第18話
新選組屯所-
三日ほどたってから、中條の体はすっかりよくなった。しかし、総司は大事を取って、中條にもう一日休むように言った。
中條「僕はもう大丈夫です!巡察に連れて行って下さい!」
総司「だめだ…。今日一日休むんだ。これは命令だよ。」
中條「…はい…」
中條は少し寂しそうな表情をしていた。
……
一番隊が巡察から戻ってくると、たすきがけをした中條が出迎えた。見ると床がぴかぴかに磨かれている。
総司「…中條君…もしかして、君…」
中條「はい…掃除をしておりました!」
総司「…休むようにいったはずだ。巡察をやめさせた意味がないじゃないか。」
総司は思わずそう言った。中條は「でも、じっとしてられなくて」と下を向いた。
総司「…仕方がないなぁ…」
総司は思わず中條の真面目さにくすくすと笑い出した。中條は少しほっとした表情を見せた。
……
総司が部屋に戻ってまもなく、部屋の外から土方の声がした。
総司「?…はい、どうぞ…」
土方が入って来た。
総司「わざわざ来てくださらなくても、私の方から参りましたのに…」
総司が笑いながらそう言うと、土方は「まぁたまにはいいじゃないか」と言いながら、その場に座った。
総司「どうしました?…何かありましたか?」
土方「ああ…中條のことだが…」
総司「…はい…?」
土方「…切腹すると言うんだ。」
総司は驚きのあまり、しばらく声が出なかった。
総司「…どうして…切腹など…!?」
土方「それなんだが…」
土方が頭を掻きながら言った。
土方「あいつが、おまえの気まぐれで入隊が決まった時、俺はどうも中條が気に入らなくてな…。それで、やつを部屋に呼んで言ったんだ。『少しでも総司の手を煩わせるようなことをしたら、腹を切ってもらう。出ていくなら今だぞ。』ってな。」
総司「!!」
土方「それで、尻尾を巻いて逃げていくのかと思っていたら、顔色も変えずに「出て行きません。沖田殿についていきます」と言ったんだ。」
総司「そんなことを…」
土方「それを、まだ覚えていたとはなぁ…」
土方はそう言って苦笑している。
総司「彼なら覚えてますよ…土方さんと違って、生真面目なんですから・・」
土方「おい、そりゃぁひでえ言い方だなぁ…」
土方はそう言って笑ったが、総司は真顔のまま尋ねた。
総司「それで…中條君はなんと言ったのですか?」
土方「おまえに決めてもらえと言っておいた。だから後を頼むぞ。」
総司「ひどいなぁ…自分で言っといて逃げるんだから…」
土方は、笑いながら立ち上がった。
土方「ああ、それから、中條がな…」
総司「?…なんです?」
土方「おまえに介錯をして欲しいそうだ。」
総司「!?…」
土方「なんなら、やってやれ。」
総司「土方さんっ!!」
総司が思わず目を吊り上げた。土方は笑いながら部屋を出て行った。
総司「…中條君は真剣だろうな…」
総司はため息をついて、立ち上がった。




