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24.……エクレアはもうしばらく放っておいてもよさそうだな(side:俯瞰)

 フォーメーションIB


 3人が魔物と戦う時に取る作戦の一つ。

 端的にいうと『いきなり爆破』


 しょっぱなに後衛が最大火力をぶつけてひるんだ隙に前衛が駆け寄って仕留めるおおざっぱな作戦だ。


 様子見も何もなく、素材をダメにするから普段の狩りでは使わない。まともに戦ったら敵わない強敵相手への作戦。


 結果は………





 死屍累々であった。






「おいローイン。今回は何を投げたんだ?いつも以上に激しい爆発起きたぞ」


 壁際まで吹っ飛ばされたものの、とっさに受け身取ったおかげで比較的怪我の浅かったランプに


「ちょっとこれ、さすがに危なかった」


 少々がれきに埋もれてはいても問題ないっとばかりに這い上がってきたトンビに


「いや、いつも通りの『黒色火薬入り試験管』なはずなんだけど……もしかしてエクレアちゃんが改良加えた別のモノっという可能性も」


 壁への強打で意識失いかけてたが、ポーション飲ませてもらったおかげで復帰できたローイン。

 巻き添え食らったと言っても元々ある程度の衝撃は覚悟してたし、割と大丈夫そうだった。


 ちなみにエクレアは吊るされたままながらも、必死の防御を試みたおかげでなんとか助かってはいた。

 吊るしてた縄がちぎれて墜落。がれきの中に半分埋まった状態でローインに恨みの念を飛ばしながらもギャグ補正……

 正確にいえば本人も気づいていない特性。普段から半分夢の中にいるような状態なために『夢の中では痛覚がない』という痛覚耐性が常時50%発動してる特性を無意識に99%まで引き上げて外傷によるショック死を無理やり防いだわけだ。


 もっともHPはしっかり減らされてるので危険な状態には変わらないが……



(((……エクレアはもうしばらく放っておいてもよさそうだな)))



 3人はエクレアの恨みの念をまだまだ元気な証拠というか、下手に近づけば呪い殺されかねないのであえて見ないふりという放置プレイを選択した。

 

 そうして3人は男の様子を確認すべく、そちらへ目をやると……


「「「う……」」」


 あまりの惨劇に3人は思わず口を覆う。


「やった?」


「やっただろ、これで生きてたらどんな化け物だ」


「確かに……でも魔物だし確認はしておく」


 一応念のためっとモザイクがかかった死体?を武器でつついてみるトンビ。

 その様をみながらランプとローインは考える。


「それで、こいつは結局なんだったんだ?」


「さぁ?ダンジョンがどうとか言ってたけどダンジョンは魔王が倒されたと同時に沈黙して今はただの遺跡となってるってのが定説だし……」


「一応エクレアに聞いてみるか。あいつなら何か聞いてるかもしれないし」


「だね。後で母さん達も調査に来るだろうし今はエクレアちゃんを助けようか」


 ちなみにエクレアは簀巻き状態の芋虫さながらになんとかがれきから這い上がって来れたようだ。

 ただ猿轡はまだ取れてないようで、必死に何かを訴えようとしている。


「はいはい、今助ける。助けてやるから心配するな……というかお前がそんな必死な顔するなんて意外だな」


 いつも強気でお茶らけた態度を崩さないエクレアの意外な一面を見て苦笑を浮かべるランプだが、すぐにその意味はわかった。


 直感に従ってランプは即座に横へ飛ぶ、そのすぐそばを何かが通過した。




「ふむ、不意打ちへの対応は完璧……よほど濃密な訓練を詰んだとみた」


「あぁ、魔獣の中には暗闇の洞窟を住処にしてる奴もいるから、そういった奴等と戦えるよう視界に頼らず戦う訓練は積んでるが………さすがに自分の腕を投げるような非常識な奴と戦うのは初めてだな」


 後ろを振り向きながらも油断なく構えるランプ。

 その先はモザイクからモゾモゾと肉の再生を始めてる。はっきり言って直視しかねる男が立っていたわけだ。


「ランプ、どうする?」


 トンビの方もいきなり動き出したというか、襲われた左手に度肝抜かれたが対処を終えたらしい。

 手を地面に叩きつけて踏み潰している。



「どうするも何も……再生持ちな奴はあれだ。再生できなくなるまで徹底的に破壊しつく。それだけだ」


「シンプルでとてもいい」


「まって、一度体勢を整えよう」


 このまま第二ラウンドっと思ったところでローインの静止。

 本来なら再生持ちは回復量を上回るダメージを与え続けなければジリ貧なので畳みかけるのが定説ながらもパーティーのブレインが静止をかけたのだ。

 2人は一瞬どうするか迷うも、エクレアが勝てなかった相手ということもあって仕切り直しを選んだようだ。


 ローインの元へと戻る。


「冷や水かけるような真似してごめん」


「別に問題ない。引き際を見極めるのもリーダーの役目だし押し通すだけで勝てない相手もいる。だからブレインに聞きたいが奴の再生のカラクリを見抜いたのか?」


「カラクリってわけじゃないけど人型の再生持ちなら多分男の正体は吸血鬼だと思う」


「吸血鬼……」


 ちらりとみると男は再生を終えたものの、3人に襲い掛かるそぶりはない。

 あくまで待ちの姿勢でいるようだ。


「吸血鬼……確か300年前に降臨して勇者に倒された魔王の正体って親父が言ってたな」


「吸血鬼は狩りつくされて絶滅したとされてるけど、まだどこかで密かに生きてる可能性があるって母さん達は予想してた。世間では信じてないようだけどギルド長や父さんを初め魔王城跡まで出向いた事がある大人達は信じてるみたい。それで吸血鬼の特徴の一つが」


「再生能力ってことか」


「それならエクレアちゃんが勝てなかったのも納得できる。吸血鬼は魔力そのものをぶつけるか聖の武器でしか致命傷を与えられないから……対策を取るよ」


 そう言いながらローインが取り出したのはポーション。


「これを武器に振りかけて。ポーションはプラス方向の魔力が働いてて聖水の代用にもなるから、吸血鬼の再生能力を封じられるはず」


「さすがブレイン。いろいろ頼りになるな」


「うん。頼りなる」


「頼りにされても困るよ。これから僕のやる事は後ろの安全圏でこそこそと嫌がらせするだけに終始して実際矢面に立つのは2人なんだし」


「それがパーティーってもんだろ。だから、危なくなったら逃げろよ」


「いざという時の逃げる時間は稼ぐ」


「ちょっとまって!なにその今から死にに行く的な発言は!!」


 ランプ達の俗にいう死亡フラグ的な発言にローインは驚き抗議するも、話というか作戦会議は終わりだっとばかりに2人は前にでるのであった。


爆発……吸血鬼……うっ、うー☆ 頭が痛い……

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