表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/100

第32話

礼庵の診療所-


総司は礼庵の厚意で、想い人可憐と縁側に座っていた。

ずっと会えないでいたのだが、礼庵が二人に気を遣い、総司の非番の日に合わせ、可憐を呼んでいたのだった。

このところ総司は、自分から可憐に文を書くことがなくなっていた。

出動が多くなってきたことなど忙しいこともあり、会う約束をしても守ることができない不安があったからである。

だから非番が決まっていても、ずっと文を出すこともできずにいたのである。

それを察した礼庵が総司の来る日を予測し、この日可憐を呼んでいだのであった。

礼庵の予測はみごと的中し、二人は何ヶ月ぶりかの再会を果たしたのである。


総司は久しぶりに可憐に会えたと言うのに、表情が固いままだった。

礼庵は、自分に対して気を遣っていると思い、その場を離れ、二人だけにした。

しかし、二人きりになっても、総司の表情は変わらなかった。


可憐「…総司さま…ごめんなさい…私…」


可憐は怯えたように切り出した。


可憐「私…総司さまのことも考えずに…礼庵先生に無理を言って…」


総司はそれを聞いて首を振った。


総司「…違うんです。…ちょっといろいろあって…。」


総司はそう一旦言葉を切ってから、これまでのことを話しはじめた。

「畑野」という隊士が、腕を斬りおとされ死んだこと。

その隊士の死を畑野の想い人に伝えに行ったところ、家人に塩を撒かれて追い帰された事…。

そのために「木田」という若い隊士が局中法度を犯し、脱走をはかったこと。


総司は今でも、その事が吹っ切れずにいた。

木田は無事戻ったが、それですべて解決したとは思っていない。

死んだ畑野の魂も、成仏したとは思えないでいたのである。


可憐はそんな総司の苦悩を知り、どういう言葉をかければいいのかわからずにいた。

ただ二人は、黙って座っている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ