第61話
新選組屯所前-
中條が門番をしている。
中條(…今日の沖田先生…厳しかったなぁ…。)
どんな相手に対しても決して手を緩めることはない、いつもの総司だったのだが、今日は取り分け厳しかったように思えた。
中條(あれだけの人数を相手にしたのに…どうして、力が緩まないんだろう。)
真剣ならば、刀に脂が回って斬れないだろうほどの人数だった。
それでも、総司の力は決して緩まなかった。
中條(僕の力の強さをよくほめてくださるけど、まだまだだなぁ…。何かコツがあるのかな。)
ぼんやりとそんなことを考えていると、突然目の前が眩しくなったように思えた。
中條「!?…あっあれっ!?」
目の前には可憐が立っていた。くすくすと笑っている。その横には礼庵が苦笑していた。
礼庵「どうしたんです?中條さん、門番がそんな風にぼんやりしては、お役目にならないでしょう。」
中條「もっ申し訳ありません!!…きょっ今日は…どうされたのです?」
一番隊の人間が今の中條の様子を見ると驚くだろう程に、中條はうろたえていた。普段はあまり表情を変えない男である。
可憐「…あの…これを総司さまに渡してもらえませんか?」
中條「えっ!?」
中條は、可憐に差し出されたものを、思わず受け取ってしまった。
礼庵「できれば、総司殿と可憐殿をあわせてやりたいのだけれど…」
礼庵はそう一旦言葉を切って、可憐を見た。
礼庵「…可憐殿が、お務め中にご迷惑をかけたくないと…」
中條「…あっ…今はお務め中ではないのですが…副長とまだお話されているのではないかと…」
可憐「構いませんわ。…それをお渡しいただければそれだけで…。どうぞお体には気をつけてくださいとお伝えください。」
中條「はっはぁ…」
中條は困り果てて、手に持ったものを見た。
中條(本当に渡すだけでいいのかな…)
中條がそうこう悩んでいる間に、可憐と礼庵は背を向けて立ち去ろうとしていた。
そして礼庵がふと振り向き、中條を睨みつけるような目をした。
中條「!!」
礼庵に睨みつけられた中條は、慌てて屯所の中へと駆け込んでいった。




