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2.これ、思いっきりやばい転生パターンじゃないの!?

悪役令嬢転生系のテンプレ乙ww

 『醤油』や『味噌』が使われた料理を食べ続けて1週間が経った。

 マドレーヌは思い出した前世の記憶の整理を兼ねた日誌を付けながら、この不可思議な現象の事を検証し始めた。



「まず最初に、私は『醤油』や『味噌』を食べる度に前世の記憶を思い出すことができる。

 何を思い出すかは完全ランダムで中にはトラックに跳ねられて死ぬ瞬間なんてものもあったけど……あれはまずかったわ」


 あの時のマドレーヌは料理を口にした瞬間、悲鳴あげて頭抱え込んだのだ。

 おかげで周囲は大慌て。

 中でもメープルは凄かった。毒を盛られたと断定するかのごとく、怒鳴りつけるように料理人を呼びつけたのだ。


 どこかの陶芸家な美食家が皿を片手に厨房へ乗り込もうとするかのごとき剣幕だから、必死で止めさせた。

 止めなかったら絶対料理人の首が物理的に飛ぶ。この一週間の観察で判明したメープルの性格上、躊躇なく首をはね飛ばす。スカート下のふとももに仕込んでるナイフでもって首をはね飛ばす。


 だから必死に止めた。

 使いなれない未知の調味料だからこういうこともあるとかなんとか理由付けて免罪させたけど、それはそれで不思議がられたのだ。



(どうもマドレーヌは自他ともにとても厳しい性格で、失態を犯したものには容赦なかったみたいね)


 これはメープルや王妃教育のせいか、それともマドレーヌ本来の気質なのか、その辺りはさておいて……


 マドレーヌはここ数日の間に次々と記憶を思い出す中で、今日はとてつもない重要な記憶が蘇った。


 この世界は乙女ゲーム『ようこそ乙女の花園へ』の世界に類似している事。


 そして、マドレーヌ・スイーツはゲームの悪役令嬢である事を思い出したわけだ。



「これ、思いっきりやばい転生パターンじゃないの!?」



 マドレーヌは悪役令嬢ではあるも、嫉妬深い悪女という部類ではない。

 貴族の義務たるノブレス・オブリージュを遵守する、厳格で融通の効かない性格をしているだけだ。

 そういう意味で平民出の男爵令嬢なヒロイン、よく言えば天真爛漫で悪く言えば夢と現実の区別が付かない『脳内お花畑なヒロイン』と相性が悪かった。


 顔合わせる度に衝突を繰り返して来た。衝突といってもお花畑思考なヒロインとノブレス・オブリージュを遵守する悪役令嬢ではあからさまに悪役令嬢の方が理に適っている。

 当然ゲームプレイ者は悪役令嬢の味方をするも、あいにくゲーム内に悪役令嬢の味方はいない。

 どんなルートに進んでも周囲はヒロインの肩を持ち、やがて立場を追われた悪役令嬢は命を落とす理不尽極まりない扱いに同情を誘った。

 それこそヒロインや攻略対象者、そんなシナリオを作った製作者をぼろくそに罵られてたが………



 製作者は自身へ向けられるヘイトなどお見通しだったようだ。

 全ルートを攻略し追加パッチを当てることで現れる裏モードが用意されていた。



 その裏モードをプレイした者はこう称した。





『悪魔編』もしくは……



『虐殺編』っと……





 この裏モードに入ると『脳内お花畑ヒロイン』が豹変する。

 表向きこそ天真爛漫を装うも裏では王や貴族、国に対してすさまじいまでの憎悪の炎を燃やす“狂気”に侵された悪魔のようなヒロインとなるのだ。

 悪女や魔女なんかでは到底格が足りない、悪魔のようなヒロインだ。

 ウォーズマンスマイルともいうべき邪悪な笑みを浮かべながら攻略対象者を生きたまま切り刻み、内臓を抉り出しては口にして咀嚼する様は最早ヤンデレの域を飛び越えた悪魔そのものだ。


 さらに表にはなかった設定、ヒロインは薬学に長けているという設定まで生える。

 ヒロインはその薬学知識を生かして次々とやばい薬を精製しては攻略対象者に盛るのだ。

 その種類は乙女ゲームにありがちな好感度を上げる……ぶっちゃけると定番の『魅了薬』はもちろん、三日三晩苦しみもがきながら絶対の死をもたらす毒薬に、一口でも飲めばを廃人と化してなおかつ強い依存性を与える麻薬のような薬、果てには投与者をゾンビや魔人といった人ならざる化け物に変えてしまう『悪魔の薬』まで作り出すのだ。


 激しい憎悪に身を焦がしながらもその憎悪と“狂気”を笑顔の仮面で隠し、徐々に国の内部へと浸食して崩壊へと導いていくその姿は『脳内お花畑ヒロイン』改め『脳内毒花畑ヒロイン』



 そうした裏モードの逆ハーレムモード……

 全攻略者を地獄へ叩き落としたヒロインは憎悪と“狂気”が晴れるどころかさらに増してゆき、やがてその矛先を王に、貴族に、国民、世界にまで向けて………


 彼女は世界を絶望に染め上げる。

 世界全ての人々を永遠に覚める事のない悪夢の中へ叩き落とす。



 こうしてありとあらゆる絶望が世界を覆った中、ヒロインは笑う。


 一人残った世界の中央で、狂ったように笑い続けながらゲームの幕が降りる。


 その姿と終わり方はとてつもないインパクトを残したものだ。



「まずい……表モードでもまずいのにヒロインが裏モードに進んでたらとんでもないことになるわ」



 それ以前に、なぜこんなとんでも乙女ゲームをチョイスして世界を構築したのか……


 マドレーヌは居るかどうか知らない『神』につい恨み節の一つを言いたくなるのであった。


すでに『悪魔の薬』を作ってる時点で、手遅れ感半端ないのはたぶん気のせいですwww

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