第60話
新選組屯所 道場-
総司は両膝をついたまま、息をはずませていた。
そんな総司に、土方が駆け寄ってきた。
土方「大丈夫かっ!?」
総司は息を整えながら、土方に微笑んで見せた。
総司「すいません…。どうしても…一番隊組長としての威厳を保ちたくて…」
土方「!!…」
土方は息を呑んだ。
総司「…というよりも…元気だということを、皆に見せたかっただけなのかも知れません…」
土方「総司…」
総司「…皆、優しいんですね。…私が道場に現れたとたん、心配そうに私を見るんですよ。」
土方「……」
総司「その目を見たとき…頼りない組長だと思われてはいけないと…つい力が入ってしまって…」
土方は総司の肩を叩き「…しゃべるな…」と言った。総司の息はまだ整っていない。
総司はうなずいて、息を整えた。
土方は総司の息が整うまで、何も言わず黙っていた。
……
その頃、礼庵は再び可憐の家へ向かっていた。
礼庵(今日は…なんとしても会わなければ…)
そう決意し、足早に歩いていると、前方から、同じように足早にこちらへ向かっている女性の姿が見えた。
礼庵「!!…想い人殿!!」
礼庵は思わずそう叫び、その女性へと駆け寄った。相手も、一瞬立ち止まったが、嬉しそうに駆け寄ってくる。
「礼庵先生!…先日は…失礼をしてしまいまして…」
その声を聞いて、礼庵は心から安堵した。
礼庵「可憐殿…心配していたんですよ。」
可憐「先生…本当にごめんなさい。…実は…内緒で…」
可憐はそう言って、手に持っているものを礼庵に差し出して見せた。
礼庵は不思議そうに可憐を見、差し出されたものを見た。




