第74話
四条-
冷たく激しい雨が、総司をはじめ一番隊士達を容赦なく打っていた。
討幕派の会合が、四条の旅籠であるという情報を得、襲撃したのだった。
会合はさほど大人数ではなかったので、襲撃は成功した。
ただ、討幕派の中に数人の死者が、一番隊に数人の重軽傷者が出た。
総司は傍にいる中條に言った。
総司「東医師を屯所まで連れて来てください。重傷者の治療をして欲しいと…」
中條は「承知しました」と答えたが、少し眉を寄せていった。
中條「先生、大丈夫ですか?」
総司「え?何が?」
中條「…大丈夫ならいいんですが…」
総司は微笑んで見せた。
総司「…心配しないでいいよ。」
中條は不安を隠せない表情のままだったが「行って参ります」といって、その場を去っていった。
新選組屯所-
屯所へ戻ってきた総司は、すぐに怪我人を処置室へ連れて行かせ、後を伍長に任せた。
そして残りの隊士達にねぎらいの言葉をかけ、すぐに着替えるように指示すると、自分もすぐに部屋へと戻った。
そして部屋に入ったとたん、その場にくずれるように両手をついた。
総司(…体が熱い…)
このところ、微熱が続いていたが、熱に慣れてきていた総司は構わず務めを果たしていた。
しかし冷たい雨に濡れたことで、熱があがったようである。
総司はとりあえず、濡れた隊服を脱ぐと、その場に体を横たえた。
総司(濡れたままじゃ…よけいにひどくなるな…)
それをわかっているのだが、体が動かす気力がない。
そのうちに咳も出始めた。
咳き込むたびに、頭の芯が強く痛んだ。
総司(中條君が戻ってくるまでに着替えて咳を治めなくちゃ…またよけいな心配をかけてしまうな…)
中條は必ず総司の隊服を引き取りに来る。その時には、できるだけ平静にしておかないと、また事が大げさになってしまう。
そう思った。
総司は咳を抑えて、ゆっくり体を起こした。そして四つんばいになって箪笥へと這った。




