表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々の権能を操りし者 ~能力数値『0』で蔑まれている俺だが、実は世界最強の一角~  作者:
第七章 イギリス旅行編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/237

107話 英雄神

 溺れそうになる。

 力が溢れて止まない。

 なんでも出来てしまいそうな全能感が心地よく、それでいて気持ち悪い。

 この不安定な状態が、俺がまだ力を扱いきれていないというなによりの証拠だろう。


「こないのか?」


 明らかに様子が変わった俺を警戒して二体の怪物はその場を動かない。


 左腕を失っている死に体だというのに、一挙一動が致命的なミスにつながると本能が警鐘を鳴らし続けているのだ。


「ならば、こちらからいこう」


 左足を一歩、踏み出す。


 ピシッ! と硝子に罅が入ったような音が響き、大地が、空間が、視界内の全ての地が割れる。一瞬の間を置いて、亀裂からは火山が噴火するが如く水が溢れ出した。水は荒れ狂う波へと変わり、たった数秒で大陸の北部全てを沈める。


「また厄介な能力をッ!」


 俺の権能を理解しているのか、そう吐き捨てるように言ったテュポーンの形姿が変わる。

 鱗全てが燃え盛り、太陽かと錯覚させるほどの熱量が肌を刺す。俺の生み出した波が奴の周囲で蒸発している。


(そう易々と蒸発するようなものではないのだが・・・)


「まあいい、蒸発しただけならさして問題ではない」


 次に動き出したのは六本腕の怪物だ。

 俺と同じように波の上に立っている状態から、その姿を消し――



「へえ、そんな顔もするんだな」


 四つの赤い瞳が驚愕に開かれる。

 今の己の状況に理解が追い付いていないのだろう。なにせ、超高速で移動している最中であるはずだというのに、己の首を、敵である俺が右手で掴み宙に掲げているのだから。


 そのまま掴んだ首を引き寄せ、腹部目掛け膝蹴りを叩き込む。

 一連の流れに反応すら出来なかった六本腕は、弾丸の如く吹き飛んでいく。大きく距離が離れた怪物を視界に入れながら右手を軽く動かす。


 すると、可視化できる程の強風が吹き飛ぶ怪物に追撃を仕掛け、出来の悪い人形のように宙で踊り狂う。


 マルドゥークの持つ権能の一つ、7つの悪風だ。

 それぞれの風に特性があり、この権能一つで時間稼ぎだけなら目の前の二体を相手どれる程の威力を誇る。


 しかし、マルドゥークの最大の武器は悪風ではない。


「あまり調子に乗るなッ!」


 テュポーンが体をくねらせながら直進し、燃え盛る腕を振り上げて、俺を圧し潰さんと振り下ろす。その迫力は、相手が神話上の生物である事を再度実感させるものだった。

 直撃をくらえば如何に俺といえども無傷とはいかない。

 半端な防御では意味を成さない。

 ならば避けるか? 


「はっ!」


 一瞬過った思考を鼻で笑う。

 避ける必要など何処にもない。なにせ今、()()()()()()()()()()()()()なのだから。


「ッが?!」


 吹き飛んだ。

 俺ではなくテュポーンがだ。あの巨体が文字通り吹き飛び宙を浮いている。


 その傍には大陸北部を満たした洪水が自然ではありえない動きをして、荒れ狂い、悪い冗談のような絶望を見るものすべてに思わせる。


 そう、マルドゥークの最大の武器はこの洪水である。


 権能を制御しきれていない俺でも現状で大陸一つは沈ませる事が出来るほどにはこの能力は強大な力を誇る。


 簡単な話だ、質量には質量で対抗すればいい。

 幸いこの場には俺が生成した洪水の他にすぐ傍には海もある。武器は有り余っている。


 降下するテュポーンに右手を向け、開いていた手を握り潰す。

 すると、熱で蒸発したはずの水が集まりだし、千を超える剣となる。それらは宙で回転すると切先をテュポーンに向け、一斉に降りかかる。


「小賢しいわッ!」


 テュポーンの顎に熱が集まりだす。

 赤、ではなく黒い炎だ。地獄の炎と言ってもいいかもしれない。


 カッ! とその顎を開き、漆黒の炎が吐き出される。

 剣との激突、余波が伝播し舞降る雨が一瞬止まり、数秒後、滝のように地を叩きつけた。


「敵ながらふざけた火力だ、一滴すら残らないか」


 蒸発、ではなく完全な消滅。

 あの炎を連発出来るとは思わないが、警戒はしておいた方が良さそうだ。


「だが、洪水での攻撃は有効と見た。ならば俺は貴様を相手どろう」


 眼前に降り立つ六本腕の怪物、どうやら風を切り抜ける事が出来たようだ。そしていつの間にか二本の腕が元に戻っている。体も最初と比べ少し大きくなっているように見える。


「成長したか・・・」


 洪水の上を波紋を作りながら歩き六本腕の怪物に近づく。


「洪水よ、あそこの蛇を喰らえ」


 俺の言葉に従い、洪水が形を変え、テュポーンへと躍りかかる。ただ、一部はこの場に残って俺の支援に回ろうとしているようだ。

 今からはテュポーンに思考を裂く余裕はない。

 足止めだけならば二体を相手どれるが、殺すつもりなら別だ。


 歩みを止める。

 お互いの距離は約十メートル。瞬き一つで詰められる距離だ。


 集中力を限界まで高める。

 雨が緩やかになり、雑音が消える。


 動き出しは同時、怪物の刃が頬を斬りつけ血が滲み出る。

 しかし、俺はそんな傷に気に留めず一歩深く足を踏み入れ怪物の顔を鷲掴みにした。


「塵も残さず切り刻め、災禍(ディザスター)()暴風(バイオレンス)


 逃げ場のない破壊の嵐が怪物諸共空間を蹂躙し、吹き飛ばす。

 そして、禍々しいオーラが怪物から出たかと思うと暴風が十字に切り裂かれた。


「面白い」


 眼前で獣のように態勢を低く取り、悍ましいまでのオーラを放っている怪物にそう発する。


「グッ・・・ガッ・・・ガァアアア!!!」


 今まで発しなかった声を、雄叫びを上げ、脚を曲げたかと思うと一直線に斬りかかってくる。

 とはいえ、そんな暴挙を許す程洪水は甘いものではない。


「この場で好き勝手な動きが出来ると思うか?」


 振り上げた怪物の腕を水の帯が掴む。

 次いで、首を絞め上げ、胴を拘束したかと思うとハンマー投げのように怪物の体を振り回し大地へと叩きつけた。


 溜まらず怪物は帯を呪具で切り裂くと、宙へと浮遊する。

 そんな怪物を追うように洪水から帯が飛び出し、怪物は呪具でもって応戦する。


水牢(シルプリズン)


 手を握り、飛散した水を怪物を包むように収束させる。

 怪物は必死に呪具を振り回すが、この技には物理的な攻撃で突破する事は不可能である。

 だが、呪具の一つが鈍く光ったかと思うと、水牢が石化を始めた。石化した部分を破壊すると無理矢理に水牢を突破する。


「成程、不定形のものを無理矢理に定形のものに変える事で脱出できるのか」


 いい勉強になった。次があれば動ける余地を消しておこう。


 帯を回避しながら怪物は高速で移動し俺に斬りかかる。

 その四つの目で俺を見つめ、秒単位で成長を続ける。洗練されていくその動きは、武御雷に届きうるのではないかと思わせた。


 そして、片手での応戦がきつくなったと感じた時、怪物の姿が霧の様に消える。

 次の瞬間、俺の腹部を貫くように二本の剣が飛び出し、鮮血を撒き散らす。


 己の腹部から突き出た剣を見ながら、アランさんほどの人が傷を負った理由に納得する。

 普通の転移能力であれば大なり小なり転移地点に兆候が見られるが、今の移動にはその兆候が全く見られなかった。防ぐ術としてはレオンさんの【先見】か金剛さんのような障壁、もしくは実戦経験で培った予測ぐらいだろう。

 水牢の突破で使わず、あえてこのタイミングで使った事に賞賛を送ろう。


「だが、呪術神相手に呪具で攻撃するか、愚者よ」


 パチンッと軽く右手の指を合わせて弾く。

 呪詛により進行していた石化が止まり、二本の呪具が崩壊する。反対に怪物の左半身全てが石化し、地に膝を付く。


“呪詛返し”は呪詛をかけた者に対し数倍にも増した威力で返す術。しかも言う程簡単なものでは決してない。返す本人も命懸けの行為だが、英雄神、いや呪術神であれば息をするように成功させる。


 マルドゥークの神性は一つではない。

 かの英雄は、木星の守護神であり、農耕神であり、呪術神であり、そして太陽神であった。

 その多面的な神格がマルドゥークをあらゆる状況で最強の存在へと導く。


「来い、マルン」


 右手に鍬に似た武器が現れる。

 俺は振り返ると、マルンを上段に構える。


「刈り取れ」


 俺の声に呼応するようにマルンが発光する。

 空間が黄金に染まり、飛び散る白銀の粒が空間を焼く。


 暴発しそうなマルンを右手で強く握り直すと、怪物の右肩から斜めに振り下ろす。

 感触はなかった。しかし、振るった痕跡に目を向けると空間ごと怪物の体が両断されていた。しかもその空間の修復に巻き込まれ、怪物が完全に消滅するのだった。


「・・・俺の仕事は終わりだ」


 手が震え、マルンを落としてしまう。

 やはりまだ俺にはこの力を扱いきれない。この反動が少なければいいが。


「選定者ぁああああ!!!」


 地響きを起こす程の憤怒の叫びを漏らすテュポーンに顔を移す。


 天を衝く怒りで限界を超えているのか、信じられない事に空を焦がす限りの火力で洪水を押し返している。


 殺意に満ちた眼光に貫かれながら、俺はどこか他人事のように口角を上げると、テュポーンの上空へと指を指す。


「言ったはずだぞ、俺の仕事は終わったと」


「・・・ッ?!」


 はッとしたようにテュポーンが振り返り上空を見上げる。

 そこには天を覆いつくす暗雲と走る雷鳴、そして、


「ふはははッ! これだけの時間があれば相手が何者であれ確殺じゃ!」


 宙で腕を組み豪快に笑う一位の姿があった。

 彼が両腕を高く掲げると、テュポーンの体を覆う巨大な魔方陣が浮かび上がる。


「神話に還るがよい。終焉の極光(ジ・エンド)ッ!」


 あまりの閃光に思わず目を瞑る。

 洪水と風で身を防ぐが、今にも瓦解してしまいそうだ。


「何故ッ、何故だッ! 貴様等のような虫けらが我の力を上回るなど!」


 雷光に焼かれながら、テュポーンが叫ぶ。


「忌々しい神共め・・・貴様等の思い通りには決してならぬ。いずれ・・・」


 言葉を言い終わる事なく、テュポーンの体が消し炭となる。

 残滓がキラキラと降り注ぎ、暗雲から漏れる光が幻想的な光景を生み出す。


 ようやく戦闘が終わったのだと実感すると、途端に体が重くなり地面に座り込む。


「蒼、皆・・・」


 最後に家族と仲間の無事を祈り、俺の意識は暗転した。


これにて七章は終演。

明日は人物紹介と権能一覧を投稿した後、余力が残っていれば八章も投稿します(*´▽`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉都市の雑草
連載開始です(*´▽`*)
神々の権能を操りし者2
― 新着の感想 ―
神名は神性に繋がる。 マルドゥークは50もの神名を持つ……つまり本気でマルドゥークが力出したらクトゥルフ神話クラスのバケモンか、ガチのチートクラスの神性持ちの神様か、グングニールのような持つ者に必ず勝…
[気になる点] マルドゥークの神話として世界創生があるらしいんですがそれも洪水とかに関係します? [一言] マルドゥーク強え
[一言] 共闘とはいえこの戦果で順位がどこまであがるのか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ