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第43話

京の町中-


総司と東は、「くろろほるむ」を仕入れている医者の家へ入っていった。

その時、血相を変えた男が玄関から飛び出し、総司と東を突き飛ばすようにして出て行った。


東「!!おいっ!!どうしたっ!?」


東は、その走っていく男に思わず声をかけたが、とうとう門から見えなくなった。


東「沖田さん!追いかけましょう!」

総司「!!」


今のが、医者だったようである。2人は、あわてて男を追いかけた。

…が、もうとっくに姿が見えなくなっている。


東「…しまった…。もしかして、あいつ…」

総司「…とにかく探しましょう。」

東「ええ。」


東と総司は、逃げていった医者が行ったと思われる道をたどっていった。

その時、前方から聞きなれた声がした。

必死に誰かの名前を呼んでいる。その声はどんどん遠ざかっていった。


東「今の声は…もしかして…」

総司「礼庵殿!」


2人は思わず声の方に向かって駆け出した。


総司(もし、その医者が下手人だったら…。妙な気を起こしていないといいが…)


東と総司は、川の中央でもみ合っている2人を見て、思わず立ち止まった。

さっき逃げ出した医者と礼庵である。それも、医者が握り締めている短刀を、礼庵が必死に取り上げようとしているのであった。

思わず東と総司は、川の中へ走りこんでいった。その時、礼庵が「あっ」と叫び、片腕を抑えた。


総司「礼庵殿!」


総司は、川の中でうずくまる礼庵に駆け寄っていた。東は、うずくまる礼庵の姿を見て呆然としている医者の手から短刀を引き抜き、川の中へと投げ捨てた。そして次の瞬間、医者に平手打ちが飛んだ。


東「このばかっ!!…礼庵まで傷つけやがって!!」


川の流れに尻餅をついた医者は、子どものように大声で泣き出した。

総司は手早く、礼庵の傷ついた腕に裂いた手ぬぐいを巻いた。


総司「これでとりあえずは大丈夫だと思いますが…」

礼庵「面目ない。」


礼庵は、総司に抱えられるようにして立ち上がった。

東は、そんな2人を何かきょとんとした目で見つめていた。


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