第69話
京の町中-
総司は、路地の中へ飛び込んだ。
後ろから、5人ほどの追手が迫ってきている。
総司(このままいけば、袋小路につきあたる…そこで勝負か…)
総司は、追手を吸い込むようにして走っていた。大分息があがっている。
袋小路にはまり込んだ総司はとたんに身を翻して、刀を抜いた。追手があっと驚いたときには、総司の剣はもう先頭にいた浪人に吸い込まれていた。
斬られた浪人は声もなく、どっと倒れた。
総司「このまま続けますか…それとも、引きますか?」
総司が刀を振り上げたままの形で、ひるんだ相手に尋ねた。
「こいつ生意気な…!!」
浪人の一人がそう悲鳴に似た声で叫ぶと、総司に上段から斬りかかって来た。
総司がその刀をはじき、右袈裟に斬り落とす。
総司「…まだ、続けますか…?」
かなり走ったため、双方とも息があがっている。
追手達は斬られた仲間を足元に見ながら、しばし躊躇していたが、相手が一人だということに再び気を強くして刀を構えなおし、仲間をまたいで近づいてきた。
総司(同時にかかってこられたら、駄目かもしれない…)
総司は、平青眼に構えた刀を突き出しながら、相手を見回した。
斬るか斬られるかの、緊迫した空気がぴんと張り詰めている。
その空気を破ったのが、走りよってくる複数の下駄の音だった。
「沖田先生っ!!」
先に中條が曲がり角から飛び込んできた。そして、その後ろから山野が続く。
追手はいきなり敵が後ろから現れたので、総司に刀を向けたまま中條と山野に向き、動揺した。
中條と山野はためらわずに、目の前の敵を斬る。
総司の真前にいた浪人は、ぎっと総司をにらみつけた。
「ただ死にはせんぞ!!」
そう叫んで、気合の声とともに総司に斬りかかってきた。総司は危ういところで刀をかわし、胴を払った。
鈍い手ごたえが、総司の腕にかかる。
それと同時に浪人の身体が、音を立てて地面に崩れ落ちた。
中條「先生!大丈夫ですかっ!?」
追手をすべて斬り捨てた中條と山野が刀を納めて、駆け寄ってきた。
総司も血ぶるいをして、刀を納める。
総司「…大丈夫だ…。二人ともありがとう…助かったよ。」
総司はそう言いながら、首にしたたる汗を手のひらで拭い払った。




