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4.どうしてこうなったの……

もちろん、ヒロインちゃんに関わったからである(確信)

「どうしてこうなったの……」



 マドレーヌ・スイーツは嘆いていた。


 彼女はストロガノフ王国の侯爵家の令嬢であり、王太子であるハッシュ・ストロガノフ第一皇子の婚約者。


 行く末は国の王妃となるのだから、それ相応の振る舞いが求められはずなのだろうが……


 今のマドレーヌは自室にて、両手をだらんと下げながら顔を机に突っ伏した体勢をとっていた。

 どうみても未来の王妃とは思えないだろう。


「お嬢様、気持ちはわかります。ですが落ち込むぐらいなら両手を頭にかかえながら悔しそうにしてください。それこそどこかの新世界の神(〇ラ)がLにしてやられたのごとく」


「姉ちゃんずれてる。ここは扇子をべきっと片手で握りつぶすのが」


「あんたらねぇ、私をラスボスか何かに仕立て上げたいわけ?」


「「いえいえ、そんなことありません」」


 二人同時にしれっと返す見習い侍女と見習い執事。

 この二人は前に『信頼できる仲間を集める』というミッションで獲得した仲間である。


 台詞から察せられる通り、二人は転生者であった。


 どうしてわかったかというと『味噌』や『醤油』の性質、日本からの転生者の記憶を呼び起こす作用を利用したからだ。


 最初こそはそんな馬鹿なとは思うも、マドレーヌ自身で検証されたのでもう深く考えず『味噌』と『醤油』を使って前世の記憶を思い出させた人材を探す事にした。

 探し方は孤児院……こういった悪役令嬢が味方を探すのは孤児院からのスカウトが多いので、慰問という名目で澄し汁や味噌汁を振る舞ったのだ。



 ちなみに料理はマドレーヌのお手製。

 ぶっちゃけ他の者は『味噌』や『醤油』の扱い方がなってなく、ついつい自分でやってしまった。

 最初は反対されたが、多文化の理解を深めるためっという名目で無理やり通した。


 王妃には他国の者と交流する義務もあるわけだし、他国の文化に精通してて損はない。何より貴族令嬢自らが腕を振るった手作りの料理。

 形だけの慰安ではない、ご機嫌取りの横暴なものではない誠心誠意が籠った施しは孤児院から大評判を受けたので結果オーライとなったわけだ。


 それに加えて側近候補の勧誘そのものは父からあっさり許可が降りた。

 なんでも今の王の側近は半数以上が平民出身。王直々にスカウトした人材だった。

 父に詳しく聞いたら王は無能であっても、自覚のある無能。身分関係なく仕事のできる人材に頭を下げてまで協力を求めてきた『無能な怠け者』の王らしい。


 自分が無能だと自覚した上で自分が出来る事を……

 王としての威厳やプライドを地に捨ててまで王の義務、国を治めるという王の義務を全うしてきたわけだ。


 これには凄く感心した。

 マドレーヌからみたら周りにペコペコ謝ってばかりの威厳も糞もない情けない王にみえたが、父にとってはどれだけ情けなく見えても確かな王としての器を持つ、忠誠を誓うにふさわしい王だったのだろう。

 


 まぁだからって無能を引き継いだだけでなく、プライドを誇大化させてしまった『無能な働き者』という王の資質なんてない息子を王太子に据えてる愚行の免罪符にならない。


 早く見限れって叫びたいのに……父はそれとなく王に伝えてるようだが、やっぱり王といえども唯一無二の子は可愛いのだろう。

 父も子持ちである以上、子を思う親の気持ちもわかってしまうため強く出れないようだ。



 この辺りは乙女ゲーム補正が働いてる可能性も無きにあらず……


 なんて話はともかく、父も実例があるので孤児院からのスカウトは反対しなかった。

 マドレーヌの責任で教育するなら側近候補を作ってもよいという許可はもらえた。


 そうして澄し汁や味噌汁を飲んだ者の中で『これ、カツオ出汁が足りてない」』とか『なんだかちょっと懐かしい味だな』という、あからさまな反応を示した孤児が上記の二人。


 マロンとカロンの姉弟だ。


 二人とも乙女ゲーム『ようこそ乙女の花園へ』は知らないようだが、前世知識を思い出す事に成功した。

 同じ転生者同士という事で側近候補となってもらったのだ。



「その代わりこれ、先立つものはしっかり頂きます」


「後美味いモンも。特におにぎりとか希望」


「賃金は奮発してあげるけど、おにぎりなんてないわよ。お米はこの国だとあまり好まれてないし、『味噌』や『醤油』はまだ流通量が少なくて確保が大変なのよ」


「確保が大変なのは流通量が少ないのではなく、お嬢様のせいですが」


「だーわかってるわよ!!お願いだから蒸し返さないで!!!」


 痛いところを疲れたマドレーヌは再度頭を抱えながら机に突っ伏す。

 例え雇い主であろうとも、この二人は遠慮がなかった。


 それもそうだろう。

 3人は同じ前世の庶民感覚を共有できるいわば同士。マドレーヌも毎回貴族として振る舞うのは疲れるので、他に誰もいない時は遠慮せず振る舞えとは伝えている。その証拠に二人は部屋から出れば即座に猫を被る。

 いずれ王妃となるマドレーヌに仕える将来有能な見習い侍女と見習い執事として同行する。


 まぁマドレーヌも遠慮するなとは言っても、不敬を働いていいとは言ってない……が、それだけ信頼できる仲ということでもう突っ込まないようにしていた。


「で、どうなんだ?悪役令嬢様はどれだけ『毒花畑ヒロイン』を怒らしたんだ?」


「わからない…としか言いようがないわ」


 事の発端だが、それは前話でマドレーヌが取った選択にある。


第一ミッション、仲間を探せ

ミッションコンプリート ランクD


有能だけど癖が強くて使いづらい姉弟が仲間になりました。

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