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第94話

総司に呼ばれた中條が目を見開いて、総司を見つめていた。


中條「…うそ…でしょう?」


総司は黙って中條を見つめている。


中條「…うそだ…可憐様と別れるなんて…うそでしょう?」


総司は黙って首を振った。


中條「何故です!?…先生の唯一の支えではないですか!」

総司「…私にとっては支えだが…あの人にはいつか重荷になる。」

中條「そんなことはありません!可憐様にとっても支えになっているはずです!」

総司「……」

中條「可憐様は、沖田先生の務めのこともお体のこともご存知の上で、先生のそばにおられたのです。…だから…そんな理由で別れる必要はないんです!」

総司「中條君、どうか私の言うとおりにしてほしい。」

中條「いやです!…僕は、こんな文を持っていきたくありません!」

総司「中條君!!」


総司がいつになく、大声を出して中條を睨みつけた。

中條は驚いて口をつぐんだ。


総司「…私が…一番辛いということを、わかってくれ…」


中條ははっとした表情になった。


総司「…あの人を失ったら自分でもどうなるかわからない…。でも、こうすることが、一番…」


総司はそこまで言うと、くずれるように畳に片腕をついた。涙が落ちて、畳に染みていく。


中條「…先生…!」


中條が思わず、総司の体を支えた。


中條「…先生…」


総司は必死に嗚咽をこらえながら泣いている。言葉を出すこともできなかった。


中條「…わかりました…僕…この文を可憐様にお届けします。」


中條は涙をこらえながら言った。何よりも辛い役目だった。


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