表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/100

第99話

清水-


総司と可憐は、縁側で体を寄せ月を見上げていた。


総司「…考えてみれば、こうして一緒に月を見るのは初めてでしたね…」


可憐は「ええ」と答えた。

二人に涙はなかった。二人きりの時間を涙で終えたくなかったのである。

二人は目が合うと、その度に唇を重ねた。重ねては強く抱き合った。少しでもお互いのぬくもりを感じていたかった。


昼間は、いつも待ち合わせた川辺から清水まで歩いた。時間のことを心配することもない。二人は思い出話にふけりながら、足が棒のようになるまで歩き回った。


総司「…紅葉が見られなかったのが残念でしたね…」


総司が、可憐の背中からだきすくめるようにして呟いた。可憐は頷いて、目を閉じた。


総司「疲れた…?」


可憐は首を振った。そして総司の腕を緩めると、総司に向き直り、胸へ頬を寄せた。


可憐「中條さんや礼庵先生に、あれだけご迷惑をおかけしながら、お礼も言えませんでしたわ。」


総司は微笑んで、その体を抱いた。


総司「私から伝えておきます。きっと二人もわかってくれていると思いますよ。」


可憐は、総司の胸の中で頷いた。


可憐「…中條さま…総司さまからの文を届けに来てくださったとき、泣いておられたんです…。お顔を見せないようにして走っていってしまわれて…。最後にあの方の笑顔を見られなかったのが心残りですわ。」

総司「また、町中で会うこともあるでしょう。その時に声をかけてやってください。」

可憐「総司さまとお会いしたときは…?」


総司は、どきりとした表情で可憐を見た。可憐も、じっと見つめ返している。


総司「笑顔を見せてください。それだけでいい…。私も返すから…」


可憐は微笑んで「はい」と答えた。


総司「愛しています。今までも、そしてこれからもずっと…」


可憐は「私も」と答えた。総司は、想い人の体を強く抱きしめた。


総司「体は離れても…心はこうして、いつも寄り添っていることを忘れないでいてください。」


可憐は頷いて、総司を見上げた。総司は、すかさずその唇を塞ぐ。

その時月が翳った。総司は唇を離して、ふと空を見上げた。


総司「…もう寝ましょう。明日は早く起きて散歩にいかなきゃ。」


可憐が頷いた。二人はお互いを支えあうようにして立ち上がり、床のひかれた部屋へ入った。

二人はためらわず同じ床へと体を入れる。そしてじっと抱き合ったまま見つめあっていた。


総司「おやすみ…」


総司がそう言って唇を重ねた。可憐が総司の体に手を回した。二人はそのままずっと唇を重ね続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ