1/6〜 左腕たちの自主トレ①
日本列島にいる以上、年始に吹く風は大体どこでも冷たいものであり、島嶼部ともなるとその威力というのは、障害物が少ない分いやますものなのかもしれない。
原さんが借りた奄美市営グラウンドで、その強い風に乗せるように妻木がストレートを投げ込む。
「流石10勝ピッチャーやな〜。よか球放りよんごたる」
「ありがとうございます」
腕を組みながら、原さんが感心を口にすると、妻木は遠慮気味にそう言って、賛辞を受け取った。
元々俺と原さんで行う予定だった自主トレは、シーズンオフに入ってからの妻木からの誘いと、かねてより話があった原さんにそれを伝えたためにこうして妻木とも合流することとなっている。
シーズン10勝するような有望な後輩から声をかけられるなど思ってもみなかった事であり、活躍するもんだなぁとふわっと考える。
妻木自体、俺に話しかけてくる事はほぼなかったので、大層驚いた。そもそも声掛けられないという話はしてはいけない。…嫌われてるか怖がられてんのかなぁ。
「久松さん、今のボールどう思われますか」
「…あ?俺?」
「はい」
思わず素っ頓狂な声が出る。俺に聞くんじゃなくて原さんに聞いたほうがよくない?
「どういうところが気になるんだ?」
「真っ直ぐの質というか。ガン自体は数字叩いてるんですけど、それほど速く見えなくて。久松さんの真っ直ぐは数字以上に速く見えるんで、それを教えてもらいたいなと」
「えぇ…?」
易々と148を叩いているのに速くないなんて勘弁してくれないか。言っとくけどそれ俺の最速と同じ数字だからね?
「うんうん。おいもそん気持ちはようわかるわ。実際久松くんのボール速よ見ゆっとよな。妻木くんはそいが欲しかとやろ?8割の力でも体感150出せるならそんほうが効率よかけんな」
あっと原さんもそっち側か。妻木は原さんの言に静かに頷いている。
実際一球に使うエネルギー量というのは、先発からすればバカにならないだろう。100%を80%に出来るなら、短期的にも長期的にも利益が積み上がる。
確かに代価を支払う必要はあると思っていたし、俺が解決できることなら解決して精算はしておきたい。
問題は、ノビをどうやって出すかという事について、多少当たりがついてるくらいで俺にもはっきりとわかっていない点なのだが。
ええいままよ。
「僕もよくは分かってないんですけど…。とりあえずストレート投げる時の話しますね?」
「うん」
「指の位置こう、で、普通にこう踏み込んで、踏み込んだら耳の位置あたりで…」
「んん?ストップストップストップ。久松くんいつもほんとにごがんとで投げよっと?」
「え?はい」
「ばりインステップしとっとやん。こがんしても球のノビは出らんちゃない?」
あれ?
「あ、そういやこれやめないとでした。で」
「いや、そがん軽く流すとこやなかて。え?インステップで球のノビどうにかしよっと?」
「そう、ですね。僕は体が開くのが早いので、それをカバーするというか矯正するというか」
「…そいはあくまできっかけとかやなかとね?そら多少球威は出ようけどが、ノビとは関係あっとかな」
そういやこの辺りは古沢さんも当時から懐疑的ではあったな。
…え?もしかして関係ない?
「…あー。繋がった。わかっしまった。こいあればい。カットが曲がらんのもこいやなかか?」
そっちも繋がんの?
「ストレートと同じ投げ方で投げようとしよったらインステップになるっちゃろ?そら投げにくかっちゃん。ストレートは前足が突っ張れば威力は増すやろうけどが、曲がり球は前足突っ張ったらそら抜けてくれんし切るように投げても変化せんやろ。ほんで握力弱かし、インステップのデメリットで下半身にダメージが入っとった、と仮定するならそら、そら曲がらんばいな」
妻木の問いに答える事能わず、何故か自分の課題に関する解答が出てくる。
いやほんとだらしない先輩で申し訳ないと思いつつ、俺は天を仰いだ。
個人的都合と普通に詰まっているのとで間隔空いた上に短いです
申し訳ありません




