第71話
近藤の部屋-
近藤が表情を固くして、総司を見つめている。そして土方が近藤の隣で腕組みをして、じっと目を閉じていた。
総司「…私だけじゃない…このところ、非番で外に出ている隊士達が、あちこちで襲撃にあっているようです。」
近藤「…まぁ、今に始まったことではないが…。確かに最近は頻繁にあるようだな…。」
土方は、じっと目を閉じたままである。
総司「土方さん、起きてますか?」
総司が冗談で言った。土方が目を開き「ばか」と言って苦笑し、神妙な顔つきをしていた近藤も思わず笑った。
その時、障子に人影が映った。
土方「…山崎か?」
「はい」という返事が聞こえた。近藤が「入れ」と言うと、障子が開いた。
山崎が近藤に向かって頭を下げた。
近藤「何かわかったか?」
総司が進言するまでもなく、先に山崎に探りをいれさせていたようだった。
山崎「はっ…やはり、賞金がらみでした。」
総司「…?賞金?」
土方が「餓鬼どもめ」とため息交じりに呟いた。
山崎「はい。新選組の隊士を1人斬ったら、3両の手当がもらえるそうです。役付きの隊士になれば、10両以上といううわさです。」
土方「…なめられたもんだ…。たった10両か…」
土方が、顔をいがめて笑った。
山崎「副長は50両だそうです。局長は100両とか…」
3人はしばし黙り込んだ。そして同時に大声で笑った。
山崎は、目をぱちくりとさせて3人の顔を見渡した。
総司が笑いながら言った。
総司「なかなかの額じゃないですか。ご満足でしょう?」
近藤も笑いながら、首をさすった。
近藤「この首が100両とはな。逆に買い被られているようだ。」
山崎「笑い事じゃありません!…特に局長はお城へ行かれる時には十分ご注意なさらないと…。隊士をたくさん付かせるなどして…」
近藤「わかったわかった…」
近藤は、どうも人事である。
笑っていた土方がふと表情を固くした。
土方「しかし、1人3両にしても、隊士全員を斬ったらかなりの額になるぞ。それだけの金をどうやって蓄えているんだ?」
山崎「御用盗などで盗んだ金もあるでしょうし…商人などから援助も受けているようです。」
総司「討幕派に同情している人が多いと言いますからね…。」
近藤「全く…誰のおかげで、京の治安が保たれていると思ってるんだ…」
近藤が憤慨したように言った。
土方「…隊の中からも、その賞金のことを知って裏切り者が出るかも知れぬ。…隊士同士でも見張らせるようにしろ。」
山崎「心得ました。」
山崎は手をつき、頭を下げた。




