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シュナ、魔王と遭遇す

『クリシュナ。右後方、冒険者の男』


「またぁ?」


 私たちがイワカゲスライムを狩っていると、ミラが警告を発した。

 どうも、私たちの羽振りの良さの原因が、ロロナッドのダンジョンにあるということが徐々にバレ始めているらしい。


 もう少し稼がせてもらうつもりでいたけど、もう潮時かなぁ?

 思っていたよりだいぶ早い。

 よそから人が来るようになったら、さすがに次の行き先を考えなければ。

 あんまりこの町に人が増えると、潜伏には不向きだもんね。


「ちょっと、そこの人。これ以上ついてきたら承知しないよ」


 昔の冒険者は秘密を守るために、狩り場まで尾行しようなんて者がいたら問答無用で切って捨ててしまっていたとか。

 私はそこまでする気はないけど。


 冒険者ふうの人相の悪い男が物陰から現れた。


「へっへへ。嬢ちゃん、そんな細腕で何が出来るっつぅんだい? 武器もそんなチンケなブロンズソード一本たぁ……スコンプで買える最低の武器じゃねぇか。残りは俺たちが狩ってやるからよ。痛い目にあいたくなけりゃ、とっとと狩り場を教えな」


「うわぁ」


 この前も似たようなセリフを聞いた気がするなぁ。

 この手の人たちってなんでみんな語彙が一緒なんだろう。


「ミラ。〈魔法発動〉……後ろからアイシャちゃんを捕まえようとしているやつにパラライズ」


「ぎゃっ!」


「な! 気づいてやがったのか!?」


 そりゃ、私だって、私から何か聞き出そうとするならアイシャちゃんを人質に取るぐらいは考えるよ。

 むしろ私が守れるように、毎日ダンジョンに連れてきているんだから。


「なるほどな……チャチな剣だと思ったが、〈魔法発動〉がついてやがるのか。だが、〈魔法発動〉にはリキャストタイムがあるはず。これで俺を止めることはできねぇぞ!」


「いいよ。かかってきなよ」


「は。ブロンズソードしか持てねぇ初心者が、いきがりやがって!」


 さっき、メインの武器がブロンズソードなのは〈魔法発動〉がついてるからだって納得してたと思うんだけどな。

 急に見下してくる。

 バカの考えることはよく分からん。


「ミラ。やりすぎないよう、セーブしてね」


『承知しました。クリシュナ』


「おらおら! 気ぃ抜いてんじゃねぇぞ! 一流の冒険者が振るう剣の切れ味をてめぇの体に教えてやるぜ!」


 極限まで集中し、男の剣を見極める。


 多分、鋼鉄製だろう。

 そこそこ値が張るやつだ。

 切れ味は〈鋭利化〉が2~3ついたブロンズソードと同じぐらい。

 だけど……


「ほやぁっ!」


 気合い一発、私は剣を突き出した。


 ぎゃりぎゃりぎゃり!

 二本の剣がこすれ、不快な音を立てた。


 そのまま一気に振り抜く。

 ブロンズソードは鋼鉄の剣の、刀身の『内部に』突き進んでいき、半分にスライスした。


「は?」


 ペラペラと薄く二枚になった剣を呆然と見つめる男に、私は痛烈な蹴りを見舞う。


「がっ、はっ!」


 軽く蹴っただけだったんだけど、〈筋力〉スキルが有効なので、男はむちゃくちゃ痛がっている。

 ミラに聞いたら内臓破裂ほどではないようなので安心だけど。

 これに懲りて、私たちの後を追おうなんて考えないでほしいなぁ。


 男たちはロープで縛ってこの場に放置。

 後で組合の職員さんにでも引き取りに来てもらおう。

 こいつらの醜態を見たら、他の冒険者もちょっとは大人しくなる……はず。


「アイシャちゃん。一応、尾けてきてたやつは全員懲らしめてやったけど、ここら辺は人が多いから、もう少し奥へ行こうか」


「うん。分かった。……危なくないよね?」


「大丈夫だって。この剣があるし」


 私はアイシャちゃんを伴って、ダンジョンのさらに奥へと進んだ。


     :

     :

     :


 ダンジョンの奥深く。

 これまで来たことのないような場所で、一人のお爺さんと遭遇した。


「あれ? お爺さん?」


 ドワーフだ。

 というかこの人、アイシャちゃんの藤製の盾を作ってくれた人だ。

 受付のガラダさんのお爺さん。


「こんなところで何してるんですか? あ、まさか。お爺さんも私の秘密を探りに来たってわけですか」


 私から魔石を買うより、自分で集めたほうが安上がりだもんね。

 だけど、狩り場争いはし烈なのだ。

 お爺さんと言えども、私は容赦しないよ。


「おう、嬢ちゃんたちか。その後、盾の調子はどうじゃ。ほれ、見してみい」


「あ、これ……」


 アイシャちゃんに渡された盾を矯めつ眇めつして、お爺さんは満足そうに息を吐いた。


「よしよし、さすが儂の仕事じゃ。まったくガタが来ておらんじゃないか。この分ならあと三年使おうが新品同様じゃぞ」


「この辺はバウンドエイプぐらいしかいないから、そんなんで壊れてちゃ話にならないでしょ」


「む、それもそうじゃ。ガハハハハ!」


「それで? お爺さんはこんなところで何してるの?」


 すると、お爺さんの手が土で汚れているのが見えた。

 私の狩りを盗み見に来た……というわけではないみたい。


「実はな、鋼の鍛造には粘土が欠かせないんじゃよ。ゆっくり時間をかけて冷まさねぇと、硬いだけですぐ折れちまう、粘り気のねぇ剣になる。そこで冷却時間をコントロールするために、粘土でくるんでゆっくり冷ますんじゃが……」


「それで、ここに粘土を取りに来たの?」


「そういうわけじゃ。本当は、南の平地のちいと先に行ったあたりにある土が具合がいいんじゃが……あの辺りは魔王ルヴルフのナワバリでのぅ。それでわざわざこんな深くまで、粘土を採りに来ておるというわけじゃ」


 そう言ってお爺さんは、ダンジョンの壁にツルハシを叩きつけ始めた。


 出た。

 魔王ルヴルフ。

 昨日もアイシャちゃんが言っていた、あいつだ。


「そんなに強いんですか? そのルヴルフって」


 魔王を自称しちゃうような魔獣だから、どうしてもおバカなやつとしか想像できないんだけど。

 でも、領主の編成した討伐軍はやられているんだよなぁ……。


「つええ、つええ。ああいう見た目だから、バカっぽく見えるがの。その爪の一振りで、領主軍を半壊させちまったぐらいの化けもんじゃ。下位竜と戦ってもルヴルフが勝つじゃろうな」


「そんなに?! っていうか、私、見た目知らないんだけど……」


 と、そんな世間話をしていた時のことである。

 お爺さんがこんこん叩いていたツルハシの音が変わった。


「なんじゃ? 向こうに空洞があるようじゃが……」


「あ、お爺さん。気をつけて」


 私は頭の中でこっそりミラに、向こうに危険がないかどうか質問する。

 今日このダンジョンに入ったとき、ミラに「ダンジョン内で危険があったら教えて」と頼んでいたのだが……

 壁の向こうにあるという空洞を、ミラがダンジョンの外だと認識していた場合、教えてもらえない可能性がある。

 そういうトコロ、ちょっと融通利かないんだよな、ミラのやつ。


「ほおお! これはもしかすっと、ずっと不毛不毛と言われておったロロナッドのダンジョンの新たな階層への手がかりを見つけちまったかも知れん! これでロロナッドが潤ってくれりゃええんじゃが……」


「あ、待って。お爺さん。向こうに何か、いるって……」


「ぬぅおりゃああああああっ!」


 私の静止も一瞬遅く、ドワーフのお爺さんはツルハシを大上段から振り下ろしてしまっていた。

 壁がガラガラと音を立てて崩れ、その先の空洞へと繋がる。


 そしてそこには――

 巨大で強大で凶悪な、軍よりも強いという魔獣が佇んでいたのだった。


「なんじゃ!? き、貴様は……魔王ルヴルフ!?」


 お爺さんの叫びが、新たに出現した空間に響いた。

◇以前、やっている人を見かけてやってみたいと思っていたので……。

クイズ!次回登場する魔王ルヴルフですが、ある獣をモチーフにした魔獣となっております。さて、その獣とは一体何でしょう!?

正解者には特に何もありません(笑)

皆さん、感想等で予想を教えてください!

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