10.なんで僕はエクレアちゃんをそんな風に……そんな風に!?(side:ローイン)
身も心もボロボロ……と言いつつも、案外平気そうな顔で厨房へと向かうエクレアの後ろ姿を見送るローイン。
さきほど自身の親の暴走をぶん殴ってでも止めたように、彼は常識人であった。
エクレアが『親を反面教師にしてまっすぐ育つ』と評したように、彼自身は何かと変人が多くなりがちな辺境でも珍しい常識人の類だ。
少なくとも読者視点ではそう思われたであろう。
しかし、そうではなかった。
エクレアの後ろ姿を眺める彼の頭の中では……
“ローイン君今日は何を飲みたい?緑茶?紅茶?それとも……”
“わ・た・し?”
なんて、服をはだけさせながら色っぽく迫ってくるエクレアが妄想されていた。
まさに『ごくっ……』案件だ。
さらに……
“ミルクがほしいの?もう、しょうがないわね~特別にちょっとだけだよ~”
⑨歳児とは思えないほどの……いや、結構な年齢に成長したエクレアがぽろんっと……を差しだして来て……
(ち、ちがう!!!なんで僕はエクレアちゃんをそんな風に……そんな風に!?)
真顔だが脳内では妄想を必死に追い出そうと頭を振っているローイン。
ちなみにこうなった原因は読書にある。
冒険者志望としてギルドに出入りしてるランプやトンビとは幼馴染な事もあって、よく訓練と称した野外活動に付き合っているが、本来の彼はインドア派。
余暇の時間は本を読んで過ごしてるわけだが……ここはどこだ?
答えは『冒険者ギルド』だ。
例外はあるも、大半は荒くれな男連中が集う巣窟だ。
さらに母はギルドお抱えの錬金術師兼研究者で立場も副ギルド長相当。父はおやっさんに次ぐ強さを持つバリバリ現役の戦士。
2人ともギルド内での重鎮なのでローインは家族そろってギルド住まい。読む本もギルドに備え付けられてるものが多くなりがち。
つまり…………
中にはお子様が読むには早いジャンルが、稀によくある頻度で混ざっているのだ。
いつぞやの傍から見ればどうみても襲い掛かり案件にしかみえない、間違いだらけの人工呼吸法もそれらの本から得たものだろう。
そういったアレな知識を誤って吸収してしまったローイン。
エクレアや実母のスージー含む周囲はそのことを知らない。よって修正もされないどころか、エクレアは彼に対して遊び半分で色仕掛けまで行う。遊び感覚で篭絡しようとするものだから、いけない本の知識がますます頭の中に刻み込まれてしまう。
結論からいえば、外見美少女で中身小悪魔なエクレアが近くにいる限り、彼は常識人な方向で成長するのは不可能なのだ。
…………まぁ、母親からしてあれなので血筋的にも土台無理な話なのであろう。
明日はどっちだ!!?




