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グッドバイ・ピッチ  作者: カロリーはうまみ
2年目(久松プロ5年目)
84/141

10/19 編成会議①

タイトルはナンバリングするかもしれません。


「や、どうもどうも。すみませんお待たせして」


ネイビークロウズ球団事務所内の会議室に、そう言って扇が入室する。定刻よりはいくらか早いのだが、それでも集まるべき人員は既に集まっており、それがこの会議の重要さを物語っている。

決して大きくはない戸の閉まる音が、やや耳障りに響く程度には、静粛かつ緊迫した雰囲気があった。


「えー、お揃いのようですので。では、令和7年度京央ネイビークロウズ第3四半期編成会議を始めます。まずは社長、お願いします」


司会を担う球団本部長の佐々木通吉が、球団社長の水尾哲也に挨拶を求める。


「皆さん、お疲れ様です。今年はGSに出られたりタイトルを取る選手が出たりと、飛躍の一年となりました。選手、監督とコーチ、ひいては球団に携わる方々全員による成果であり、大変喜ばしく思います。とはいえ、まだ上があります。来年度こそ優勝を。その為にはストーブリーグでどれだけ積み上げられるかがカギになるでしょう。この会議の持つ重み、それを改めて頭に入れて頂いて、論を交わしてもらいたいと思います。では、今日はよろしくお願いします」


ぱちぱちと手を叩く音が、少しの間響いて止まる。

それを待って、佐々木は次第を読み上げた。


「社長、ありがとうございました。さて、今日の議題に関してですが、お手元の資料をご覧下さい。えぇ〜、まずは今季の報告と現有戦力の分析ついで補強指針、来季展望の順でお話進めていきます。では早速、吉永監督お願いします」


そう促され、吉永が資料を片手にマイクを握る。


「皆様お疲れ様です。吉永です。詳細はお手元の資料を見ていただくとして、取り急ぎ今季の報告をざっとさせていただきます。え〜、まず今季は3位で貯金11と良化に成功したと言っていい成績を収められました。ただし、ポストシーズンではいいとこなしで、まだまだ選手・首脳陣共に、実力、体力不足を感じるところです。野手・投手ともに、レギュラークラスとそれ以外との実力差が大きすぎるとも感じており、選手層のボトムアップが喫緊の課題と現場としては考えています。それもあってGSでは少々突飛な起用もしましたが…。収穫自体は多かったシーズンでした」


吉永がそう言葉を切り、扇が後を受ける。


「え〜皆様、お疲れ様です。ここからGMの扇がお話をさせていただきます。今し方、吉永監督から話がありました通り、現状のチーム内で能力に差がありすぎている、というのが課題だと我々編成部も考えております。と、なれば来季の補強について考えなければならないところですが…。まず今季の補強について振り返ってからお話をさせていただきます。資料のページ13をご覧ください」


扇の言葉につれて、まばらに紙のゆらめく音が会議室に満ちる。


「まず、ドラフトでの獲得選手について。特筆すべきはドラ1の妻木選手。20試合登板で10勝7敗。防御率は3点台後半と、及第点以上の活躍をしてくれました。新人王に届かなかったのが不思議なくらいですが、今季の躍進における立役者の1人と言って良いかと思います。来季もローテを張ってもらえればと期待しているところです。それからドラ3の飯田選手。先発即戦力としては物足りませんでしたが、それでも馬力は示してくれましたし、ポストシーズンでの投げっぷりは印象深かったかと思います。来季はリリーバーとして回ってもらう予定です」


話すをやめた扇は、汗を拭い、顔に向け手で風を送る。演台のミネラルウォーターを口に含み飲み干した後、一拍置いて再度口を開いた。


「と、いうのも。荒木妻木十川古沢。この4人が軸で回って貯金が14あった訳ですよ。ここだけで、です。それがシーズン終わってみると11しかない。他の所で落としてる訳です。先発もそうですけど、やはりリリーフの一部がまだまだ苦しい。故に、飯田君を後ろに回そうという話です」

「それは良いですけど、そうなるとスターターが足りなくなりませんか?」


誰かが口をついたようにそういうと、扇はそれに笑いながらこう返した。


「えぇ、えぇ。仰る通りです。下の成長待ちの部分もある事はあるんですが、やはりここはどこかからかっぱらって来るしかないかなぁと。ま、その話は後で詳しくします。で、ね?リリーフより深刻なのが野手です。金子選手、土井選手共にいい選手なのは間違いないんですが、先方の希望などもあり一宮、赤澤の両名を放出してしまいました。GSでは、あと一枚打力ある選手を出せれば、という展開になったので、ここに関しては巡り合わせが悪かったなと」


苦く、新しい記憶に、皆が眉間に皺を寄せる。自分たちの窮状なだけに、理解が及んでない者がいないのは当然なのだが、扇は心底からその状況に感謝をした。


「出した人の事はひとまず置きます。今季はですね。シーズン開始前に武田、アダメス、野口を獲得しました。いずれも好成績を残し、補強としては大成功だったと言えるでしょう。さっき話したトレードの2人もいい働きをしてくれました。方向性としては同じ形で、FAから1人2人、外国人、戦力外より1から3人。あとは第二捕手を張り合える選手をどこかから。残りはドラフトでという感じで考えています」


勢いのまま、扇は来年の展望について、拳を上げながら語る。


「来年は勝てます。来年はてっぺん獲れます。貯金11も作れるチームになったんですから、あとはどれだけ上振れるか。レイダースからはエースの原がFAするという噂もありますし、レッドウルスも今のままで上積みを作るのは難しいかと思われます。そんな中、我がチームは伸びしろがあります。編成次第では黄金期すら狙えるところ。池田・久松から荒木あたりの年代軸に加え、佐多と同年代のいい選手をドラフトで当てられれば、一気に跳ねるでしょう。取らぬ狸の皮算用と言われればそうですが、かと言ってこれからメンツが揃う保証もない。この1〜2年で、勝負を仕掛けるべきです。故にこそ、この後、獲得選手の検討について、しっかりと議論いただきたいと、そう考えております。私からお話するのは以上です。ここからは、編成部に引き継ぎ、改めて来季補強について詳しく説明があります」


先発3本柱(+古沢)の登板数と勝敗

荒木 25登板 15勝7敗

妻木 20登板 10勝7敗

十川 25登板 13勝10敗

古沢 17登板 8勝5敗

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