしてなによりも人を励ます快活な性格が周囲を笑顔にさせる。
こんな子が妹なら、隼人君が過保護になるのも分かるかもしれない。
(あれっ、そう言えば隼人君も後から来るって言ってた気が・・・)
そこで、ふと自分たちが日陰にいる事に気付く。
この草原ルームに日を遮るものなんてあったかなと思いながら、上を見上げると、そこには目を奪われる程美しい純白の翼があった。
「うわ~」
感嘆の台詞が漏れる。
真珠や数億のダイヤも見てきた自分だが、そんなものとは比べものにならない、幻想的で、何処か魅了される美しさを持ったものだった。
翼の先、その付け根を見やる。
薄々分かってはいたが、やはりそこには隼人君がいた。
背中から片翼を生やしている姿は、絵画の一枚に収められていてもなんの不思議もないように思える。彼はいつから天使になってしまったのか、もうなんでもアリだ。
寝ている私達に日が当たらないよう翼で遮り、その傍に座りながら、目を瞑って器用に寝ている。
気付けば、私は音を立てないよう息を潜め、そっと彼に近づいていた。
触ってしまえばすぐに気付いて起きてしまいそうなので、触れないようギリギリで、しかし、最も近い位置に、寄り添うようにして隣に腰を下ろす。
「ふふっ」
静かな寝息を立てているその姿からは、とても絶対者のような強者だとは思えない。
だけど、私は知っている。
彼が誰よりも強い事を、救いようのないお人好しな事を、その背中が、どれだけ他者に希望をもたらすのかを・・・
そんな彼に私がどれだけ救われた事か。
隼人君をこの世界に巻き込んでしまったことに、以前は罪悪感を感じていた。
これ以上、仲間を失いたくないと思い、強引に彼を特殊対策部隊に引き込んだが、冷静になると、私事で他者の命をとんでもない危険に晒している事に遅れて気付いた。自分がどれだけ焦っていたかが今になって分かる。
彼だけは決して死なせないと誓った。
でも・・・そう誓った矢先、私の力だけではどうにもならない相手とぶつかり、絶望の淵に立たされる。
(本当にあの時はもう駄目だと思ったっす)
しかしそんな絶望を、彼は抗いようもない力で以て強引に捻じ伏せた。
取るに足らぬと、この程度かと、尊大に、傲慢に見下ろしながら。
そしてあまつさえ、自分を死地に巻き込んだ私にこう言ってのけた。
“なら、服部さんが生き残る覚悟を持てるまで、生きたいと強く思える理由が見つかるまで、俺があなたを守ります”と。
・・・分かっている。この結果は偶然で、本来ならば、彼が私と同等の力しか持っていないのであれば、私共々死んでいたのだ。偶々、結果的に生き残っただけに過ぎない。
だから、彼の言葉に安心してはいけない。自分を許してはいけないと・・・分かってはいる・・・のだ。
ただ、それでもやはり、私は彼の言葉に救われたのだろう。
ふと気付けば、日常の中で昔のような、心からの笑みが零れるようになったのだから。
「・・・運命なんて信じてはいなかったっすけど、この出会いだけは、運命だと言っても間違いではないかもっすね」
もう少しだけ隼人君に近づいてみる。
それでも彼はまだ目を覚まさない。この距離が、私に許してくれている心の距離なのかもしれないと思うと、自然と口が緩んでしまう。
(君のおかげで、生きたいと思える理由が見つかったっす。内容は内緒っすけどね・・・・・・ありがとね、私のヒーロー君)
そのまま数十秒間隣で彼を見続けていると、ふと、私の中の悪魔が「今ならなにしてもいいんじゃないっすか」と変な事を囁く。
「た、確かに・・・これはちょっとくらいいたずらしてもバレないっす、よね?」
何故か顔が熱くなるが、気にせずに一歩近づいて、隼人君の耳たぶをフニフニと触る。
そう、これはいたずらである。断じてそれを口実にして好き勝手している訳ではない。それはそうと、この程度ではいたずらにならないのではと考える。
「そ、そうっすよね。いたずらって言ったら、もっと凄い事を」
顔が熱い。頭から湯気が出そうだ。
・・・ほっぺに唇を触れるぐらいがいたずらとしてはいいのかもしれない。
いや、少しはしたないだろうか? やり過ぎて嫌われるのも困ってしまう。
むぅ~ 一体どうしたら・・・
パシャッ
一人悩んでいると、背後からスマホのシャッター音が聞こえて来た。
ビクンッと肩を震わせ、嫌な予感をひしひしと感じながら、壊れた機械のような動きで後ろを振り返る。
「あっ、こっちの事は気にしなくていいから続けて~」
「若いっていいわね~」
そこには、なにやら嫌らしい笑みを浮かべている麗華先輩と涼子先輩の姿があった。
麗華先輩は自分のスマホをこちらに向け、続きをどうぞと言ってくる。赤いランプが光っているので、おそらく録画しているのだろう。
涼子先輩は特になにをしている訳でもないけれど、微笑ましいものでも見るような目でみてくるのが少し恥ずかしい。
「よしっ、これを後で隼人っちにプレゼントしよう~」
数秒間フリーズして、麗華先輩の言葉の意味を考える。
そして、その言葉が死刑宣告だという事をようやく理解した。
麗華先輩はとんでもない悪魔だった。
◇
「んぁ・・・?」
あれ、眠っていたか?
お昼寝組が余りにも気持ちよく眠っていた為、どうやら俺も釣られてしまったようだ。
誰かの声で目が覚めた気がして、首を回し周囲に目を移す。
「け、消してくださいっす!」
「いや~ これは永久保存ですな~」
すぐにその誰かは見つかった。
草原中を走り周っている服部さんと西連寺さんの姿を視界に捉える。
半泣きの服部さんが西連寺さんを追いかけているというかなりレアな場面に出くわしてしまった。うむ、泣きそうな顔もグッドです。まあ、声には出しませんけど、嫌われたくないし。
「おはよう。よく眠っていたみたいね」
声の方向に顔を移すと、そこには吉良坂さんの姿があった。
なにやらにこにこ、というよりニヤニヤとしている。いい事でもあったようだ。
「昼寝なんて久しぶりですよ」
「ふふっ、偶には休んでもいいのよ。その方が私達は安心だわ」
「・・・まあ、一か月程はのんびりする予定ですよ」
軽く体を解しながら立ち上がる。
「それにしても面白い事になってるわね~ 人間辞めちゃったの?」と言われ、ようやく翼を出し続けている事に気付いた。
「おっと」
特殊対策部隊の一員だからいいものの、少々迂闊だった。反省だ。
「それと、これが統括支部から届いていたわよ。なにやら緊急の用件だとか」
渡される資料。
内容はおそらく俺が連絡した事についてだろうが、予想より遥かに早い対応だな。一週間はかかると思っていたが。
ファイルの中から、重要な部分だけにさっと目を通す。
内容はやはり予想通りで、絶対者同士での会議を開くとの事。何人ぐらいが集まるかなあと思っていると、赤字で全員強制参加と書かれているのが見えた。俺が行くのは当然として、もしかして全員が参加するのだろうか?
場所は記載されておらず、当日は転移の能力者が直々に予定地に連れて行くらしい。
「は?」
そして、会議の予定日は――十月の三十日。
つまり、明日だった。
この章は服部がよく出ます(*´▽`*)





