表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/100

第33話

礼庵の診療所--


しばらく沈黙していた二人だったが、やがて総司が微笑んで可憐に向いた。


総司「…すいません…せっかくお会いできたのに…」

可憐「いえ…そんな…私のほうこそ…総司様のことも考えずに…」


総司は、首を振った。


総司「…そうだ…ちょっと外へ出ましょうか。」

可憐「…え?」


可憐は驚いた表情をして、顔を上げた。


総司「…だめ…ですか?」

可憐「いえ!…もちろんご一緒させていただきますわ。」


可憐の頬に赤みがさした。もうこのまま帰ったほうがいいのではないかと思っていただけに、嬉しかったのだ。


総司「桜はまだ早いかな…でも、もう蕾が出てきていると思うんですよ。…鴨川沿いまでちょっと出てみましょうか。」

可憐「はい…!」


二人は立ち上がった。


……


総司と可憐が礼庵に桜を見に行くと告げると、礼庵が「ああ、それなら…」といい、微笑んだ。


礼庵「堀川沿いの方が、膨らみが大きくなっています。そちらの方へ行かれては…?」


総司と可憐はその礼庵の案に同意し、堀川へと向かった。

近いとも言えないが、散歩にはちょうどいい距離である。


二人は外へと出た。

日は高いが、まだ肌寒い。


総司「大丈夫ですか?…寒くない?」


総司が、後ろを歩く可憐に振り向き言った。


可憐「ええ、大丈夫です。」


可憐は「総司さまと一緒ですもの」といいかけたが、恥ずかしくなって口をつぐんだ。

総司はそれに気づかぬ風で、安心して微笑むと、前を向き歩き始めた。

…が、突然立ち止まった。

可憐はぶつかりそうになり、息を呑んで総司の頭を見上げた。


可憐「総司さま?どうしましたの?」


総司は前を向いたまま、可憐の方へと手を差し出した。


可憐「…!」


可憐の顔が赤くなった。…が、やがてその手に自分の手を乗せた。

総司は振り返らぬまま、その可憐の手を握ると、ゆっくりと歩き出した。

可憐も手を引かれるまま歩いた。

また二人、黙ったままでいる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ