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グッドバイ・ピッチ  作者: カロリーはうまみ
2年目(久松プロ5年目)
69/141

7/21〜24 ソーダイオールスター コンチネントVSオーシャン ホームランダービー ♦

和歌山ホワイトパークに、歓声と拍手が起こる。なにしろ年に一度のホームランダービー、しかもそれが眼前にあると来れば、そうなるのも自然な事だろう。加えて、前半戦19のホームランを打ち込んだ、リーグ2位のチームの4番がお出ましだ。手前味噌ながらそりゃ多少はアガろう。

…こんな舞台に立っておいてなんだが、己の事をスラッガーだと思った事はない。甘くきた高め近めのボールを引っ叩いてるだけであり、膂力というよりは当て勘が売りだからだ。

場違い感を覚える舞台には、出囃子として流れているdoaの『英雄』が響き、お祭り騒ぎするスタンドを遠目に見つつ、一つ素振りをする。これを見ると、まぁ自分なりに盛り上げられるよう頑張るか、と渋々ながら思わせられる。

マウンドでは、佐多が軽快な動作でやまなりにボールを投げていた。話の流れでこうなっているので申し訳なく思っていたが、側から見る分には少し楽しそうでもある。

発端となった久松への頼みは7割冗談3割本気だったのだが、やっぱり良くなかったよなぁと改めて思う。人の心の機微云々は置き、そもそも論として、ちょっと前ならいざ知らず、今の久松を打てる気はしないのだが。大学選手権では何がいいのか、なんで打てないのかわからないまま5タコを喫したし、今となってはリーグでも上位のストレートを引っ提げて突っ張ってくるわけだ。ただでさえ多分間が合ってないのに、そんなもん持たれたらもうどうにもならん。なんならバッティングピッチャーやってもらったとして、緩いボールならば打てるとも限らない。


「(なんで打てなかったのか分からないし、逆にみんなはなんで打てるのか分からなかった。多分あいつのこと一生わからんままプロで野球しなきゃなんだろうな)」


キャッチャーとしての至らなさと、バッターとしてのプライドが同時に刺激される。

リベンジの意図も込みでの申し出だったが、結果にべもなく。

まぁそれはもういいか。コールもかかった事だし、ひとまず打撃に集中しよう。

ルーティンでバットをくるくると回した後、軽く体を捻り、上段に構える。OBから構えが良くないだの生意気だのさんざ言われたが、こうするだけでスタンドの観衆は一瞬水を打ったように鎮まり、大体の投手はわずかにたじろいでいる。もう投手じゃない佐多ですらもそうだ。

結果と大きく見せる構えが、この場にいる全てを威圧する。


「さぁ、マウンド上佐多選手!かつては女房役、同じチームの主砲相手に…投げた!打った!さぁこれは越えるか!」


グラウンドレベルで様子を伝えている三谷とかいうアナウンサーが、白球を目と声で追う。

リクエスト通り高めに来た緩い球だったから丁重にフルスイングしたがさて。…よし。入ったな。

2分以内に何本ぶちこめるかを競うのがこのホームランダービーだが、早いうちから1発打てたのはいい事だろう。なにせ、後半への負担が軽くなる。

先だっての打感を脳に刷り込みつつ、俺は佐多に一つ声をかける。


「佐多ーっ。もうちょいピュッと投げてー」


片眉を一瞬上げた佐多は、要求通り先ほどより走る球を投げてきた。コースは打ちやすいインの真ん中高め。

打球はフェンスを越える程度には大きかったものの、ファールとなった。想像していたより少し遅かったようだ。

しかしまぁ、速度や軌道的にはこんなもんが良さそうと、OKサインを作り佐多に送る。

それを見てか、佐多はまた同じような球を同じようなところに投げ込んできた。


「(コントロール良ッ。な〜んで出来なかったかなこれが)」


そう思ったが、そんな考えをボールに乗せて吹き飛ばす。だって試合で投げるのとホームラン打たせる為に投げるのば違うじゃんね。我ながら未熟というか自己中というか。勝負の最中だというのに、思わず苦笑いが漏れた。


2分というのはあっという間だが、それでもスイングをずっとするのは相当に堪える。

結局4本のホームランを放った俺は、息を整えるとグラウンドに設置されたパイプ椅子へと腰を落とした。

相手になるノシマファルコンズの木嶋は、山なりのボールを相手に大きな空振りをして、会場をひと沸かししていた。


「ナイバッチでした池田さん」


ドリンクを口に含みながら木嶋の打撃を見ていると、佐多がそう声をかけてきた。


「おう。ありがとう。打ちやすかったわ」

「ん〜…。元投手としては複雑っすね…。いやまぁ、今回はそのために出てきてるからいいんですけど…」

「やっぱまだ未練ある?」

「ないです。それはない。今のはピッチャーとしての我が死んでなかっただけです。そのうちいなくなると思います」


少しだけ寂しそうに、しかし乾いた口調で佐多はそう言った。

木嶋がまた空振る。打つ時に顔がブレてるからそうなるんだろうなぁと思いつつ、口には出さない。


「いやしかし、当たらんもんかなあんなに」

「池田さん、そういう事あんま口に出さない方がいいっすよ。こないだもヒサさんに怒られたでしょ」


佐多にそうたしなめられる。反省。

いやしかし、そう考えると、俺はあんな風にはなってないはずなのに、久松から打てなかったのは何故なのだろう。プロに入って研鑽を積み、壁を乗り越えてきたという自負があるだけに、返す返すわからない。


「どうやったら久松から打てるかなぁ」


思わずそこだけ口にした。すると佐多は呆れたようにこう言った。


「いやぁもうあんな言い方したら絶対無理ですよ。ほらこれ勝ったら明日も僕が投げてあげますから、余計なこと言っちゃダメすよ」


池田の能力値(大体このくらいみたいなやつ)


弾道3 ミ79 パ75 走49 肩70 守46 エラー61

チャンスBキャッチャーDケガしにくさA回復A初球◯ハイボールヒッター逆境流し打ち対エース◯固め打ち


赤特なしってマジ?

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