第42話
京の町中-
東が牢から出された翌日。総司と東が歩いている。
東「わざわざ、こちらまで来ていただいて申し訳ない」
総司「いえ…丁度、非番でしたから…」
東「礼庵も来る予定だったんですけどね…。急患で来れなくなったと…。」
総司「…そうですか。」
実は、総司は先に礼庵を迎えに行ったので知っているのだが…知らない振りをした。
東「本当に助かりました。どうもあの同心は、手っ取り早く事を片付けようと、私と礼庵を下手人に仕立て上げたかったようです。つかまった時にそれがわかったんで、なんとか礼庵は部外者ということにしたかったんですが、あっちは聞く耳もたないし…」
東は「礼庵は関係ない!」と牢の中で叫び続けていたそうである。どう怒っても、脅しても聞かなかったと1人の牢番が苦笑して、総司に言っていた。
総司「私もたまたま、礼庵殿のところにいただけでしたから…。とにかくお2人に何もなくてよかった。」
東「もし、あのまま下手人にされていたら、死罪は免れなかったでしょうからね。」
総司「……」
総司は、ぞっとした。
東「しかし、沖田さんが隊に内緒で手を貸してくださると言ってくださって、本当にうれしいですよ。これで、あの同心は当てにならないことがわかりましたからね。なんとか自分達で、下手人を引っ張り出さないと。」
総司はうなずいた。なんとしても、あの同心がまた、罪もない人間を下手人に仕立て上げる前に、真犯人を捕らえなければならない。
総司「…ところで「くろろほるむ」という薬は、東さんはどうやって手に入れておられるのですか?」
東「私は知り合いの医者から分けてもらうんです。もちろん、ちゃんとその分の金子は渡しますよ。他の医者もそこから分けてもらうようです。」
総司「その方は、どうやって仕入れているのでしょう?」
東は立ち止まって「さぁ」と首を傾げた。
東「そう言えば、そこまで突っ込んで聞いたことがなかったなぁ。たぶん、商人もからんでいるとは思いますよ。医者じゃ、そういったことの取引は素人ですからね。」
総司「…なるほど…」
総司は考える風を見せた。
東「とりあえずは、その医者のところへ行きますか。…くろろほるむを仕入れている…」
総司「ええ、行きましょう。」
総司は東に従ってついて行った。




