表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/100

第9話

祇園 料亭天見屋の奥の廊下-


総司は、舞妓の手をひっぱって奥へと進んでいく男の後ろをついていった。


男「女将!女将はどこだ!?誰でもいい!部屋を用意しろ!」


男はそう叫びちらしながら、舞妓をひきずるようにして奥へと歩いていく。奥には個室がある。


男「ちっ…。いったい女将はどこへ行ったんだ。」


そう言いながら、男が振り返りざまに、舞妓の体を自分の方へと力ずくて引き寄せた時、後ろをついてきていた総司と目が合った。


男「なんだ?邪魔するとたたっきるぞ。」


総司はそれを聞いて、初めて男の腰元を見た。刀を2本さしている。身なりもよかった。


総司「これは失礼を。厠を探しておりまして。」

男「厠ぁ?厠はあっちだぞ。」


男が総司の後ろを指差した。


総司「そうでしたか。でも、この料亭は広いから、あっちと言われましても。…できればその舞妓さんをお借りできますか?」

男「なんだとぉっ!?人を馬鹿にするのもいいかげんにしろ!!」

総司「どうも女将さんもいないようだし、他に案内してくれる人もいないんでね。」


男は顔を赤くし、刀を抜こうと舞妓から手を離したので、それを見た総司は舞妓の手を取った。舞妓は思わず総司の手にすがりつくように、男から離れ、総司の背中に回った。

総司は刀を抜いた男を前に平然としていった。


総司「いい大人が穏やかではありませんね。こんなところで刀など抜いて、恥ずかしくないんですか?」

男「…!!」


男はあちこちの部屋の障子の間から、こちらを見られているのに気づき、刀を振り上げたままとまどった。

しかし、ここで振り上げた刀をしまうこともできないらしい。しばらくぶるぶると刀を振り上げたまま、動かなかった。

その時「何してるんどすっ!?」という年配の女性の声が響いた。


天見屋の女将が、こちらに駆け寄って来ている。

総司は相手を見据えながら、心の中で安堵していた。相手の目にも、少し安堵の色が見えた。


女将「そこのお侍はん、刀を納めておくれやす!!うちの店で血ぃ流したりしたら、今後一切おたくはんの宴会はお断りどすえ!!」


男は刀をゆっくり下ろして言った。


男「女将、さっきから呼んでいたのに何をしていたんだ!女将がいないからこんなことになったんだぞ!」

女将「ええ男はんが口の減らん人どすな!どんな理由か知りまへんけど、二度とこの店ん中で刀を振り回したりせんといておくれやす!!今度騒ぎ起こしたら、そちらのえらいはんへ言いつけますえ!」

男「わかった!…わかったよ…。」


男はそう言って刀をしまい、総司を見据えた。

総司も震えている舞妓を背に、黙って見返している。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ